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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第2章 転生業務は苦労がいっぱい
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第11話 見通す力

「具体的には何が見えたんだい?」

 バラを片手に、促す局長。

 さっき現れた時は持ってなかった気がするんだけど、どこから出したんだ?

「具体的に?」

「さっきの彼に、『あいつ(・・・)』の『()』を見せたくなかった理由があるんだろう?」

「はい、そうですね……」


 私があの時に見た光景。

 それは、ヒトコトで言うと『真逆』のものだった。



 パッと、すぐに目に入ったのは、どこかの廃工場のような場所。

 トタンの屋根は所々破れ、電灯の付いていない室内にうっすらと光が射していた。


 中にいたのは……4人。

 金髪を逆立たせて、赤いシャツに短ラン、ピアスもいくつ付けてるのか数えるのもめんどくさいくらい顔中に付いている男。

 オールバックにメガネ、制服はきっちりと着込んでいる一見すると優等生っぽく見える男。

 ボサボサの頭で顔がよく見えず、なんともやる気のなさそうに壁に背を預ける男。

 そして、ギャルっぽい見た目の『あいつ』と呼ばれていた女の子。


 私も、最初に見えた時は、|この3人の男が女の子を人質に金髪のにーちゃんを待っている場面《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》だと思った。

 けど、すごく違和感があった。

 なんだろう?と思って、更に集中してみると今度は音声まで聞こえてきたのだ。


「ったく、いつまで待たせんだよ?」

「本当に来るのだろうな?」

「…………」


 喋り方がもうなんというか見た目通りで笑いそうになったけど。

 上から、ピアス、優等生、ボサボサ頭のセリフだ。

 そして――


「あー、大丈夫大丈夫、絶対来るって。

 なんてったって、私にベタ惚れだからね」

「へっ、オメーも悪い女だよなー。

 指一本も触らせてねーんだろ??」

「あったりまえじゃん。

 勘弁してよ、あんなやつに触られるとか……うゎっ、考えただけで鳥肌立つ」


 そう、『あいつ』は攫われているわけではなく、どう考えても共犯者だったのだ。

 詳しい経緯まではわからなかったし、これ以上聞いていたくもなかったので見るのをやめてしまったけど。

 目的は、金髪にーちゃんをボコボコにすること、だろうか。


 死んでまで彼女の心配をしている彼には絶対に見せるわけにはいかない、それだけは間違いがなかった。



「なるほど……確かに、それは見せられないな」

「それってもしかして、事故も仕組まれていたってことかしら?」

「それはないと思いますよ。

 普通にいつ来るんだろう?って待ってた感じだったので」

「そっか。

 で、事故の話を聞いて解散した、ってところかしら」

「最後までは見ませんでしたけど、おそらくは」


 言っても高校生だ。

 事故とはいえ、人が一人死んでしまったのだ。

 そこから何かをしよう、ってことはないだろう。


「さて、螢子くん。

 その『眼』の力、少し扱いに注意が必要になるな」

 もふもふの手で頬を挟まれ、ぐいっと『眼』を覗き込まれる。

 兎の眼って、白目がほとんどなくてビー玉みたいだな。

「おや?

 むむむ??」

 何かを見て取ったのか頬に当たる手がぐっと押し込まれる。

 もふもふとはいえ、肉球がないので力を入れられると流石に痛い。

「きょ、局長(きょふひょう)痛いです(いふぁいれふ)

「あ、ああ、すまんすまん」

 慌てて離れる局長。

 ふぅ、びっくりした。


「何か変なものでも見えたんですか?」

 頬をさすりながら尋ねると、局長は神剣な表情(……だよね、これ)で答えてくれた。

「どうも、レベルアップに加えて、力が右眼に集中したことによって、新しい力が目覚めたようだね。

 力を使っていない状態でも、瞳の色が紫になっているよ」

「うぇ、マジですか」

「ん?

 そんなに嫌がる要素があったかい?」

「だって。

 右が紫で、左が黒、って。

 どんな中二病設定ですか!?」

 『くっ、右眼がうずくぜ』とか言わないといけないのかな……。


「大丈夫よ、螢子ちゃん。

 左右の瞳の色が違うのなんて、むしろこっちでは普通なんだから」

「そうなんですか?」

「ええ、私もほら、よく見て?

 違うでしょう?」

 ミルティ先輩の瞳は、どっちも少し緑っぽい黒、だと思ってたけど……

「ほんとだ……」

 じーっと覗き込んで見てみると、右眼は緑寄りで左眼は青寄りだ。

 どっちもほぼ黒と言っていいくらいに深い色のせいで全然気づかなかった。

「ボクは見ての通り青白(ブルーアンドホワイト)赤白(ピンク)だよ?」

「それは見たらわかります。

 でもほら、局長はもふも……ウサギだし」

 人とウサギは違うからね。

「ふむ……どうでもいいんだけど、螢子くん。

 君、もしかしてボクのこと『もふもふ』と呼んでいるのかい?」

「え?

 ……ヤダナァ、ソンナコトナイデスヨ?」

 一応、ここで一番偉い人をそんな。

「妙にカタコトっぽい気がするが……」

「まあまあ、いいじゃないですかそんなことは。

 でもそっか、右眼だけか……」

 あの時。

 あまりの情報量に耐えられず右眼だけで見たから、だろうなぁ。

 濃縮されたってことなのかな?

 

「しかし、紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)の時点で相当レアなのに、さらにそれがレベルアップするとは」

「局長も知らなかったんですか?」

「伝説レベルの話でしか知らないよ。

 最高レベルの紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)は、すべてを見通す力を持つ、というね」

「全て、ですか」

「そう、全て、だ。

 紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)が見るのは、目に映るものだけではなく『情報(・・)』だ。

 けれど、情報はあればあるほど処理(・・)をしないことには使えない」


 まさにそのとおりだと思った。

 弥勒さまを見た時の情報の奔流は本当にものすごかった。

 そうか……処理しきれなかった(オーバーフローした)からこその頭痛だったのか。


紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)には、そのレベルに応じて見ることのできる情報量と処理することのできる情報量が決まっている、と言われている」

「え、でも、弥勒さまを見た時はもうとんでもない量でしたよ?」

「……ふぅむ、それは恐らく、弥勒さまの持つ情報量が膨大すぎて、|それでも見えている量としては少なかった《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》と考える方が妥当じゃないかな?」

 うわぁ、あれで少ないのか……。

 ……てことは、もっとレベルが上がると、あの情報量すら処理できるようになる、ってこと!?

 それは……見てみたい気もする……けど怖い気もする。

 うーん。


「よし、螢子くん、1つお願いがあるんだが」

「お願い、ですか?」

「ああ、そうだ。

 『お願い』だ」

「えと、できることであれば?」

「今後の業務なんだが。

 その『眼』を使った、バックアップとして動いてもらえないかな?」

「バックアップ、ですか?」

「ああそうだ。

 ミルティくんが受付を行っている後ろで『眼』を使った鑑定を行ってほしいんだ」

「あら、いいわね。

 螢子ちゃんが見てくれるなら私も安心できるわー」

「え、ええ!?」

「ダメかな?」

「あ、いや、ダメではないですけど……」

「では、とりあえず『試し』でいいのでやってみてくれ。

 頼んだよ」

「はい……」


 極力『眼』を使わないように生きていた私が、まさか『眼』を使った仕事をすることになるなんて……。

 人生何があるかわからないなぁ……まぁ、一回死んでるけど……。


いつも応援ありがとうございます。

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