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お菓子職人の成り上がり~天才パティシエの領地経営~  作者: 月夜 涙(るい)
第四章:感謝と友情のクラウン・チョコレート
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第七話:グレープシードオイル作り

 エクラバで開く店の視察を終えた俺は、無事自分の村に戻ってきていた。

 油の調達も目途がつき、エクラバでの目的はすべて果たすことができていた。

 ここ数日は、店を開くための事務処理を領地経営の合間に行っている。


 そしてエクラバでは思いもよらないことを聞かされた、それは男爵への任命。

 こんな形で、アルノルトの悲願がかなうとは思っていなかった。

 準男爵は仮初の貴族でしかなく、男爵となって本物の貴族になることはアルノルトが初代からずっと願っていたことだ。

 任命式も時期を調整中で早ければ、来月にでも実施されるそうだ。


「クルト様、素敵なお店になりそうですね」

「うん、素敵すぎていろいろと大変だけどね」


 俺は苦笑する。

 正直、あの店は身の丈に合っていない。広すぎるし立地が良すぎる。よほど頑張らなければもてあましてしまうだろう。

 それでも、チャンスであることは間違いない。


 三週間後に内装の工事が完了する。その後、一週間かけて店員の教育を行い一か月後に開店するという予定を立てている。


 そして、そのためには人の調整はもちろん、売るだけの大量の材料が必要だ。

 小麦のほうは、納税予定だったものすべてが、レナリール公爵からの褒美で免除されたので、それを割り当てる。

 卵等は購入する。ハチミツは増産が追いついている。


 そして唯一購入するには高すぎ、自前での生産量が少なすぎた油。

 それを手に入れるための交渉もしっかりとやってきた。そして、その成果が……。


「クルト様、約束のものが届きましたよ」


 俺の家に来客が来た。竜車の御者を務めている男たちだ。

 彼らに、エクラバ郊外にあるワイン工房に行ってもらった。

 目的はもちろん、油の原料の調達だ。


「ありがとう、裏の倉庫に運んでおいてくれ」

「かしこまりました。では、ご指示の通りに。それにしてもおどろきですね。ぶどうの種で、油を作れるなんて」

「うまくいくかは、やってみないとわからないけどね」


 俺が作る油の原料は、白ワインを作るときに取り除いたぶどうの種。

 俺はこれで、グレープシードオイルを作る。


 非常に良質な油で、地球では高級菓子に使われていた。

 化粧品としての評価も非常に高い。

 材料が捨てるはずだったぶどうの種なので原価はほぼただ。

 さあ、早速グレープシードオイルを作ってみよう。

 作り方は非常に簡単だ。おそらく失敗することはないだろう。


 ◇


 書類仕事が一通り片付いたので、午後から倉庫に向かう。

 そこには、天日干しにされ乾燥したぶどうの種がぎっしり詰まった木箱がいくつも重ねられていた。

 いつの間にか、ティナだけではなくエルフのクロエもやってきていた。


「クルト様、今から油を作るんですね」

「そうだね。無事成功することを祈ってるよ」

「まあ、大丈夫でしょ。精霊の里でもパプルから油作ってるし、できないわけないよ」


 俺は小さく笑う。

 クロエの言葉は心強い。

 俺も深い知識があるわけではないので、彼女の精霊の里での経験が役に立つかもしれない。


「どうやって油を作るんですか?」

「すごく簡単なんだ。ぶどうの種を干して乾かして、あとは潰して油をこしとるだけだよ」


 そのために、俺の土属性の魔術で簡単な道具を作ってある。

 ひきうすのようなもので、中央に乾燥させたぶどう種の注ぎ口があり、さらに油が自動的に一か所にたまるように傾斜ができている。集まる先はガラス瓶になっていて、どれだけ油が溜まったか見ることができた。


 ブドウの種子は意外にオイリーで、種の10%は油だ。干すことで水分は飛んでおり、潰すと純粋な油が出てくる。


 このひきうすに種を入れて、くるくる回すと種が潰されて油がにじみ出てくるはずだ。


「さて、さっそくやってみようか。俺がうすを回すから、ティナはどんどん種を注いでくれ」

「はい、やってみます! クルト様」


 そして、油づくりが始まった。

 最初は少しずつ種を注いでいく。


 俺が取っ手を回すと、種がごりごりと潰れていく。ほんの少しずつ油がにじみ、傾斜によってにじんだ油が一か所に集まっていく。


「うまくいきそうだね」

「はい、ちょっとずつですが油が溜まっていってます」

「ティナ、もう少し種を入れるペースを早くして」

「これぐらいですか?」

「もう少しかな」

「これならどうですか?」

「うん、ちょうどいい」


 油が溜まるペースがあがる。

 そして、ただもくもくと乾燥したぶどうの種をつぶしていく。

 三十分もしたころ、ガラス瓶が油でいっぱいになったので一度作業を止める。


「ふう、油はちゃんととれるな」


 ガラス瓶を傾けると、油特有の粘りがあった。


「きれいな油ですね。すごく鮮やかな緑色で」

「香りもいいよ。たしかめてみる」


 俺がガラス瓶を渡すと、ティナは笑顔で受け取る。


「うわぁ、甘酸っぱい爽やかな香り」

「あっ、わたしも試してみたい。うん、いい香り」


 原料がぶどうなだけあって、とても爽やかで清涼な香りだ。

 地球でも、グレープシードオイルは高級品としてもてはやされている。

 それを使ったお菓子、まずいはずがない。


「あとで、これを使ってピナルの蜂蜜ケーキの味がどう変わるか試してみよう」

「素敵です、クルト様!」

「クルミ油も美味しかったけど、また違った美味しさになるのかな? クルト、わたしも楽しみだよ」


 二人とも興味津々といった様子だ。

 とはいえ……


「ただ、結構疲れるし時間がかかるね。作業的にはすごく簡単だから、ヨハンたちに任せちゃおう。今度水車でも作ってみようかな」


 この作業ならヨハンたちでも十分にできるだろう。

 少し力がいるが交代しながらなら問題ない。

 将来的には、水車を作って自動化したいところだ。


「水車ってなんですか?」

「こう、水の力で歯車を回すんだよ。その歯車で石臼をくるくる回す。そうすると、水が流れている限り勝手に油を搾ってくれる」

「それは素敵ですね! すごく楽そう」

「ただ、それを作る工事が大変でね。俺の村にはそんなもの作る余裕がないから、街から職人を呼ばないといけない。そうするとお金がかかる。お店が軌道に乗って、お金がたくさんできるようになったら、そうしよう」

「それがいいです」


 ティナが微笑んでくれる。

 やっぱり人材不足は深刻だな。人手が純粋に足りない。

 ヨハンたちを引き取ることで中止した人材募集を再開する必要があるかもしれない。


「まずは、今日は作れるだけ油を作ろう。ティナ、クロエ、もうひと踏ん張りだ」

「任せてください、クルト様」

「あっ、クルト、そのくるくる回すの代わるよ。わたしも力には自信があるんだ」


 そうして、今日は一日中油づくりを続けた。

 そのおかげで、たっぷりと油がとれた。

 次々に、ぶどうの種は送られてくる。

 もし、油が余るぐらいになったら、お菓子に使うだけじゃなくて売ろう。

 グレープシードオイルは、高品質な油だ。きっと高値で売れるだろう。

次第に店が形になっていきます!

クルトの店が開くのはもうすぐ!


そして、先週発売した。魔王様の街づくりの宣伝を下に。画像がなろうのリンクになっているので気になったら読んでくださいな!

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