第19話 未来視
夜、ベッドで寝転がりながら考える。
フーちゃん局長のあの様子がとにかく引っかかった。
そして、うっすらと聞こえた『未来視』という言葉。
「ねぇ、だら太郎、どう思う?」
傍らに転がるゆる〜い顔をしたぬいぐるみに話しかける。
もちろん答えは返ってこない。
こちらの世界に来て急にしゃべるようになった、なんてことはもちろんなく、いつものようにただただ気の抜けた顔をしているだけである。
頭の中を整理するために声に出しているだけなので、構わないんだけどね。
……というか、返事が来たらむしろ怖い……。
よく女児向けアニメなんかで急にぬいぐるみが話し掛けて来ることがあるけど、現実にあったら恐怖でしかないよな。
っと、いけない。
思考が脱線してしまった。
「前にミルティ先輩が天界の人たちの中には『予知』のような能力を持った人たちがいる、って言ってた。
で、転生・転移した人たちがその世界に与える影響についての『判定』をしている、とか。
ただ、言っても『予知のようなもの』であって、実態としては『よく当たる占いレベル』って話だったけど。
と、すると、私の『未来視』ってのは?
言葉通りにとれば『未来を視る』……もう少し噛み砕くと……未来そのもの、つまり『未来に実際に起こること』をそのまま視る……?
……え? そんなにとんでもないことになってるの!?」
そりゃ、フーちゃん局長が動揺するわけだ。
よく当たる占い、なんてものじゃない。
「どうしたらいい? だら太郎?」
呆然と声に出したものの、当然だら太郎の締まりのない口が開くことはなかった。
翌朝。
なんだかんだでぐっすりと眠れた自分の図太さに呆れつつも、朝食を食べる。
テレビからは朝のニュースが流れ、台風が接近していることを告げる。
もう夏も終わりだなぁ……。
そうそう、このなんだかわからないゆるいアニメ好きだったなぁ。
このイケメンだけど、どこか残念なキャスターも人気あったし。
最後にある料理コーナーも楽しみにしてた。
簡単そうに作るけど、実際やろうと思うと大変なのが多かったんだよね。
主に材料が特殊すぎて……。
なーんて、懐かしいなぁ……え?
……待って?
なんでテレビからニュースが流れてるの?
ここは生前私がいた部屋ではなく、転生局で充てがわれたお部屋。
当然窓も……
ガタガタ
開かない。
うん、大丈夫、この半年ちょいの記憶は妄想でも夢でもない。
確かに、宿舎の部屋にはテレビがある。
いわゆる娯楽設備の一つで、『私の記憶にある』ゲームができたり映画を見たりできる程度のものだ(覚えていなくても、知っていれば完璧に再現されるのだから便利だ)。
だけど、こんなリアルタイムで現世で流れるようなニュースが見られるなんてことはない。
まぁ、この番組は毎朝見てたし、『私の記憶に基づいた再現』と言われたらそうなのかもしれないけど、これまでに一度でもニュースが流れた試しはない。
……いや、それ以前にテレビをつけた記憶もない!!
「そ、そそそそ、それでででははははは」
その事実に気づいた瞬間、テレビの画像が乱れる。
画像にブロックノイズが混ざり、音声がおかしくなる。
……おおよそ、犯人が誰かはわかったけど(というか他にこんな事する人いないし)、さすがにホラーテイストは勘弁してほしい。
映画やゲームならそこまで苦手ではないけど、リアルはさすがに怖い。
「それでは、今朝のニュースをピックアップしてお届けします」
あ、直った。
ん?? 特に何のメッセージもなく終わり?
犯人は弥勒さまだと思ったけど、違うのかな……?
てか、違うのは怖すぎるので弥勒さまであってほしいんだけど……。
「ラインナップはこちら」
イケメンキャスターがそう言うと、画面にニュースのトピックスが映し出される。
・未成年者略取の容疑で犯人逮捕
・来場者数、過去最高の20万人を突破
・視線で操作できる新時代のデバイス発売
・使用期限切れ洗剤の販売でリコール
・うなぎの規制本格化か?!
・なうなヤングにバカウケ!
……なんともわかりやすいメッセージだった……。
これ、最後絶対めんどくさくなってるよ……。
しかし、わざわざこうして【使うな】ってメッセージを送ってくるってことは、私の思う以上にヤバイものなんだろう。
ただの紫翡翠の眼ってだけでも相当厄介だと思ってたのに、レベルアップするほどに厄介度まで上がっていくのか……。
弥勒さま……お返ししますのでそろそろ取りに来てくれませんかね?
ええそうです、朝の番組はアレです(笑)
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