第14話 夢の中で
今回から第3章スタートですっ!
気がつくと、真っ暗な空間にいた。
上も下も、右も左もわからない。
立っているのか座っているのか、はたまた寝ているのか浮いているのか。
自分を見下ろしてみても何も見えない。
そもそも、目が空いているのかすら自信が持てない。
――そんな真っ暗闇の中にいた。
「これは……」
昨日の夜は、久しぶりにミルティ先輩とお酒を飲みに行ったけど……泥酔するほど飲んではないし、仮にそうだとしてこんな所に来る理由もなければこんな場所がどこにあるのかすら知らない。
と、なると。
「夢か……」
「さっすが、螢子ちゃん。
冷静だね~?」
ぽう、っと目の前が急に明るくなったかと思ったら、全体を光に包まれた人影が現れた。
急に明るいものを見たせいで目が眩む。
光ってるのに影でいいのかな、とかよくわからないことを思いながら、聞き覚えのある声に言葉をかける。
「えーっと……弥勒さまですね?」
「そだよん。
元気してた?」
相変わらず軽い。
ようやく慣れてきた視界には、以前と同じように野球帽にTシャツ短パンのスタイルの弥勒さまが映る。
とても『偉い神様』とは思えない。
もしかして、この格好で修行してたのだろうか……?
「やだなぁ、螢子ちゃん。
さすがに修行中はこんな格好じゃないよ~?」
「人の心を読まないでください」
「あはは、ごめんごめん」
「で、今回はなんの用ですか?
わざわざ人の夢に出てくるなんて、よっぽどなんですよね?」
「えー?
全然大した用じゃないよ?」
そう言って、けらけらと笑う。
「大した用じゃないなら、帰ってください。
私眠いんで」
「『眠い』って、ここ夢の中だから寝てるじゃん~」
「いえ、夢を見るってことは眠りが浅いってことですよね?
明日に眠気が残ると困るんですよ」
「おお、意外と真面目!」
「弥勒さまが不真面目なだけです」
「ソンナコトナイヨー」
「なんでカタコトなんですか!?」
「さてねぇ?」
むぅ。
こんな所で弥勒さまと漫才をしている場合ではない。
本当は色々聞いてみたい所だけど、この調子じゃ絶対はぐらかされるだろうし。
「えー?
ボクはいつだって誠実だよー?」
「だーかーらー!
人の心を読まないでください、ってば!」
まったくもう。
「……勝手に聞こえてきちゃうんだけどねー……」
「ん? なにか言いました?」
「なーんでもないよー?」
「で、本当に用事はなんなんですか?」
「そうだねぇ。
螢子ちゃんの顔を見に来た、ってことじゃ……ダメ?」
「またそれですか?
こないだもそう言ってましたよね。
そんなに私の顔が見たいなら、写真でも撮っていったらどうです?」
「お、いいねぇ。
んじゃ、グラビア撮影でもしようか!」
「しっ!しませんよっ!!!」
手のひらの上で転がされてるみたいだ……。
あ、でもあれって仏さまだっけ?
弥勒さまでも合ってるっちゃ合ってるのか。
「キミは面白いなぁ」
「……からかうためだけに来たんですか?」
「違うよ。
うん、でも……大丈夫そうだから行くよ」
「ほんと、何しに来たんですか?
ていうか、早く戻ってきてくださいよ」
「気が向いたらね~。
あ、そうそう。
螢子ちゃんさ、こないだ天界の人と会ったでしょ?」
「え? ああ、なんか弥勒さまと会いましたって言ったら事情聴取されましたけど」
「天界人には気をつけてね。
あいつら手段を選ばないから……。
ボクが来たらわかるようなアラーム魔術がキミに仕掛けられてるしね」
「アラーム?!」
「うん、だから夢で会いに来たんだけどね~。
一応この記憶は残らないようにしておくから。
じゃね~~」
行ってしまった。
『大丈夫そう』って言ってたけど、なにがだろう。
相変わらず掴みどころのない人? 神様? だ。
天界に注意、って言われても何したらいいんだろう。
……ん? まてよ?
この『夢』を忘れちゃうんだったらどうしようもないんじゃ――
チュンチュン
「……朝、か。
なんか変な夢を見た気がするけど……。
ま、いっか」
ぐぐ、っと伸びをしてベッドから降りる。
窓の外は真夏の雰囲気。
……開かないけど。
夏の熱気は得意ではないので、部屋の中が暑くならないのはいいことか。
この間買って来たカレンダーの『今日』に丸をつける。
あー、もう夏休みかー。
海行きたいなぁ……せめてプールくらいはあるといいなぁ。
その前に、私のお仕事って夏休みとかあるんだろうか?
今度局長に聞いてみよう。
いつも応援ありがとうございます!
気に入って頂けたら、評価やブックマークをお願いします!
同時連載中の星てに(ふんわり百合なラブコメ?)もよろしくです♪
下にリンクありまっす