表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第1章 異世界転生管理局
6/71

第5話 ラビエンローズ

「どうしたんだい?」

「あ、局長!」

「もふもふ!!!!!」


 どうにもこうにも行き詰まった、とミルティさんと二人でお通夜状態にあったところに、さっきのもふもふがやってきた。

 カウンターの上にちょこんと乗って、なんとも可愛い……。

 もふもふしたらダメかな……。

 …ん? あれ? 待って?

 今、ミルティさん『局長』って言った?


「え? その人……じゃない、うさぎさん、局長???」

「ええ、転生管理局の局長よ」

「はじめまして、ではないか。

 さっきぶりだね、ラビエンローズと申します、お見知りおきを」

 後ろ足だけで起用に立ち上がり、深々と礼をする。

 帽子はかぶっていないけど、実に紳士らしい。


La(ラ・) Vie(ヴィ・) en(アン・) rose(ローズ)??

 フランスじ…うさぎ?」

「ノンノン。

 Rabbit(うさぎ) and() Rose(バラ)、世界一バラの似合うウサギさ」

「えーっと……」

 これはどういう反応が正解なんだろうか。

 ウサギと話したことなんてないから、なかなか難しい。


「局長はね、なんと地球出身なのよ?」

 小さな卓上の椅子を出しながらミルティさんが言う。

 って、地球産!!

「へーーー!!

 なんか親近感!」

「はっはっはー。

 うっかり、宿敵に捕まってミートパイにされてしまったがなー!」

「は、はぁ……?」

「ジョークだよジョーク!

 ラビエンジョークさ!!

 笑ってくれていいんだよ?」

 そんなアメリカンジョーク、みたく言われても…。

 だから難しいってば!


 しかし『地球出身』とは。

 優雅に椅子の腰を掛け足を組むうさぎさん…こと、ラビエン局長を見ながら考える。

 ……うさぎの足って、組めるんだ……じゃなくって。

 ここの職員さんたちって、どういう経緯で働いているんだろうか。

 『転生者』や『転移者』ってのは、ここから別の世界に行く(・・・・・・・)んだよね?

もしかして転生先が『ここ(転生管理局)』、っていう人がいるんだろうか。


「で、何があったんだい?」

「ああ、すみません。

 実はですね――」

 ミルティさんが状況の説明をする。

 さっきのYさんと話してわかったことも追加して。

 まぁ、まとめてしまえば


『リストにない人がやってきて、どうしたものやら』


 ってだけなんだけど。


「ふむ、なるほど。

 天界の坊やにも困ったものだな。

 しかし、そうなると……連絡が来るまではなにもしようがないね」

「どのくらいで連絡が来るものなんですか?」

 待つにしても、せめて目安くらいは欲しい。

「うーん、そうだなぁ……。

 前回の脱走の時は見つかるまで2年くらいかかったんだっけか」

「確かそうですね。

 その間も通常業務はなんとか回してくれましたけど、余計な調査までは手が回らないでしょうね」

「最低限の人数以外は全部捜索に取られてしまうからなぁ」

 2年!?

 ……え、ここで2年放置とか……勘弁して欲しい……。


「ふぅむ。

 今の君は、いわゆる幽霊みたいなものだからね。

 そのままでも歳を取ることもなければお腹がすくこともない。

 とはいえ……『退屈は死ぬより苦痛だ』という話もある」

「ただ何もせず2年待つのはイヤです……」

 ……同僚の恵美子は「休みの日は何もしないで1日ぼーっとしてる」って言ってたから、きっと彼女なら「2年ぼーっとしてて」って言われても大丈夫なんだろうけど。

 ……私には無理だ。

 どこかで気が狂ってしまう。


「で、だ。

 君さえよければ、だけど。

 ここで働いてみる気はないかい?」

「ここ、って、ここ(異世界転生管理局)!?

 え?そんなことできるの!?」

「イレギュラーではあるけどね。

 そもそも天界があんな状態だ。

 暫定的な処置、としてなら許されるだろう」

 生前私が働いていた環境と似てるっちゃ似てるし。

 問題なく仕事はできる、と思う。

 何より2年ぼーっとしてるのに比べたら、遥かにいい。

 とは、思うけど――


「見た所、面白い眼を持っているようだし」

 う、また『眼』か……。

 さっきも言われたけど、役に立つとも思えないんだけどな。

「私にとっての『不利益』とかないですよね?」

「不利益、か。

 転生に関しては――天界次第ではあるが――少なくとも悪いことは起こらないはずだ。

 ただ、働くためには仮に肉体を与える必要があるので、さっきの話ではないが『お腹が空いたり疲れたりする』ってのはあるかな」

「仮の肉体、ですか……」

 さっき『幽霊みたいな状態』って言ってたけど。

 そうか、今って肉体がない状態なのか。

 透けてるわけでもないし、物にも触れるから自覚してなかったけど。

 どうせなら『壁を通り抜ける』とか『空を飛ぶ』とかできたらよかったのに。

 残念。


「あれ?

 その場合って、『あとから転生』ってなった時にその仮の肉体ってのはどうなるんですか?」

「破棄されるだけだよ」

「……もう一回死ぬ?」

 痛いのはやだなぁ……。

「いや、本人には影響がないものさ。

 言っても仮だからね」

「ならいいです」

 よかったよかった。


「じゃあ、その方向でいいかな?

 ちょっと手続きとかしてくるから待っててくれ」

「はい、よろしくおねがいします」

「ふふふ、ということは私とも同僚になるのね。

 よろしくね」

「はい、よろしくおねがいします!

 先輩!」


第1章はここまでです。

主要なキャラはおおよそ出揃った感じですかね。

気に入っていただけたら、評価やブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ