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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第2章 転生業務は苦労がいっぱい
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第13話 転生管理局のおしごと

「あれ? これって……?」


『適性:魔王』


 いつものように『眼』を使っていたところ、視えたもの。

 確かに、今までも『暗殺者(アサシン)』だったり『破壊者(デストロイヤー)』だったり、およそ世界を救いそうにない適性を持った人もいたけれど。

 それにしても、魔王適性の転生者なんていいのだろうか?


「先輩、ちょっと……」

「はいはい。

 ……少々お待ちくださいね〜」


 ちょうど会話の途切れたタイミングを狙って連れ出す。

 ここまで来れば大丈夫だろうか。

 念の為小声で話した方がいいかな?

「どうしたの?」

 ミルティ先輩も察してくれたらしく、カウンターに座る彼には聞こえないよう小声で聞いてくれる。

「えっと、ですね。

 あの彼、最も適性が高いのが……『魔王』みたいなんです」

「魔王適性!?

 ……うーん」

「やっぱり、マズイですよね?」

「え?」

「異世界転生して世界を救うどころか悪のボス側だなんて……」

「なんの問題もないわよ?」

「ないんですか!?」

「螢子ちゃん、声が大きい」

 っと、いけないいけない。


「で、でも、いいんですか?」

「詳しい話はあとでするけど、ヒトコトで言っちゃえば『魔王を求めてる世界』もあるってことよ」



 魔王適性の彼は、とてもいい顔をして旅立って行った。

「ボク、ずっと魔王ってやってみたかったんですよ!!」

とノリノリで……。

 ミルティ先輩は「あら、良かったわねぇ」なんて返してたけど……本当にそれでよかったんだろうか。


「それじゃ、休憩しながらさっきの話をしましょうか」

「はい、お願いします」

「さて。

 じゃあおさらいからね?

 螢子ちゃんは、ここのお仕事は何をすることだと思う?」

ここ(転生管理局)の仕事ですか?」

 改めて聞かれると、悩ましい。

「そうですねぇ。

 何かしらの能力(スキル)に適性を持った人が、不慮の事故などで早くに亡くなった際に、異世界を救うための転生を管理すること、でしょうか」

「惜しい!

 それだと、そうねぇ……70点くらいかな?」

「えー、低くないですかー?」

「そう?

 本当は50点にしようと思ったんだけど」

「ど、どこがダメなんですか!?」

 50点まで低くはならない、と思ってたんだけどな。


「ポイントは1つ。

 『異世界を救うため』だけじゃないってことよ」

「異世界を救うためじゃない(・・・・)転生……?」

「例えば今回の彼。

 彼の目的は『魔族を救うこと』であって、世界そのものではないわ。

 結果として、世界の均衡が保たれることによって世界そのものも救われるのかもしれないけれど」

「で、でも。

 結果として世界も救われるなら、それは『異世界を救うための転生』なんじゃないんですか?」

「違うわよ。

 だって、『世界そのものも救われるかもしれない』というのは『救われないかもしれない』ということで、実際救われなかったとしても問題にならないもの」


 ……なるほど。

 言葉の意味ではその通りだ。

 でも、じゃあなんで転生者を送り込む必要があるんだろう?

「それにね。

 最終的には弥勒様が全部救う(・・・・・・・・)ことになっているから」

「あー……」


 なんとなく。

 ストンと落ちた気がした。

 いや、色々と納得がいかないこともなくはないんだけど。

 例えば『救われるにしても58億年待たなきゃだめなの!?』とか……でも、

「つまり、それが天界の方針ってことですか」

「そういうこと。

 彼らとしても、滅びてしまうことは良しとしないので、そうならないために転生・転移者を送り込む調整をするんだけど――」

「とりあえず滅びさえしなければ、最後には弥勒さまがなんとかしてくれる……と」

「もちろん、救えるなら救ってしまおうとは思ってるみたいだけどね。

 まぁ、それぞれの世界を管理している『世界管理者』の要請を受けて、ってこともあるんだけど。

 今回の彼はそのパターンね」

「『世界管理者』?」

「いわゆる『神さま』と呼ばれる存在よ。

 その世界を管理している人や、場合によっては組織のことを言うわ」

「……神さまも、ここの関係者なんですね」

「ここというか、天界かな」

 ……なんというか、天界ってすごいところだな……。


「後もう一つ。

 救うためじゃない転生、って言って思い出すことがない?」

「他にも、ですか……?」

 んーー???

 なんかあったっけか。

 思い出すことがないか、って聞くからには今までに私もそれに携わったことがあるってことだろう。

 

「あ!」

「わかった?」

「はい。

 技術の流入による文明レベルの向上、みたいな?」

「せいかーい」


 以前の錬金術師になる、って言って送り出した子がそうだ。

 地球で科学全般に秀でていて、将来は科学の常識をひっくり返すだろう、と言われていた子。

 確か、付与されたスキルは世界図書館(アカシックレコード)

 あまりに膨大な情報を扱うため、使いこなすことができるかは五分五分ってことだったけど。

 ……そういう意味では、私の紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)に似ているのかもしれない。

 なんか、勝手に親近感が湧いてきた。

 大変だと思うけど頑張ってほしいものだ。


「ここでの仕事も結構慣れてきたと思ってましたけど、まだまだ知らないことがいっぱいですねぇ」

「ふふふ、ちょうど半年くらいになる?」

「んー……どうなんでしょう。

 多分そのくらいだと思いますが、どうもここって時間の感覚があいまいで」

「時間はあるけど、暦がないからねぇ」

「そうなんですよねー。

 なんとなく、カレンダーでも飾ってみようかな」

「それもいいかもしれないわね」


 そういえば、今朝の窓からはすごく夏っぽい空が見えたし、7月ってことにしておけばいいか。

 帰りに雑貨屋さん寄っていこう。


いつも応援ありがとうございます。

ここで第2章は終わります♪

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同時連載中の星てにもよろしくです!

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