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フェバル保管庫2  作者: レスト
二つの世界と二つの身体
257/279

61「シズハレポート」

 個人的興味。ここ一カ月と……少し。殺し(仕事)の合間、男、監視していた。

 ホシミ ユウ。

 まるで彗星。突如現れた。この男……このところリクとつるんで……何か調べてる。

 不思議。あんなに生き生きしているリク……見たことない。少し……羨ましい。私……ただ……遠くから見ているだけ……なのに。

 ……いけない。嫉妬。プロ失格。脱線。

 とにかく。ユウという男……調べるほど、謎だらけ。

 最初は……ほんの少しの興味。リクに寄り付く虫がどんなものか……それだけ、だった。

 驚いた。あの男……身元を示す情報……一切ない。生まれの場所……居住地……生活の記録。何も、ない。

 私の組織――エインアークス……優れたデータベース……それでも……何も得られない。あり得ない想定……思う……彼、突然現れた……?

 だから興味、わいた。

 観察対象……指定。

 初めて。神隠れと言われた……プロ。その私の監視……一瞬で見破る奴……いたなんて。

 最低……2キロ離れていた、はず……。私、ミスしない。絶対、しない。完璧……の、はず。

 なのに。あいつ――私見た。

 透き通る……綺麗な瞳……強い。私、睨まれた。……射抜かれた。

 震えた。逃げた。初めてのこと。

 あの男……あれほど……甘い顔してるのに……普段気、抜いてるのに……取るに足らない……そう思ってた。

 実際、隙が無い。

 やるときはやる、意志。覚悟。それ……見えた。私たちと……同じ。実力者……それ以上かも、しれない……?

 油断ならない相手。最大限。気、引き締める。

 振り返る。ユウは、何をした。

 ダイヤモンド……売った。何のため。金。本屋、寄った。何のため。情報。

 ユウは、何も知らない。何も、持たない。そう見える。でも奴……実力者。振りをしている、だけ……かも。

 まさか、別の組織――リクが、危ない……?

 決意した。リクは……私が守る。

 毎日、張り付いた。仕事以外……ずっと張り付いた。張り付いた。眠くても。

 ユウは、ずっと知ってた。たまに……こっち見てた。バレバレ。悔しい。すごく……悔しい。いつか出し抜いてやる。

 ずっと見てた……何もしてこない。リク、何もされない。

 だが……ラナクリム。シグナル……行為。圧倒的課金。

 疑心暗鬼。わからない。何が目的? 本当に、知らない? 知ること、それだけ……? それとも……。

 我慢、出来ない。はっきりさせてやる。ラナクリム、接触……試みる。



 ……わかった。あいつ、バカ。あいつ、間抜け。わかってない。色々。お人好し。底なし。バカ。悩んだ私、バカ。

 しね。死ななくても……そのうち、殺してやる。……目にもの、見せてやる。バカ。



 もっと、しつこく……監視して……やった。でも影、掴ませて……やらない。ちょっと嫌がらせ、気分いい。


 そして……今日。問題は……今。


「何……した……?」


 飛び込んできた……目を疑う、光景。

 夢想病から……目覚めた……!? あり得ない。奇跡でも……見ている、のか……?

 頭、回転しろ。今後の動きは……? どうなる。

 マスコミ、動く。金、動く。組織は……夢想病、治療薬開発……病院運営……社会保障……あらゆる分野、関わっている。

 組織も――当然、動く。

 ユウ……あの男が、台風の目。


 上へ報告しないわけ……いかない、か……。


 リクは……関係ない。ユウのこと。それだけで、いい……だろう。


 監視は――私が続ける。元々していた。それが、妥当。それが……安全。



『………………

 ホシミ ユウ、今後も要注意観察対象とすべし。監視は引き続き、私が適任と存ずる。本件について、判断を仰ぎたし。


 以上をもって、今回の報告内容とする。 

                   No.9 血斬り女』


「シズハレポート、確かに承りましたよ」


 目の前……嫌いな男。いつも……軽薄。何考えてる……わからない。神出鬼没。


「名前。馴れ馴れしい口……聞くな。私とお前……ただの、仕事仲間……それ以上でも……それ以下でも……ない……」

「おーおー、怖いねえ。そうも不愛想だと、せっかくの美貌が台無しだなあ。血斬り女さんよ」

「…………」


 美雲刀――私の魂……名前、そのもの。こいつ、じろじろ見る。うざい。


「減らず口……それだけか? 用……済んだはず。奇術師……消えろ」

「フフッ。つれないな。オレはあんたのこと、それなりに買ってるんだがね?」

「私、お前……嫌い」

「これは手厳しい。仕事仲間とは、嫌でも仲良くしておくものだよ。どうだい。今度、食事とベッドでも」

「プライベート……間に合っている」

「ラナクリムのことかい?」

「……関係、ない」

「関係あるのさ。例えば、君の大切なご友人とかね?」

「……っ……!」


 ……どこまで。知っている!?


 嫌みな顔……詰め寄ってくる。

 逃げられない。足、竦んで……動かない。

 顎に手……添えられた。赤い瞳、見つめてくる。

 おぞましい。やめろ。気持ち悪い……。


「いいかい。報告は過不足なく、適切に行うことだ。今回だけは不問としよう。仕事仲間だからね」


 それで。あいつ……忽然、消えた。いつもと同じ。


『奇術師』ルドラ・アーサム。


「……ちっ」


 ……あいつ。苦手。嫌い。ベンディップにむしられて、しまえ。

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