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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第3章 転生局vs転移局
19/71

第17.5話 飲みニュケーション

 転移局体験が始まって3日が経った。

 けど、やっぱり私のやることはほとんどなかった。


「どう? 螢子(ほたるこ)ちゃん、転移局のお仕事は」

 今日は、お仕事帰りのミルティ先輩と飲みに来ていた。

 転生局が恋しくなった、わけではなく、状況を知りたかったのだ。

「そうですねぇ。

 なんというか、事前調査がしっかりしているせいで私がやることはほぼないです」

うち(転生局)とはかけられる時間が違うからね~。

 狙い撃ちできるのは強いわよね」

「ですね~」

「あれ?

 でも、選定には関わってないの?

 それなら螢子ちゃんの出番ありそうだけど」

 カラン、と氷の音をさせながらウィスキーを飲む先輩。


 ここ、転生局のある建物の中には娯楽施設が充実していて、扉を開けた人の出身地(私だと地球)に合わせて色んな所へ行けるんだけど。

 開けるたびに中が違うのはなんとも不思議な気分。

 それなりに長い期間ここにいるけど、毎度ぎょっとしてしまう。


 で、今日は私が生前よく行っていた居酒屋(とよく似た場所)へ。

 以前にミルティ先輩を初めて連れて来た時に、ミルティ先輩が元いた世界のお酒よりここ(地球)のお酒のほうが遥かに美味しい、って言ってすっかりはまってしまったのだ。

 それはもう、「今日どこ行きます?」って聞いたら『居酒屋!』と即答されるくらい。

 確かに、一度だけミルティ先輩のいた世界の飲み屋さん連れて行ってもらったことあるけど、お酒に味なんてなくてひたすらアルコール度数勝負! みたいな感じだったからなぁ……。


「『選定』ですか?

 私が『視』ているのは、選定が済んでいて情報が揃った状態からですね。

 『問題なさそう?』って聞かれるので、確認してる感じです」

「それは……もったいないわね。

 選定前の候補者の段階で『視』てもらったほうがいいのに……。

 まぁでも、それで螢子ちゃんが取られちゃうのは嫌だから黙ってましょ」

 『選定』か……。

 ミルティ先輩はそう言ってくれたけど、今のままだとただ退屈な体験会になっちゃうからなぁ。

 明日クレィさんに言ってみるか。


「それで、ミルティ先輩。

 その後スカウトの人って来てるんですか?」

「来たわよ~~。

 調整課からはYが来てたよ」

「Yさんが来てたんですか!」

「『いくら顔見知りだからって、面倒事押し付けないでほしいわ』って言って、雑談だけして帰っていったけど」

「スカウトしていかなかったんですね」

「『螢子ちゃんが来たくないなら、スカウトしたってしょうがないじゃない?』だってさ」

「あはは、やっぱりYさん優しいな~」

 見た目はトカゲ人間(リザードマン)なのでちょっと怖いけど。

「Yさんかー、会いたかったなー」

 『弥勒さま事件』で廊下に倒れてる所を助けてもらって以来会ってないからなー。

「今度飲みに誘えばいいじゃない?」

「あー、確かにそうですね」

 ミルティ先輩と2人で飲むばっかりだったけど、Yさんも呼んで女子会とか楽しそうだ。

 Yさんは何を飲むんだろう……ちょっと気になる。


「そうそう。

 スカウトね、能力課まで来たのよ」

「能力課!?

 えっと、私の仕事なさそうですけど……」

 能力課とは、文字通り能力(スキル)を管理する課だ。

 その中で、能力管理G(グループ)と能力開発G(グループ)とあって、他にも細かく分かれるらしい。

 いわゆる『対人』の能力である紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)は使いようがないと思うんだけど。

「そうなのよね~。

 私もそう思って、能力課ではやることないんじゃないの? って聞いたんだけどね……彼ら、なんて言ったと思う?」

 そう問いかける先輩の眼がちょっと怖い。

 なんかちょっと怒っているような……?

 よっぽど酷いことでも言われたんだろうか。

 雑用係……?

 って、そんなののためにわざわざスカウトになんて来ないよな。

 ……あ!

「『実験台』ですか?」

「だいたい正解。

 っても、さすがにあちらさんもそこまでではなく『研究対象』って所でしょうけど。

 紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)を解析して、新たな能力(スキル)の開発を、可能ならば紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)の複製を! だって。

 あんまりにも自分勝手すぎて、怒鳴りつけてやったわよ」

「あの……ありがとうございます」

 ミルティ先輩が本気で怒って怒鳴る姿……ちょっと想像しただけで身震いしてしまう。

「ふふふ、大切な仲間だもの、当たり前でしょ?

 ラビエン局長も直接向こうの課長に抗議をしてくれたわ」

「なんていいもふもふなんだ……」


「螢子くん、ボクがここにいること忘れているだろう?」

「……あー、そういえばいましたね」

「……本当に忘れていたのか……」

 そうでした、今日はミルティ先輩だけじゃなくてもふもふ(ラビエン)局長も一緒だったんだった。

 いつもはいないからすっかり忘れて……

「い、いやだなぁ、冗談ですよ冗談」

 今にも泣きそうに目をくりくりさせてたもんだから、すかさずフォロー。

 あれ、でもこの目はいつもか?

「ふぅ、ま、いいけどね。

 マスター、マティーニ」

「はいよろこんでー!」

 ……マスターいないです、ここ居酒屋なんで……。


 それにしても。

 思った以上に、私争奪戦が激しい。

 「私のために争わないで!」ってセリフを言うことができそうなくらい。

 言わないけど。

 私としては、そんなことより早く『転生者リストに載っていない謎』が明らかになって、宙ぶらりん状態を解消したいんだけど。

 弥勒さまの『あの』調子だといつになることやらだしなぁ……。


「フランちゃんにいじめられたりしてないかい?」

 少し考え事をしていたら、ピンクのバラを片手にマティーニのグラスを傾けるうさぎがいた。

 ……なんてシュールな光景。

「フーちゃん局長には、結局初日しか会ってないですね。

 さすがに忙しいみたいですよ?」

「……チョット待とうか。

 いま『うちの局長と違って』って思わなかったかい?」

「大丈夫ですよー」

「……軽いなぁ」

「あ、そんなことより!」

「『そんなこと』で流した!?」

 今日の局長は絡み酒なのかな?

「はいはい、うるさいですよ~局長。

 おとなしくお酒飲んでててくださいね~」

 言うなり、ミルティ先輩が自分のウィスキーのグラスをぐいぐいともふもふ局長の口へ……。

 ……待って、ミルティ先輩の飲んでるのってロックですらないストレートだったような……!

「きゅぅ……」

 そのまま局長がダウン……。

 こええ……。


「んで、『そんなことより』どうしたの~?」

 既に10杯近く飲んでいる気がするけど、ケロッとしている先輩。

 さすが、アルコールの強さだけを競っている世界の人は規格が違う。

「そうでした!

 教育係? のエルフさんはとっても優しくて超イケメンでした!」

「なにそれ、気になるわね」

「なんか、すごいんですよ。

 やることなすこと全部がイケメンなんです。

 私はいまいち好みではなかったのですが、あれは女の子たち簡単に落ちますね。

 さり気なくウィンクとかしちゃうくらいですし!!」

「すご……。

 ちょっと会ってみたいわね……」

「お、ミルティ先輩はそういうのお好みですか」

 先輩もきれい系だから、2人並んだら無敵だ。

「いやー、私も『ザ・イケメン』ってタイプはそんなでもないんだけど、さり気なくウィンクしちゃうような人ってそうそう見れないじゃない?」

「あー、パンダみたいな感じですか……」

「パンダ……って、地球の珍獣だっけか。

 私の国でいう『クレィア』みたいなものか……うん、大体あってる」

「あの……その方『クレィ』さんっていうんですけど……」

「ぷっ、あはははは!

 なにそれ、すごい偶然ね!!

 ダメ、どうしよう……会った時に笑いをこらえる自信がないわ!」

 クレィさん、まさかこんな所で珍獣扱いされて大笑いされてるとは夢にも思わないだろうなぁ……。


*少し修正しました。すみません(大筋に変更はありません)


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