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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第4章 弥勒さまのいない世界
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第31話 実験

「それじゃあ、いまから実験アル!」

 不定形のためいまいちよくわからないけれど、それでもテンション上がりまくってるのが伝わってくる。

 って、

「ちょ、ちょっと待ってください。

 さすがに今からは……」

「螢子ちゃんは逃げないから、落ち着きなさい」

「二人とも何いってるアルか?

 夜はまだまだこれからアルよ?」

 時計の針は21時を指しているので、確かにまだまだと言えなくはないけど。

「今からご飯食べに行って、帰ってお風呂入って……ってしてたら、寝る時間がなくなっちゃいますって」


 護身術の稽古は、いつも仕事が終わってからやることになっている。

 ご飯を食べてから稽古だとさすがに気持ち悪くなるので、終わってからご飯に行くんだけど、今日はそのままここに来たのでまだ夕飯を食べられていない。

 時間的に、食べないという選択肢もあるにはあるけど……体を動かした後だし空腹で倒れてしまいそうだ。

 汗をかいたから、ちゃんとお風呂にも入りたいし。

 そんなこんなする時間を考えたら、もう十分に遅い。


「それなら心配いらないある!

 仮眠室(ねるところ)ならたくさんあるアル!

 シャワー室だって完備アルよ!」

「いや、そういうことじゃな……あー……」

 なるほど、どおりで仮眠室だらけなわけだ。

 さっきファラスさんが『研究バカばっかり』って言ってたけど、なんてことはない、その筆頭がファラスさんなのだ。

 研究班(ここ)ではそれが普通なのだろう。

「ファラス? 螢子ちゃんの都合も考えてあげないなら、この話はなかったことに……」

「むぅ……しょうがないアルね……」


 ひとまず、週に2回、仕事終わりにミルティ先輩と一緒に立ち寄る、ということで落ち着いた。

「ミル、お前は来なくていいアルよ?」

「あのね。

 ファラスと螢子ちゃん二人にさせたら、何するかわかったものじゃないでしょう?」

「なにを言うアルか!

 いたって普通(・・)のことしかしないアル!

 安心するアル!」

 普通……普通かぁ……。

 ……ここの『普通』をさっき見たばかりなので、とてもじゃないけど安心できそうにないなぁ……。


「そうそう、もう一つ」

 さて帰ろう、とドアをくぐりかけた時、ふとミルティ先輩が立ち止まる。

「ん? 人払いアルか?

 それなら、問題ないアルヨ。

 というか今日も完璧にやってあるアル!」

 ん? 人払い?

「どういうことですか?」

「共同研究をするにあたってね。

 螢子ちゃんの身の安全を守るために、人払いの結界を張ってもらうことになっているのよ。

 できるだけ、ここで研究をしていることは秘密にしておきたいから。

 ほら、この間も襲撃があったでしょ?」

「そういえば……」

 『研究バカ』で『仮眠室に住んじゃう』くらいの人たちだというのに、ここに来てから誰一人として顔を合わせていない。

 人払いの結界、か。

 そんなことまで気を回してくれるなんて、いつもいつもミルティ先輩にはお世話になりっぱなしだ。


 翌日。

 どうしても! とのファラスさんの要望により、ご飯会の予定を変更して研究班へやってきていた。

「待ってたアル!

 来なかったらどうしようかと思ってたアル!」

 入るなり飛びついてくるファラスさん。

 傍から見たら、ただ雲がまとわりついているだけにしか見えないけれど。

 こうして『触れ』ることができるのは、なんだか面白い。


「お約束しましたからね。

 今日からよろしくおねがいします」

「こちらこそヨロシクアル!」



 真っ暗で何も見えないせいで、つい思い出に浸ってしまった。

 拉致した『能力課』の人も、すぐに何かしらしようという感じでもなかったし。


 しかし、そうか。

 もうあれから1年も経つんだ。

 その間、ファラスさんとミルティ先輩とは本当に色々な実験をした。

 ついぞ眼のレベルアップ条件はわからなかったけれど。

 新しいスキルの開発や、体への負担を軽減する方法など、たくさんのことがわかった。

 その中の一つに『紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)の力が発動するための条件』があり、それがこの『拉致犯』に漏れてしまったみたいだけど。


 真っ暗になってから、結構な時間が経った、と思う。

 暗闇っていうのは時間の感覚がおかしくなるので、なんとも言えないけど。

 視界を奪ったことで犯人は満足したみたいで、ちょっと前にどこかへ行ってしまった。

 全然使いこなせていないとはいえ、元々は弥勒さまの力。

 どこまでの情報を見たのかはわからないけれど、ちょっと紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)を軽く見すぎじゃないだろうか。

 目が見えていることと、眼の力を使うことは、必ずしも同じ意味ではない。

 見えていなくても使えるスキルだってあるのだ。


 それに。

 今日は、週に2回のファラスさんとの実験日。

 最近ではすっかり仲良くなったので、今日みたくミルティ先輩抜きになる日もあるが、連絡なしで『すっぽかした』ことは一度もない。

 これだけ時間に遅れても連絡がなければ、何かしら動いてくれるはず。


『ホタルコ!?

 どうしたアルか?

 もう、いつもの時間から30分も過ぎているアルよ!?』


 あまりにも狙ったかのようなタイミングで頭の中に響いた声に、思わず笑いがこぼれそうになる。

『ごめんなさい、ちょっと拉致られちゃいまして』

 心の中で返事をする。

 そういえば、最初に拉致られたときも、こんな風に弥勒さまと心の中で話をしたなぁ……。

 弥勒さま、元気にしてるかな?

『拉致、って……スキル使わなかったアルか?』

『使う間もなく、って感じですね。

 というか、今、視界を封じられてしまって真っ暗なんですよ。

 どうやら能力課の職員っぽくて、少しは詳しいみたいです』

『データを見られたアルか……かなり厳重にロックをかけていたアルのに……』

『それなりのスキルを持った人がいるんでしょう』

『すまないアル』

『気にしないでください、悪いのはあいつらです。

 それに、こうして連絡してきてくれたおかげで、対策もとれますし』

『そうアルね!

 ミルも呼び出して、助けに行くアル!』

『ありがとうございます!!』

 さぁ、反撃開始だ。


いつも応援ありがとうございます♪

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