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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第3章 転生局vs転移局
20/71

第18話 選定

 さて、転移局体験会も残り半分を切ったところで。

 今日は、昨日ミルティ先輩が言っていた『選定』作業をやらせてもらえないか聞いてみよう。


「おはようございまー……どうかしたんですか?」

 転移局の扉を開くと、一人の女の人(やたらと格好がえっちぃ……)がフーちゃん局長に怒られていた。

「とにかく!

 あなたが学校で成績優秀だったのは知ってるけど、次失敗したらしばらく掃除係になってもらうからね!」

「……はい……」


 うーん、これまたとんでもないタイミングで来てしまったらしい。

「おはようございます、ホタルコちゃん。

 今日も可愛いね」

「あ、おはようございます、クレィさん」

 今日『も』ときたか……。

 さすが、ナチュラルボーンイケメンは格が違う。

「『あれ』って、何があったんですか?」

 さっきの喧騒を思い出しながら聞いてみる。

「ああ……ちょっとね。

 あの子、転移官育成の学校を主席で卒業した子でね、まぁ思いっきり期待されてここに来たんだけど。

 今まで送り込んだ『転移者』が全員役目を果たせずに死んでしまったんだよ。

 ついさっき39人目がダメだっだ、って連絡が入ってね。

 それで朝から局長の大目玉を食らった、ってわけ」

 あー、学校では優秀だった子が……ってよくあるやつか。

 なまじ今まで失敗してないから、こういう時にどうしたらいいかわからなくなるんだよね。


「ん? あれ?

 でも、転移官ってこっちが『選定』した人を送り込むだけだし、失敗の原因は『選定』にあるんじゃ……??」

「う……ホタルコちゃん、なかなか痛い所をつくね……」

 痛い所もなにも、それで失敗を責められるのは可哀想じゃないか?

「実際、彼女が初めて……そして今も継続して任されている異世界はかなり難易度が高くてね」

「難易度?」

「簡単に言うと、『魔王』が強すぎるんだよ」

 ……いくら優秀だからって、新人に重い案件を振るのはいかがなものかと……。


 転移官のお仕事は大きく分けて3つあるらしい。


・『選定』された人を『喚』んで来て交渉

・本人の適性と事前に収集済の情報から能力(スキル)を付与(場合によってはその場で作成)

・異世界へ送り出す


 送り出す『人』と行き先の『異世界』とはあらかじめ『選定』が済んでいるので、転移官の責任が一番大きいのは能力(スキル)の選択(作成)の部分なんだそうだ。


「でも、そうするとやっぱり転移官の責任てそこまで大きくないと思うんですけど、よっぽど選んだ能力(スキル)がおかしかったんですか?」

 そうでもないとあんなに怒られるはずがない。

「おかしいわけではないんだけどね……。

 強大な『魔王』を相手にしないといけないから、どうしても強い能力(スキル)を与えるんだけど、どうもそのバランスが悪いみたいで。

 あまりにも強すぎるせいで使いこなすのに時間がかかっちゃってね。

 大体が使いこなせる前に死んでしまうんだよ」

 使いこなせれば強いけど、ってやつか。

「でも、そうするとやっぱり『選定』にも問題があるんじゃ?」

「そうだねぇ……できるだけ能力値の高い人間を優先してまわしてるんだけど。

 というか、それもあって上がオカンムリなわけだ」

「『こっちは優秀な人を優先して回してるんだ。

 失敗続きなのは、転移官が悪い』

 ってやつですか?」

「そんな感じ」

 そう言ったクレィさんは、なんとも言えない苦虫を噛み潰したような顔をした。

 ああ、生前私のいた市役所の課長もよくこんな顔してたなぁ……。

 板挟みの中間管理職って大変そう。


「それでな! ホタルコ!

 悪いんだけど、選定を手伝ってくれないか!?」

 クレィさんとの話を聞いていたらしいフーちゃん局長が後ろから声をかけてきた。

「いいですよ。

 というか、元から今日はそのつもりでいたので」

 こっちから言う手間が省けた、ってものだ。



 『選定室』と書かれた部屋に案内される。

 そこでは、何人ものオペレーターさんたちがパソコンのような端末を操作していた。

 なぜか壁際にベッドがあったり、栄養剤らしきものがいっぱい詰まった透明な冷蔵庫が目に映った気がしたけど、気にしないほうがよさそうだ……。


「ホタルコちゃん、こっち」

 ちょうど端の方で空いていた端末を陣取る。

 クレィさんが端末を操作すると、空中に色々な情報が映し出される。

 いつもはモニタのようなものに映し出されるんだけど、『選定』の際は情報が多すぎてこういう形にしているらしい。

 SFっぽくてかっこいい。

 まぁ、やってることは印刷した紙を机いっぱいに広げているのと変わりない気もするけど。

「これが、あの子が担当している異世界の情報。

 で、これが『魔王』」

 どこから見たものやら、と思っていたら、ポイントとなる部分をクレィさんが目の前に持ってきてくれる。

 あ、手でつかめるんだ……ますます紙っぽい。

 『情報シート』って感じかな?


「うわ……これ、本当に生き物ですか?」

 そこに書かれていた情報によると、魔王は物理的にもかなり巨大で、しかも特殊能力がてんこ盛りだった。

 以前の勇者が一度挑んだものの結局倒せず、なんとか封印をした、ってことらしい。

 ただ、あまりにも強大すぎて50年もしないで封印が解けてしまったんだとか。

 さっきも思ったけど、こんな重い案件をいくら優秀だったからって新人にいきなり振るのはどうかと……。


「んで、こっちが今挙がっている候補者一覧」

 再度クレィさんが端末を操作すると、溢れ出すように『情報シート』が出てくる。

 そのうちの何枚かを見てみると――


・IQ600の天才物理学者

・二人組の私立探偵

・臨死体験をして生き返った寺の跡取り

・ゲームの天才、兼、医者


 などなど。

 寺の跡取りはともかく、確かに優秀そうな人が並んでいる。

 てか、IQ600ってなんだろう……入力間違えたのかな……。


 しかし、候補者の時点でこんなにいるのか……。

 これは1日でとても終わりそうにない。

 あ、だからベッド……。


「ん?」

 早速『視』ていこう! と物色していると、視界の端に気になる1枚のシートが。

 なぜか大きく『バッテン』がされている。

「あの、これって?」

 シートを持ってクレィさんに聞いてみると、

「あれ、それ捨てたと思ったんだけど。

 その人ね、優秀は優秀なんだけど……あまりに性格がねじ曲がっててね。

 候補から外したんだよ」

「なるほど……」

 見た感じイケメンだし、ざっと見たプロフィールもかなりハイスペックなんだけどなぁ。

 『大神(おおかみ) 天照(あきてる)』とお名前もなかなかすごい。

 ま、コレもなにかの縁ってことで、『視』てみよう。


 『眼』に集中する。

 近くを見るようにして全体を俯瞰する。

 周りの景色がうっすらとし始める……シートから情報が溢れだしてくるのを、左眼をつぶることでフィルタリングする。

 紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)Lv2発動!

 情報の取捨選択――解析――理解――


「っ!

 はぁはぁはぁ……」

「だ、大丈夫かいホタルコちゃん?」

 この『情報に呑まれる』感じ、久々だな。

 弥勒さまほどではないにしても、この人も結構すごい。

「だ、大丈夫です。

 ありがとうございます、クレィさん」

 そこで、スッとお水が出てくるあたりさすがイケメン。

 一気に飲み干して、息を整える。


「この人、大当たりですよ。

 おそらくどんな能力(スキル)でも適性があります。

 確かに、性格はねじくれまくってますけど、それだけで候補から外すのはもったいレベル」

 まだ他の人は視てないからはっきりしたことは言えないけど、多分この人以上の適任者はいないと思う。

「ちょうど現世に嫌気もさしてるっぽいですし、転移交渉もうまくいくんじゃないですかね」

 たぶん。


「どうしましょうか、局長」

「そうだな……よし、ホタルコがそう言うなら賭けてみよう!

 責任は私が持つ!」

「わかりました、では第一候補として精査を進めます。

 ホタルコちゃん。

 とりあえずこの人で進めるんだけど、万が一に交渉決裂した場合も想定して、悪いんだけどあと2~3人候補者を追加で『選定』してもらえないかな?

 念の為、ね」

 確かに、性格に難がありすぎて確約し辛いもんなぁ……。

「わかりまし……つっ!!!」


ズキン!!!


 返事をしようとした時、突然強烈な頭痛が襲いかかる。

 これはまるで、弥勒さまと初めて会った時とのようだ!!

「うっ……」

「ちょ、ちょっと大丈夫か!?

 おい! ホタルコ!?」

「だい……じょうぶ……です……」

「とりあえず一旦横になれ、な!」

 そう言って簡易のベッドに横にさせられる。

 オロオロしながらも、フーちゃん局長はなんとも手際がいい。


 次の瞬間――大神氏が馬乗りになった女性にめった刺しにされている光景が頭に流れ込んできた!!


「ダメ!!!」

 自分でもびっくりするような大きな声が出た。

 それと同時に、頭痛が引いていく。

 あれは、過去の映像?

 いや、だとしたらここで候補者、とか言ってる場合じゃない……。

 てことは、

「もしかして、この先に起こること……?」

「どうした? 何が『ダメ』なんだ?

 ホタルコ……何が視えた?(・・・・・・)

 心配そうに手を握りながら、それでも『責任者』としての責務を果たすべく真剣な目で聞いてくるフーちゃん局長。

「たぶん、ですけど。

 あの『大神さん』って人、殺されます。

 それも、そんなに遠くない未来で」

 あの刺し殺される場面の彼と写真とは、同じくらいの年令に見えた。

「どういう、ことだ?」


 私は、体を起こしながら何が『視』えたのかを話した。

「未来視……だと……!?」

「え?」

「いや、なんでもない。

 ありがとうホタルコ。

 ならば急いだ方がよさそうだな。

 クレィ!!」

「はい! いますぐに手配をします!」

「頼む」

 急に慌ただしくなる室内。

 さっきの新人の子も呼び出されて緊急な打ち合わせが始まった。

「ホタルコはもう少し休んでていいぞ。

「ありがとうございます」

「それとな――さっきのこと、誰にも話すんじゃないぞ?」

「『視た内容』ですか?」

「ああそうだ。

 もふもふには私から言っておくから、ホタルコは一切の口外をしないこと! いいな!」

「はい」

 なんだろう、すごく真剣な表情は変わらないんだけど……そう言った時のフーちゃん局長は何かひどく動揺しているように見えて、言うことを聞いたほうがよさそうだ、ってことがよくわかった。


どこかで見たことがあるような候補者ばかりでしたね……(笑)


いつも応援ありがとうございます♪

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