第9話 思ったよりも厄介なもの
「……ちゃん…………螢子ちゃん?」
「……あ、あれ?
ここ……うわっ!」
「よかった、気がついた」
呼びかけに答えて目を開けると、Yさんのドアップだった。
寝起き? にはなかなかインパクトが強い。
「ごめんなさい」
「あはは、いいって。
見慣れてないとびっくりしちゃうよね」
「ほんと、すみません……」
「で、どうしたの? こんな所に寝て。
確かにひんやりとして気持ちよさそうではあるけど」
こんな所……?
体を起こして周りを見ると、
「廊下……?
あれ、なんでだろう……?」
「廊下というか、あそこの扉が調査課よ?
なんか用でもあった?」
調査課に用事……いや、そんなものはないはず。
じゃあなんで?
いつものように、お昼だからって食堂へ向かっている途中で――
「あっ!
っっつつ!!」
思い出したと同時に、頭の奥にズキンと痛みが走る。
「だ、大丈夫!?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね……」
すーーーっはーーーっ
ゆっくりと深呼吸をして頭痛をやりすごす。
ふぅ。
「あの、Yさん。
ここには私しかいなかったですか?」
「え? そうねぇ……私が通りがかったときには螢子ちゃんだけだったわね」
「そう……ですか」
ということは、あのまま行っちゃった、ってことか。
「ほんと、何があったの?」
「さっき弥勒さまに会ったんです」
「ええ!? ほんとなの!?」
「はい……なんか『私の顔を見に来た』って……」
「螢子ちゃんの?」
「『眼』のことも知ってましたし、どうやら物心つく前に会ったことがあるらしくて」
「そんなことが……」
結局、よくはわからないけど天界へ報告だけは上げとこう、ということになって、Yさんが連絡をしてくれた。
後日改めて天界の人が事情を聞きに来る、とのこと。
今は色々考えても仕方がないし、とりあえずは通常通りの業務に戻ることになった。
「今日は大事をとってお休みしなさい」とミルティさんが言ってくれたので明日からだけど。
で。
「一人になったらなったで、なんか色々考えちゃうよね」
ベッドでくまのぬいぐるみ(だら太郎という名前のゆるキャラで、生前からのお気に入り)に向かって話しかける。
こうやって口に出した方が整理がつくからであって、寂しいキャラでは断じてない。
ないよ!
「て、誰に言い訳してるんだろう」
だら太郎はゆる~~い顔をしてただ見つめ返すだけだ。
「私が『眼』を手に入れたのは、あの事故の時なのかな。
そこにたまたま弥勒さまがいた。
というよりは、あの事故そのものに関係があるって考えたほうが自然な気がする」
うーん、明らかに情報不足だ。
これは本当に考えるだけ無駄なんだろう。
一つだけ、わかったことといえば、
「この『眼』、思ったよりも厄介なシロモノなのかもなぁ……」
ってことくらいだ。
また会えないかなぁ。
もっと詳しく聞いてみたい。
というか。
ここまで来てたならそのまま戻ってくれればいいのに!
またどっか行っちゃったみたいで、私のちゅうぶらりん状態はまだまだ続きそうだ……。
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