表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェバル保管庫2  作者: レスト
人工生命の星『エルンティア』
166/279

A-13「焦土級戦略破壊兵器 ギール=フェンダス=バラギオン」

 ウィルは、簡単にこの星のあらましについて説明してくれた。胸糞の悪くなるような二千年の歴史を。

 くそ。まさかそんなことになってやがったとはな。

 一度ユナと共にあからさまな破滅からは救ったものの、結局は時間の問題だったということか……。

 やっぱり人間というのは、業が深いもんだな。

 どこか空しいような哀しいような気分を覚えつつ、目の前の男が話し続けるのを聞いていた。

 ウィルは、唐突に話題を変えた。


「あの星にあるものは、ほとんど全て取るに足らないものだが。一つだけ、まあおもちゃと言える程度のものなら見つけた」


 そしてこいつは、思ってもいなかった驚きの名を出してきた。


「ダイラー星系列。お前も名前だけは聞いたことがあるだろう」

「ダイラー星系列だと!?」


 ここより遥か宇宙の彼方、ビッグバンが起こった宇宙の中心とされる場所――今は巨大なブラックホールに占められているらしいが――そこを取り囲むようにして存在する、フェバルですら容易に手出しが出来ない一大銀河領域がある。

 功名も悪名も高きダイラー星系列。宇宙の観測者かつ管理者を自負する連中が統治する甚大な領域だ。

 おいそれと手出しが出来ない理由は、いくつかある。

 まず、そもそも星系列の外側からそこへ行く手段が少ない。ワープなど、大抵の技術や能力の使用に対しては、たとえそれがフェバルのものであっても容易に通用しないほどの、強固なプロテクトがかけられている。宇宙空間から直接移動で向かうには、宇宙最凶の荒れ場とも呼ばれるウェルム帯を乗り越えなくてはならない。

 逆に向こうから宇宙各地に来るのは毎度容易にやって来ているようなのだが、果たしてどういう理屈なのかは知らない。

 さらにあの一帯は、複数のフェバルが表から裏から統治に関わっているとされている。そんなところに茶々を入れれば、火傷をもらうのはまずこちらということになる。

 もっと言えば、フェバルじゃない奴にも厄介な奴らがごろごろしていると聞いたことがある。これは、たまたまダイラー星系列のとある星に辿り着いたほんの数日後に殺されてキックアウトされたという憐れなフェバル仲間の証言だが。

 まああえてわざわざ自分から関わる理由はないし、星脈を順に辿って旅をしていけば、いつかは自然とそこへ流れ着くとも言われているが――

 まさかそんな大物の名前が、こんなところで出て来るとは思わなかったぜ。

 驚きはそれだけに留まらなかった。ウィルがほくそ笑む。


「ギール=フェンダス=バラギオン。あれが一体、置き残されていた」

「てめえ。何がおもちゃだ。物騒な名前出しやがって……! とても今のユウの手に負える代物じゃないぞ!」


 ギール=フェンダス=バラギオン。

 星間戦争において主力となる量産型「焦土級戦略破壊兵器」の一種だ。横暴を許せば、単体でもその名の通り星全体を焦土に変えてしまいかねないほどの性能を誇る。

 最も厄介なのは主砲だ。あれは確か、触れたものを全て消し去る物質消滅の効果を持っている。

 単純な攻撃力だけなら、能力が戦闘向きじゃない一部のフェバルよりも高い。

 その上となりゃもう、星そのものの形を変えてしまうレベルの「星撃級」と、星を丸ごと跡形もなく消し飛ばしてしまう「星消滅級」の兵器くらいしかお目にかかったことがない。……どちらもダイラー星系列産の兵器だけどな。

 星撃級や星消滅級のようなものは、この広い宇宙でもそうそう滅多に存在しないし、仮にあったとしてもさらに輪をかけて使われることは少ない。戦う相手というのは、つまり大抵の場合は屈服させたい相手なわけだ。それを丸ごと消し飛ばすなんてのは、およそそれ自体が目的でもない限り、馬鹿げたことだからだ。

 俺は、激しい焦りが押し寄せて来るのを感じながら毒吐いた。

 確かに焦土級程度なら、輸出されて使われることもあるだろうよ。だからっつったって、こんな遠く離れた辺境の星にそうそうあって良いような代物じゃねえだろうが!

 そしてウィルの奴が今何を考えているのかも、手に取るようにわかる。状況を操るのが好きなこいつのことだ。絶対ろくでもないことをしようとしてるに違いない。


「くっくっく。せっかくだ。ユウの奴とぶつけてみて、どんな化学反応が起こるのか。見てみようじゃないか」

「くそっ! させるかよ!」


 もう戦うしかねえ。【反逆】で邪魔しようとしたとき、こいつは至極残酷な笑みを浮かべたのだった。


「今度は僕の方が早いぞ」


 わざわざ、こいつが手をかざすまでもなく――

 くそったれが! この野郎は、とっくのとうに準備してやがったんだ!

 眼前に映る星の一部――ティア大陸の南側。無人の領域に、チカッと白い光が瞬いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ