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異世界に行ったら女神の眷属になってました  作者: クロネコ
 第一章 始まりの風が吹く森
8/43

8話 餓狼との戦い

戦闘回です。

3/07 称号《異世界人》の効果に言語翻訳を追加。

修正情報:ステータスに種族追加、魔物のステータスにMPを追加。若干文章を修正。経験値の表示を変更。

「ユウキ、これを持っておけ」


 ブラックウルフ討伐の依頼を受けた俺達。ホルン村を出ようとした所でムトーが俺に何かを差し出してきた。


「ナイフか?」


「正確に言えばダガーだ。俺が作ったやつでな、三本入ってる。懐に飛び込まれた時や獲物を剥ぎ取る時とかに使うといい」


 ムトーが差し出してきたのは、茶色い革で出来たナイフホルスターに収められた三本のダガーだった。受け取った俺は早速それを両方の太腿に一本ずつ、残りの一本を腰に装着した。


「ありがとう。いざと言う時に使わせてもらおう」


「じゃあ、私からはこれを渡しておくわね?」


 すると今度はエレナさんから青い液体の入った小瓶を5つ渡された。これはもしかして…?


「回復用のポーションよ。戦闘で傷ついた時に使いなさい。でもまあ、私がいるからその機会もないと思うけれどね?」


「ありがとうございます」


 エレナさんにも礼を述べておく。でも確かに、エレナさんが居る以上は必要無さそうだ。エレナさんは水・土・氷の三属性を扱えるらしく、治療や支援魔法を主に使う後方支援タイプらしい。逆にムトーは魔法は使わず、持ち前のパワーと頑丈さで近接戦を仕掛けるタイプらしい。


 二人からの贈り物を受け取ったところで、村の北側から外に出る。森とは反対方向に位置していて、目の前には大平原が広がっている。遠くにはオオカミらしき魔物の姿も見える。


「おぉ……!」


「ノルディン大平原よ。この国の殆どを占めていて、北にまっすぐ進めばいずれ王都に到着するわ。その分、魔物とは沢山戦うことになるでしょうけどね」


 目の前に広がる若草色の大地を見つめていると、エレナさんがそう説明してくれる。ゼ○ダで言うハ○ラル平原みたいなものか。


「さて、さっさと依頼を完遂しちまおうぜ?っとその前に、あそこのオオカミ共でユウキのレベルアップが優先か。行こうぜ」


 ムトーの言葉に俺とエレナさんは一つ頷くと、遠く離れた所に見えるオオカミ達の方に向かって歩を進めた。


 オオカミ達に近づくと向こうもこちらに気付いてグルル……と唸りながら威嚇してきた。オオカミの数は三、こちらも三だ。


「ほれ、ワン公ども!かかってこいや!」


 ムトーはそう叫ぶなり、メイスを振りかざしてオオカミ達に突っ込んで行った。敵の注意を惹きつけるつもりなのだろう。


 俺も遅れを取らないように駆け出す。幸い、オオカミ達の注意はムトーに向いているようで俺にはまだ気づいていない。


「後方不注意だ!」


 丁度こちらに背中を向けているオオカミの頭部に向かって俺はフォーミングエッジを振り下ろした。


 オオカミはギャフンと言う断末魔を上げ、大量の血を撒き散らしながら地に倒れ伏せた。直後、脳内にポーンと言う電子音に近い音が鳴った。レベルアップしたという事だろう。だが今はまだ戦闘に集中しなくては。


 と思っていたのだが、見ればもうすでにムトーがメイスで残り二頭の頭を打ち砕いていた。ここら辺のオオカミは少なくとも急所に入れれば弱い俺でも倒せる。そこにLv25のムトーのメイスが頭に直撃したとなればたまったものではない。オオカミ二頭の頭はぐちゃぐちゃで本当にオオカミだったのかと聞きたくなるような状態だ。


「へっ、この程度じゃ準備運動にもならねぇな」


「私も黒いのが出るまでは手持ち無沙汰になりそうね」


「確かにあっさり終わったな。あと、無事レベルアップしたみたいだ」


 戦闘が終わってムトーとエレナさんがそれぞれに言う。その二人の元に移動した俺はレベルアップした旨を報告する。


「ん、もうか?早かったな…まあ、レベル1だから不思議でもないか。本来なら教会の神官のところでレベルアップ時に貰えるボーナスポイントをステータスに振るんだが、お前ならこの場で出来るだろう。やってみろ」


 ムトーに言われた通り、ステータスを開いてみる。見てみると確かにステータスの数値に変動があった。


《ユウキ・フジカワのステータス》


性別 男  年齢 17歳 種族 ヒューマン

Lv: 1→2   EXP 68/100% → 2/100%

HP  100/100 →110/110 

MP  9999/9999

STR  8 → 12

VIT   6 → 10

DEX  10 → 13

AGI   9 → 14

INT  12 → 15


《ボーナスポイントが5ポイントあります》


《スキル》

なし


《アビリティ》

ステータス、ストレージ、無属性魔法


《称号》

異世界人、女神の眷属


 ムトーが言った通り、ボーナスポイントとやらが振れるらしい。STRからINTの5つのステータスの中から振りたい項目に振りたい分の数値を振ればいいのか。HPとMPはレベルアップ時のみ数値が上昇するらしい。


 俺の場合、正直言ってVITとDEXはあまり重要じゃないと考えている。いずれは上げる必要があるが、今1ポイント2ポイント上げた所で大して変わらないだろう。俺に必要なのは攻撃力と素早さだ。それなら若干の上昇でも効果が望めるだろう。


 と言う結論に至った俺は、ボーナスポイントをSTRとINTに2、AGIに1ポイント振った。その結果俺のステータスは、


《ユウキ・フジカワのステータス》


性別 男  年齢 17歳 種族 ヒューマン

Lv: 2   EXP 2/100%

HP  110/110 

MP  9999/9999

STR   14 

VIT   10

DEX   13 

AGI   15

INT    17


《スキル》

なし


《アビリティ》

ステータス、ストレージ、無属性魔法


《称号》

異世界人、女神の眷属


と言う感じで落ち着いた。


「よし。ステータス強化も完了した様だからそろそろ本命を探しに行こうぜ?」


「そうね。あまり時間をかけると帰りが遅くなってしまうし…」


「確かに。ルカを長時間待たせても可哀想だからな」


 オオカミの素材の剥ぎ取りも済ませた俺達はブラックウルフを求めて、その場を去った。


   ☆


 それから二時間くらい経過しただろうか?ようやく俺達は、ブラックウルフとその群れのオオカミ達を発見した。連中は身を低くしてある一点を注視していた。その視線の先には頭部に角が生えたピンク色のうさぎが数匹跳ねていた。


 あれはホーンラビットと言う魔物で、奴らを探している最中に何匹か俺達もエンカウントして戦闘している。攻撃力も耐久力も大したことはないが、かなりすばしっこい奴らでエレナさんの支援魔法がなかったら普通に攻撃を当てるのにも苦労するような奴らだった。


 道中の幾度の戦闘のおかげで俺は先ほどよりもレベルアップすることに成功し、


《ユウキ・フジカワのステータス》


性別 男  年齢 17歳 種族 ヒューマン

Lv: 7   EXP 77/100%

HP  160/160 

MP  9999/9999

STR   34 

VIT   24

DEX   27 

AGI   36

INT    38


《スキル》

なし


《アビリティ》

ステータス、ストレージ、無属性魔法


《称号》

異世界人、女神の眷属


このようなステータスになった。十数体のオオカミと数匹のホーンラビットで5レベルも上昇している。これにはムトー達も驚いていた。いくらなんでも成長が早くないか、と。


 その疑問の答えは案外早く見つかった。というのも、俺の称号の1つである《異世界人》だ。この称号は取得経験値を倍にする効果と言語翻訳効果が隠されていたのだ。ステータス画面を開いていた時に何となくクリックした結果、その効果が発覚した。


 因みに女神の眷属にも効果があって、効果はMPの自然回復速度の上昇だった。俺のMPの回復速度の高さもこれによるものだと推測される。


 とまあ、そんなこんなで先程よりも強くなった俺はムトー達と共に獲物を睨みつけている餓狼達を睨みつけている。彼らはまさか狙っているはずの自分達が別の存在に狙われているとは思っていないだろう。


 奴らが隙だらけの内にステータスを使ってブラックウルフのステータスを調べてみる。


《ブラックウルフ》

魔物ランク C+(変異個体)

HP 1634/3000

MP 410/410

弱点属性 該当なし


 変異個体、ね。確かにあの大きさや風格からして普通ではないのは分かる。それにしてもHPが半分近く減っているのは空腹だからか?先程餓狼と言う表現を使ったが文字通り餓えたオオカミ達なのだろう。これは想定していたよりも楽に仕事が済みそうで助かる。


 俺はステータスで調べ上げた内容をムトーとエレナさんに伝えて作戦を錬る事にする。


「体力が半分近くしか残ってない、か。あの様子からしてそれが餓えから来ているのは明白だが、そういう状態の獣は普段以上のポテンシャルを発揮するからな…手負いの獣を相手にするのは正直気が引けるな」


「そうね。チャンスと思って油断して火事場の馬鹿力を発揮されたらひとたまりもないわ」


 俺からの情報を聞いた二人は口々にそう述べた。つまり相手が弱っているからと言って油断せずに普段以上に警戒して戦いを挑むべきだと言っているのだ。俺もその意見には同意する。


「まずはブラックウルフの周りにいる雑魚共を片付けちまおう。ヤツとの戦闘に水を差されると厄介だ」


 ムトーの言葉に俺とエレナさんが頷く。そこで、連中が獲物に襲いかかろうと一箇所に固まっている今エレナさんの広範囲の攻撃魔法で雑魚を一網打尽にし、その後ブラックウルフとの戦闘に持っていく算段だ。


「《フィジカルディフェン》!」


 作戦開始前にエレナさんに物理防御を上げる支援魔法をかけてもらう。これで多少被弾しても致命傷にはならないはずだ。


「それじゃあ行くわよ?……《レインアロー》!」


 エレナさんが魔法を発動させる。すると上空からオオカミ達に向かって青い魔法でできた水の矢が雨のように降り注ぎ、彼らの身体に突き刺さる。


「ガオゥ!!」


 しかし、ブラックウルフとその側近と思しき二頭のオオカミは野生の勘かは不明だがそれらをうまく回避していた。そして俺達を視界に捉える。同時に牙を剥き出しにしてグルル!と唸っている。せっかく獲物を捕獲しようとしていたのに邪魔されて怒っているのだろう。


 ブラックウルフは残った二頭のオオカミにガウ、ガウ!と言って何かを指示している様子だ。魔物とは言え、変異個体ともなるとそれなりの知能を持っていると言う事なのだろうか。


 オオカミ達はブラックウルフのガウ!と言う号令のもと、俺達に向かって突っ込んできた。


「来るぞ!」


 ムトーがそう声を張り上げたのと、ブラックウルフがムトーに飛びかかったのは同時だった。


 ムトーは突っ込んできたブラックウルフに向かってメイスを振りかぶる……が、あろうことかブラックウルフはムトーのはるか上を飛び越えて行ってしまった。直後、続けざまに二頭のオオカミがムトーに体当たりを仕掛けてくる。ブラックウルフに気を取られていたムトーは反応が遅れて体当たりをモロに喰らう。


「グッ!?こいつら、隊列を組んで……!」


 ムトーがよろめいた所にすかさずブラックウルフが攻撃を仕掛けようと猛スピードで突っ込んでくる。


「危ない!」


 俺は咄嗟にフォーミングエッジを銃形態にして、ムトーに襲いかかろうとするブラックウルフに向かって発砲した。


「ガルァッ!?」


 銃弾はブラックウルフの前を通り過ぎて命中はしなかったが、銃声に驚いたのかブラックウルフはムトーから距離を取った。


「助かったぞ、ユウキ!」


 その間にムトーは態勢を立て直して、オオカミ達を攻撃しようとしていたがオオカミ達はブラックウルフの元に集い、再び隊列を組んだ状態で攻撃を再開した。


「オラァ!」


 先頭にいたオオカミに向かってメイスを振るムトー。しかし、オオカミはそれを軽くヒョイと避けて二番手のオオカミ、三番手のブラックウルフに攻撃のチャンスを作った。


「やべぇ!」


 ムトーは咄嗟に左方向に緊急回避で飛び込む。直後、オオカミの体当たりとブラックウルフの大きい前足のスイングが飛んできていた。


「《ブロウ》!」


「《ロックブラスト》!」


 飛び込んだ影響ですぐに動けないムトーを援護するために俺とエレナさんが魔法を撃って、オオカミ達を牽制する。


「アナタ、大丈夫!?」


「ああ。しかし、攻撃が全然当たらねぇ!何だあの連携はよ!」


心配するエレナさんの声にムトーは何ともないといった風に返事をするが、オオカミ達の連携に舌を巻いている様だ。


「まさかジェットストリームアタックを仕掛けてくるとはな……」


「ジェットストリーム……何だって!?」


「三位一体の連携攻撃の事だ!少なくとも俺の親父やその同年代の人達ならすぐにわかるネタだ!」


 正直侮っていた。魔物がこんな連携をしてくるとはな…。次は俺に注意を引きつけてみるか。ジェットストリームアタックには踏み台突破作戦だ。


「《ブロウ》、《ブロウ》、《ブロウ》!」


 俺は連中の注意を引くためにブロウを連発して撹乱する。するとブラックウルフ達は標的を俺に切り替えたらしく、俺にジェットストリームアタックもどきを仕掛けてくる。


「ふぅ……」


 ここで俺は呼吸を落ち着ける。これはテンポとタイミングが勝負だ。あのデカイオオカミがすごい形相で突っ込んでくるという状況はすごく怖い。だが、ある波紋使いの男爵も言っていたじゃないか。勇気とは怖さを知ること、恐怖を我が物とする事で勇気は生まれると!


 ブラックウルフが俺の目の前までやって来て跳躍する……ここだ!


 俺はフォーミングエッジを剣形態で地面に突き立て、その柄を足場にしてジャンプする。すると丁度ブラックウルフの頭が踏める位置に飛び上がる事が出来た。俺はそのままブラックウルフの頭を踏んづけて、ブラックウルフをやり過ごす。


 直後に飛んできた二番手のオオカミ。コイツにはムトーからもらったダガーをお見舞いしてやる事にする。両腿のホルスターからダガーを抜き放ち、右手に持った方をオオカミの眉間に突き立てる。


 グシャァッ!と言う音と共に傷口から血液が飛び散り、俺の顔や身体を赤く染め上げる。俺は構わずに次にやって来たもう一匹のオオカミに向かって左手のダガーを投擲した。ダガーはまっすぐに飛んで、接近中のオオカミの右前足に突き刺さり、オオカミは態勢を崩して派手に転倒した。


「アイスジャベリン!」


 隙有りと言わんばかりに、エレナさんが魔法で氷の槍を作って転倒したオオカミに止めを刺す。これで残りはブラックウルフのみだ。


「ほれ、ユウキ!」


 ムトーの声が聞こえたのでそちらを見ると、フォーミングエッジを回収してくれたらしく俺に投げ渡してくる。俺はおっと!と若干危なげな様子でそれをキャッチする。


「グルルル……ガオォォォッ!!」


 残っていた仲間すらも倒されて相当ご立腹な様子のブラックウルフ。こちらを激しく睨めつけている。恐らくアイツは俺を狙っているだろうな。ヤツからの殺気をビシビシ感じる。


 その間に、エレナさんが何やら魔法を発動させていたが特になにも起きない。失敗したかと思ったが彼女の表情からしてそうでもなさそうだな。


 念の為にブラックウルフのステータスをもう一度確認してみる。


《ブラックウルフ》

魔物ランク C+(変異個体)

HP 1247/3000

MP 410/410

弱点属性 該当なし



 戦闘による影響なのか、餓えが加速しているのかは不明だがブラックウルフのHPが減少している。テイムの効果対象は瀕死の魔物だ。瀕死という事は最大HPの二割から一割位だということになる。つまり、この状態からあと半分以上HPを削らないといけないということだ。


 ブラックウルフには攻撃事態は殆ど当たってない。強いて言えば俺の踏みつけくらいだ。とある配管工のオッサンの様にジャンプに驚異的な攻撃力を持っていれば良かったんだが、生憎そんな力はない。無い物ねだりしたところで仕方がないので、がむしゃらに頑張るしかないだろう。


 無論、相手の残りHPに気を配らなくてはいけないが……。


 そう思った直後、ブラックウルフが動いた。先程よりも俊敏な動きで大地を踏みしめるように駆け、俺達を撹乱しようとしている。


 さて、どう出ようか……そう思った時だった。


「グルァッ!?」


 突如、駆け回っていたブラックウルフの足元が破裂してその影響で出来たらしい穴に落下する。


「うふふ、《マイン》を仕掛けておいて正解だったわ」


 どうやらエレナさんの魔法だったらしい。先ほどの失敗したと思った魔法がこれだったようだ。これはエレナさんのファインプレーだ。


「今がチャンスだ!行くぜ!」


 ムトーはそう言うや否や、穴の中で藻掻くブラックウルフに向かってメイスを振り下ろす。メイスはブラックウルフの左前足に炸裂し、バキィッ!と骨が砕ける音が辺りに響く。


「ギャイィン!」


 これにはブラックウルフも大きな悲鳴を上げる。あれはかなり痛い。それと、ムトーのレベルからして下手に殴らせるとブラックウルフが死にかねないので急いでステータスを確認してみる。


《ブラックウルフ》

魔物ランク C+(変異個体)

HP 703/3000

MP 410/410

弱点属性 該当なし


 おぉう……500以上のダメージが。あと一回殴れば文句無しに瀕死状態になりそうだが、下手にやらせるとクリティカルヒットで殺してしまうかもしれない。


「ムトー、もういい!後は俺が削る!」


「ん、そうか。わかった」


 ムトーは俺の言葉を聞いて振り上げていたメイスを下げると、ブラックウルフから少し距離を取った。


 ブラックウルフは前足を一本やられたせいで穴から出るのに四苦八苦している。効率良く削るなら今だな。


「《ブロウ》、《ブロウ》、《ブロウ》!!」


 俺はブラックウルフに向かってブロウを三発連続で放った。


 三つの球体がブラックウルフに向かって飛んで行き、着弾すると同時に炸裂する。俺は急いでステータスでブラックウルフのHPを確認する。


《ブラックウルフ》

魔物ランク C+(変異個体)

HP 191/3000

MP 410/410

弱点属性 該当なし



「よし、残り200を切った!これなら……!」


 この時俺は己の勝利を確信していた。それ故に、油断してブラックウルフに反撃の隙を与えてしまった。


「ガウゥッ!」


「!?」


 ブラックウルフは穴から飛び出して真っ直ぐに俺に飛びかかると、骨が砕けてボロボロの筈の左前足を振るった。


「ぐはっ!!」


「ユウキ!!」


 俺は思い切り吹っ飛ばされて地面をゴロゴロと転がった。右腕が激しく痛む。骨折してしまったのかもしれない。腕の激痛に耐えながらそんな事を考えていると、ナニカが光を遮って俺の上に跨った。


 そのナニカは、ブラックウルフだった。奴は涎を垂らしながら俺に食らいつこうとしていた。


「ユウキ!」


「ユウキくん!」


 ムトーとエレナさんが俺の名を叫ぶ。俺はかなり吹き飛ばされたのか彼らとは十数メートル程距離が離れている。あそこからじゃ魔法を使っても間に合わない。


 だが、俺にはまだ勝機があった。テイムだ。これを使えば、目の前のコイツは俺の下僕となるか死ぬかのどちらか一つだ。やるしかない。


「《テイム》!」


 ブラックウルフが俺に齧り付こうとしている中、俺は左手をブラックウルフに突き出してその魔法を発動した。すると、左手からビュンッと白い光が飛び出してブラックウルフを貫いた。


「クゥゥン……」


 ブラックウルフは切なげな声を上げながら俺の上に力なく崩れ落ちた。その巨体に押しつぶされたと思った次の瞬間、ブラックウルフの身体が光に包まれて消滅した。


「ユウキ!」


「ユウキくん!」


 とそこにムトーとエレナさんが駆け寄ってくる。


「無事か、ユウキ!?」


「あ、ああ。腕を骨折したみたいだが、命に別状はないみたいだ」


 ムトーの問い掛けに俺はそう答えながら内心がっかりしていた。この様子だとテイムには失敗したみたいだな。頑張ったんだがなぁ……。


 そんな沈んだ気持ちで立ち上がる……すると、俺の腹部から赤い何かが落ちた。


「ん?」


 何かと思って拾ってみる。それは赤色に輝く丸い宝石だった。これって……もしかして?


 そう思っていると目の前にウィンドウが出現し、そこにはこんな文字が書かれていた。




《ブラックウルフのテイムに成功しました。 入手アイテム・輝石ブラックウルフ》

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