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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第1章 異世界転生管理局
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第4話 Y

「あの……」

「どうしたの?」

「調整課に聞く、ってのはできないんですか?」

 さっき聞いた話だと、一番最初にリストアップするのは調整課だ、って話だったし。


「うーん、調整課かー。

 大したことはわからないと思うわよ?」

「そうなですか?」

「ええ、あそこでリストに載ってても、天界で審議される間に消えることなんて日常茶飯事だし。

 でも……そうね。

 少しくらいは手がかりになるかもしれないから、聞いてみましょうか。

 同期もいるから聞きやすいし」

「お願いします」


 そっか。

 調整課は『提案』をするだけ、って感じなのかな。

 でも、今の手がかり0の状態よりは幾分マシだろう。

 ……たぶん。


「あ、Y?

 わたしわたし、ミルティ。

 どう?そっちの調子は?

 ――こっちも相変わらずよ、代わり映えのしな……っと。

 ごめん、用事があったんだった」

 ミルティさんて、絶対おしゃべり好きだよね。

 将来おばちゃんになったら、延々と喋ってるんだろうなぁ……。

 歳知らないけど。


「あのさ、ちょっと困ったことが起こっててね。

 少し調べて欲しいんだけど。

 ……うん、うん?

 あー……でも、全く初めてのケースではあるけど、調べてもらいたいこと自体はそんなにめんどくさくないと思う。

 うん、うん。

 今度お昼おごるからさ、ね?

 ありがと、愛してるぜ? なーんて、ははっ」


 (お客さん)相手にだいぶ気安い態度だなぁ、とは思ってたけど、こうやって同期との会話を聞いてると、あれでも丁寧な応対だったんだなぁ……。


 しかし。

 よく喋るせいで(おかげで?)、相手の声が聞こえない割にはなんとなく会話の中身がわかるな。

 あ、状況説明が始まった。


 『あのぼっちゃん』って、弥勒菩薩、坊っちゃん扱いされてるよ……。

 ……愚痴大会になってるな。

 えーっと、たぶん、だけど。

 一応偉い人、なんだよね?弥勒さんて……。

 就業時間中に電話で偉い人の愚痴を言うのは大丈夫なの?


 そんなことを考えながらじーっと見てたら、ミルティさんと目が合う。

『あ、やべ』って顔に……イイエ、ニランデナンテイマセンヨ?


「そ、そんなわけでね。

 天界は全く当てにならなくてさ、とりあえず情報がそっちに残ってないかな、って。

 んと、名前は『桜坂螢子』さん。

 地球の日本って国出身で……あ、えーっとIDが――」

 アルファベットと数字の混ざったIDが読み上げられる。

 ミルティさんの名前の文字は全く読めなかったのに、アルファベットやら数字やら、ってのはそのままなんだな。


 ……そういえば、なんで私ミルティさんとお話できてるんだろう?

 明らかに言語体系が違うと思うんだけど……。

 『地球担当』って言ってたし、地球の言葉が全部しゃべれ……たらさすがにすごすぎるを通り越して怖い。


 待てよ。

 あのもふもふ(喋るウサギ)とも普通に会話できたし、受付に呼ばれた時も日本語……に少なくとも私には聞こえた。

 言葉が通じて困ることはないからいいんだけど。

 なんか不思議。


「え?

 どういうこと?

 んーー……と、なると、やっぱり天界からの返事を待つしかない、ってことか。

 ありがと!

 また連絡するっ!」


ガチャン


「えーっと……」

「進展はなかったみたいですね」

「そうねぇ、収穫0でもないんだけど……」

 どうにも歯切れが悪い。

「『けど』……なにかあったんですね?」

「簡単に言うとね。

 調査課のリストの中にあなたの名前はあったのよ」

「あったんですか!?」


ガタッ


 思わず椅子を倒して立ち上がってしまった。

 収穫0だなんていって、ちゃんと収穫あったじゃない。

「とりあえず落ち着いて」

「はい、すいません……」

 倒れた椅子を起こして、座り直す。


「あった、んだけどね。

 天界へ情報を上げた後に、リストから外すように指示が来たんだって」

「へ?」

 なんだそりゃ。

「ただ、あなたの調査データだけは提出された形跡がある、らしい」

「調査データ……。

 『らしい』っていうのは?」

「細かいことはちょっと言えないんだけど、Yが言うには……あ、Yってのは私の同期ね。

 アルファベット、わかるわよね?

 それで一文字でY。

 変わった名前でしょ?」

「そ、そうですね」

 ミルティさんも人のこと言えないですけどね、と喉まで出かかった言葉をなんとか飲み込む。

 それにしても……そっか、やっぱりアルファベットなんだ。

「それでね。

 そのYって、システム管理をメインでやってるんだけど、あなたの調査データへのアクセス記録と……うまく隠されているけど『改変された(・・・・・)』であろう形跡があったらしいの」

「改変……なんのために?」

「そこがさっぱり。

 調査データの閲覧自体はそこまで珍しい話でもないんだけどね」

「なるほど」

「だから、結局何があったのかは全く不明。

 調査課の段階でリストから消えている以上、あとから足されることなんて普通はないし。

 万が一|1回リストから消した人を復活させた《・・・・・・・・・・・・・・・・・》、んであればやっぱり天界からの返事待ちになるわけ」

「それで『収穫0ではないけど、進展なし』と」

「そういうこと」


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同時連載中の作品もありますので、よかったら♪

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