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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第3章 転生局vs転移局
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第16話 スカウト大作戦

「え?」

「だーかーらー。

 転移局へ転属しなさい、ってのよ!

 異動よ異動!!」


 嵐のようにやってきたと思ったら、突然の異動宣言。

 これって――

「もしかして転属辞令でも出たんですか?

 でも私、そもそもがイレギュラーな臨時採用だったはずでは……?」


 最近すっかり馴染んでしまって忘れがちだけど、元はと言えば私はこちら側の人間じゃない。

 本来は『転生適正』を持った人間で、転生『される』側なのだ。

 それが何故か『転生者リスト』から漏れてるわ、事情を知ってそうな『天界』へ問い合わせてもゴタゴタしてて(弥勒さまがフラフラしてるせいで!)返答がないわ、で、やむなく臨時職員をやっているだけに過ぎない。


 そんな私に転属辞令?


「違うわよ!

 辞令じゃなくて、スカウト!」

「スカウト??」

「そう!

 ここんとこ、そこのもふもふが急に成績がよくなって、なにかと思ったら『紫翡翠の目(ラベンダーアイ)』の持ち主を囲ってるっていうじゃない!

 ズルよズル!

 聞けば臨時職員だっていうし、だったら転生局である必要はないでしょう!?

 もふもふなんかより良い待遇を約束するわよ!!」

「なるほど……」

「ちょ、ちょっと螢子(ほたるこ)くん!?

 まさか、誘いに乗るつもりじゃないだろうね!?」


 確かに、ちびっ子(フーちゃん)局長の言うことも一理ある。

 臨時職員として働くのであれば、別に転生局にこだわる必要はない。

 天界のゴタゴタはしばらく収まる気配もないし、状況がわかり次第連絡してもらえばいいわけだ。

 とはいえ、ミルティ先輩やラビエン(もふもふ)局長と一緒に働くのは楽しい。

 既に半年くらいは働いて人間(?)関係ができあがっているわけだし、新しい所でやり直すのもめんどくさい。

 それに。

 ちびっ子フーちゃんは可愛いけど、あの人の下で働くのは疲れそうだよなぁ……。


「えっと……スカウトってことは、断ってもいいんですよね?」

「そうだけど……なんで!?

 もふもふに弱みでも握られてるの!?」

「いえ、単にめんどくさいってだけで……」

「なにその理由!!」

 そうは言うけど、現状不満がないのだ。

 いつまでここにいるかもわからないし、いろんな所に行ってもめんどくさいじゃない。


「じゃ、じゃあせめて3日だけでも体験! ってことでどう!?」

「フランちゃん……転移局のルールは『スカウトを断られたら潔く引く』じゃなかったのかい?」

「ぐ……」

なおも食い下がるフーちゃん局長をもふもふ局長がたしなめる。

すごいほのぼのとした絵面だなぁ。

「あの……なぜそこまで私にこだわるんですか?」

「そうだよ。

 ついこの間、学校を主席で卒業した子が入ったばかりじゃないか?」

「あの子は……ちょっとスランプで。

 って、それは関係なくて。

 紫翡翠の目(ラベンダーアイ)持ちなんて、私じゃなくてもスカウトに来るわよ」

「そんなにすごいものでもないですよー?」

 相手の適正が見えるだけなんて、言うほどのものじゃないと思うんだけど。

 もっとレベルアップすれば少しは違うのかもしれないけど。


「はぁ!?

 ホタルコ、あなた何言ってんの?

 紫翡翠の目(ラベンダーアイ)って言ったら、弥勒さまの失われたスキルの1つじゃない!?」

「え?

 ええええええええええ!?」

 弥勒さまの力!?

 なにそれ!? 本人からは何も聞いてない!

「……フランちゃん、どういうことだい?

 ボクもそんな話は聞いたことないよ?」

「なんであんたが知らないのよ!?

 600年前の! 天界大争乱!」

「んー……600年前だとボクがまだ地球で隣家の主とバトってた頃だねぇ」

「……ああ、そういえば転生組だったわね。

 まぁ、私だって当時は子供だったし、詳しい話は教科書で見た程度だけど」

 一気に重要ワードが飛び出てきて頭が追いつかない。

「あの、話が見えなさすぎるので、一つずつ教えてもらえませんか?」



 フーちゃん局長の話によると、こうだ。


 天界大争乱。

 言ってしまえば単なるお家騒動なんだけど、ただ、その『お家』が問題だった。

 なんといっても、天界で一番偉いお家だったのだから。

 

 天界の仕組みは、いわゆる王政と議会制の合いの子といった感じ。

 天界王をトップに、50の貴族(これは定期的に入れ替えられるらしい)から選出された貴族院による合議制。

 トップに権力が集中するわけではないけれど、それでもやはり王と貴族の間には明確な権力差があった。


 とはいえ天界人は非常に長命なこともあり、ずっと同じ天界王が治めていて、問題らしい問題も起こらなかった。

 ……んだけど、その天界王がある日突然引退を宣言し――行方をくらませた。


 それが600年前。

 普段、あまり権力に執着のない貴族だったけれど(定期的な入れ替えを受け入れるくらいだしね)、『王』となると話は別だったらしく。

 上へ下への大騒ぎだったそうだ。

 どうあっても騒動が収まりそうにない、となった所で駆り出されたのが我らが弥勒さま。

 どこにいっても結局最後は『神頼み』なんだなぁ……。


 結果として、弥勒さまの手によって争乱は終わったんだけど、その時に7つのスキルが盗まれた。

 今では『争乱の目的=スキルを盗むことだったのでは?』という説まであるくらい見事な手際だったそうだ。


「で、そのうちの一つが私の紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)ってことですか」

「ええ、そうよ。

 どう? 重要性がわかった?」

「実感は全くないですけど……」


 それにしても。

 弥勒さまはなんでその話をしてくれないんだろうか?

 言ったからって何が困るわけでもないだろうし、返してほしい、っていうならすぐにでも返すのに。

「この間の局長級ミーティングで、そこのもふもふがホタルコのことを話したものだから、今あなたは注目の的なのよ?」

「う……すまない、螢子くん。

 まさかそんなことだとはつゆ知らず……」

「ほんと、迂闊よね」

「いえ、知らなかったものは仕方がないです……」

「うちはここと違って対面業務じゃないから、裏方に匿ってあげられるわよ?」

 ふむ……。


「フーちゃん局長。

 さっきの体験の話ですけど、お受けします」

「え!?

 ほんと!!」

 文字通りフーちゃんが飛び上がって喜んでいる。

 ふわふわのフリルが舞う様子はとても愛らしい。

 ……さっき、600年前から生きているような話を聞いた気がしたけど、聞かなかったことにしよう。

「ちょ、ちょっと螢子くん!?

 さっきは『行かない』って言ってたじゃないか!」

 逆にうちの局長は目を丸くして(元々丸いけど)驚いている。

「ええ、ですから『転属』ではなくて『体験』です。

 いちいちスカウトの人を断るのもめんどくさいので、その間匿ってもらってきます。

 なので、追い払うのはお願いします」

 題して『いない間になんとかしてもらおう作戦』!!


「えーっと、つまり面倒ごとは任せる、ってことだね……?」

「いやいやー、違いますよー?

 頼りになるもふも……ラビエン局長だから安心できるんですよー?」

「……こういう時だけちゃんと名前を呼ぶんだな……しかも、普通に『もふもふ』って言いかけてるし……」

 細かいことは気にしない方向でお願いします。


「ま、様子を見ながらってことで、1週間くらいでいいわよね?

「さり気なく日数を伸ばさないでください」

 さっきは3日って言ってたのに。

「でも、『匿う』ってのが目的なら3日じゃ短いんじゃない?」

 う、確かにそうかも。

「じゃあ、その方向で」

「おっけー!

 ふっふっふ、その1週間のうちに『転移局の方がいい!』って言わせてみせるわ!!」

「あー、まぁ、そうですねぇ……」

 転属する気はさらさらないけど。

「覚悟してなさい! もふもふ!

 このままホタルコはうちの子にしちゃうんだから!!」

 ビシィッ! っとちびっ子(フーちゃん)もふもふ(ラビエン局長)を指差す。

 なんというか、どうにも緊迫感がなくなるな、この二人。


「あとはよろしくお願いします。

 ミルティ先輩にも、迷惑かけてすいません、て言っておいてください」

「早く帰ってこれるようにこっちはなんとかしておくよ」

「頼りにしてます」

「そう言っていられるのも今のうちよ!

 おーっほっほっほ!」


 リアルな高笑いなんて初めて聞いたなぁ、と思いながら会議室を後にしたのだった。


いつも応援ありがとうございます♪

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同時連載の星てに(ほんのり百合らぶすとーりー)もよろしくです!

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