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異世界に行ったら女神の眷属になってました  作者: クロネコ
 第一章 始まりの風が吹く森
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7話 冒険者ギルドと討伐依頼

戦闘回の予定でしたがその前に一話挟ませていただきます。

修正情報:登録必須事項及びギルドカードの表示内容に種族を追加。

大金貨の価値を1000Gから10000Gに変更。

 俺がここに来てから約五日が経過した。ルカのお気に入りと言う場所で技のトレーニングを積みつつ、ムトー達の手伝いをしながら過ごしていた。


 そんなある日の早朝。俺は顔を素早く洗った後、家の近くに生えているそこそこ大きな木の前に向かった。その木の一本の枝からは等身大の藁人形が一体吊るされている。倉庫の中にあった藁を分けてもらって俺が作ったものだ。


 その人形の前に立ち、意識を集中させる。


「すぅ……はぁ……―――フッ!!」


 シュババババ、と言う擬音を付けられそうな勢いで目の前の木に吊るされた藁人形に右足による連続蹴りを放つ。五発の蹴りを打ち込んだ後、すかさず左足による後ろ回し蹴りからの連続横蹴り。


 更に新体操部だった頃の経験を活かしたサマーソルトキック。そこからさらに接近して人形の側頭部に右飛び膝蹴り、振り返りながらの左エルボーを叩き込んだ。そこから更にパンチやキックといった近接格闘技を人形に打ち込んでいく。この早朝トレーニングは一昨日から始めたもので、いざと言う時のために行っている。いずれ魔物とは戦う事になるはずなのでこういう地道なトレーニングが重要だと思ったからだ。


 トレーニングを一時間程やったところで、エレナさんが朝食の用意ができたというので俺は一度井戸で顔を洗って汗を拭いてから朝食の席へと向った。


   ☆


「買い物、ですか?」


「ええ。一緒に来てくれないかしら?」


 朝食の席でエレナさんに買い物をしに近くの村まで行くので一緒に行こうと誘われた。というのも俺はストレージと言う特殊能力を持っている。つまり荷物持ちにピッタリと言う訳だ。これから向かうというその村はここから北に向かって歩き、森を抜けた先にあるらしい。片道二時間はかかるそうだ。


 いくら魔物よけを使った所で買い物の重い荷物を持って徒歩二時間はキツイだろうと思った俺はソレを快諾した。それに、村に行けば他の街などの都市に比べれば小規模ではあるものの冒険者ギルドがあるらしい。


 そこでは魔物の素材なども買い取ってくれるらしい。今、俺のストレージの中にはオオカミ三頭分の素材が入っている。こっちに来た時に仕留めた奴らのものだ。あの時ムトーが自分自身が仕留めた分も含めて持ち帰って居て、この間俺に素材の剥ぎ取り方を教えてくれたのだ。


 そしてその剥ぎ取った分はお前が好きにしろと言って半ば強引に押し付けて来たのだ。オオカミの毛皮やら牙なんかを渡されたところでどうすれば良いのかも分からず、一先ずストレージに突っ込んでこやしにしていたのだ。この際なのでそこでこの素材を売り払って金にでもしようかと思った。


 朝食を終えた俺は、簡単な身支度を済ませて――と言っても部屋に置きっぱなしのフォーミングエッジをストレージに突っ込んだだけだ――表に出る。するとそこには既にエレナさんにルカ、そしてメイスを腰に下げたムトーの三人が待っていた。


「何だ、ムトーも行くのか?」


「おう。久しぶりにギルドで依頼でも受けようかと思ってな」


 何でも村に買い物に行った際にムトー達は、作ったダガーナイフや剣といった武器を売ったりギルドの依頼報酬で収入を得ていると言う。そしてそこで得た金で買い物をして帰るというのだ。昔は鍛冶で生計を立てていたが今は依頼報酬をメインの収入源としているらしい。鍛冶に使う道具や素材は高い上に、この辺の村ではあまり売れないと言う。それに野菜なら家の畑で収穫できるから大して金は要らないからだとか。


 彼らの言葉に納得した俺は、ムトー達と共に森を抜けた先にあると言う《ホルン村》へと向かった。


 道中は魔物除けの効果もあって特に何も起きる事はなく、のんきに他愛もない雑談をしながら歩き続けること約二時間。流石にそろそろ足が疲れてきたな……と思った所で森を抜けた。


「ほれ、ユウキ。あそこに見えるのがホルン村だ」


 そう言ってムトーが指差した先には複数の人工物が建てられている集落が見えた。よく見ると帆付きの馬車が出たり入ったりしているのが見えたので、小さいとは言えそれなりに活気のある村なのだという事が伺えた。


 その後、村に行くのが久しぶりではしゃいでいる様子のルカに急かされた俺達はホルン村へと足を踏み入れた。


 まずは買い物と言う事で、色々と店を回ってパンやら肉やらを買い込んで行く。購入した品物達は後で人目を盗んでストレージにぶち込んだ。あまり見せつけるものでもないからな。


 買い物を済ませた俺達は村の食堂で簡単な食事をとると、今度は冒険者ギルドへと向かった。村の中でも一、二を争う大きさの建物の中に入る俺達。中には数人の冒険者と思しき人達と、ギルドの職員と思われる制服を来た人達がいた。


「あら?ムトーさんにエレナさん、それにルカちゃんも。こんにちは」


 すると、こちらに気付いたらしい職員の一人が声をかけてきた。声をかけてきたのは若い女性だ。セミロングの金髪碧眼で青い制服を着こなした彼女は正に美人受付嬢と言った所だろう。


「こんにちは、メアリ。」


「よう、メアリ。今日も買い物ついでに依頼を受けようと思ってな」


「こんにちは、メアリさん」


 メアリと呼ばれた受付嬢は三人の挨拶に軽く返事を返した後、俺の方を見てくる。


「こちらの少年は?」


「ああ。コイツはユウキと言ってな。少々込み入った事情があって、ウチに居候しているんだ」


 メアリさんの問い掛けにムトーが淡々と答える。それを聞いてなるほど、と頷きながら俺の方に視線を戻すと会釈しながら自己紹介をしてきた。


「初めまして。私はメアリ、このホルン村の冒険者ギルドの受付嬢をさせてもらっています」


「初めまして、俺はユウキです。よろしく」


 メアリさんの自己紹介に便乗する形で俺も自己紹介をする。


 そこでふと気づいたことが一つある。メアリは見たところ俺より一つ二つ年上といった様子だが、小柄で俺より背が低い。その為俺が彼女と目を合わせようとすると必然的に見下ろす形になる。すると、嫌が応でも彼女の顔以外も目に入るワケだ。おかげで自然とその視線は顔から驚異的な胸囲を誇る胸部へと向うワケでして、ええ。


 幸いにしてその視線に気づかれた様子も無くメアリは再度頭を下げると、俺達をカウンターまで誘導してくれた。その際中、ルカが俺の手を強く抓ってきた。


「痛っ。何するんだ」


「……えっち」


 Oh…ルカにはバレてしまっていたらしい。でも何でルカに手を抓られなくてはならないんだ?すると、後ろの方でエレナさんがクスクスと笑っているのが聞こえた。ルカにお仕置きされているのが面白かったのかもしれない。


「えっと、ムトーさんとエレナさんにおすすめ出来る依頼は……」


 カウンターに到着したメアリさんが依頼書が纏められているファイルのようなものを取り出す。が、それを遮るようにムトーが待ったを掛けた。


「悪いメアリ。依頼を受ける前にユウキに冒険者登録をさせてくれないか?」


「えっ?」


 ムトーの言葉に驚いたのは俺だ。魔物と戦ってレベルアップをしようとは考えていたが冒険者登録をしようとは思っていなかった。いや、登録していれば金稼ぎには便利かもしれないが色々と制約があって面倒くさそうだと考えてもいたのだ。


「はい、構いませんよ。ではこちらの用紙に必要事項の記入と登録料の100G(ゴールド)、あとこの容器に血液を数滴いただけますか?」


 メアリさんはそう言うと、ささっと登録用紙らしきものを取り出して羽ペンとインク、それと小瓶と小さなナイフを差し出してきた。


 さっと見た所、必要記入事項は名前、性別、年齢、種族と下の方にある規約云々に同意すると言うサインくらいだった。俺はチラッとムトーを見やると彼は、はいはいと言った様子でペンを取って俺の情報をスラスラと書き込み、俺も日本語でサインを書き込む。最後に俺は若干ためらいながらもナイフで左手の親指を切り、渡された小瓶に数滴の血液を垂らした。指を切るときルカの痛々しそうな表情が印象的だった。


 因みにさらっと説明するがこの国の通貨はGゴールドと言う。ゴールドと言うだけあって硬貨はすべて金貨だ。大、中、小の大きさがあって大金貨が10000G、中金貨が100G、小金貨が1Gだ。先程の買い物中に見たのだが、両手の平に収まるくらいの丸パンが一つ10Gだった。日本とこの国の物価が同じな訳がないのでGの価値がどれ位なのかは良く分からない。1Gあたり10円と仮定して置く。つまり、ギルドの登録料は日本円にして約千円だ。あくまで仮定でだが……。


 登録料はムトーが代わりに払ってくれた。これから受ける依頼の報酬で返してくれとの事だ。


「はい。それでは少々お待ちください」


 書類と血液を受け取ったメアリさんはそう言うと、書類を持って奥に引っ込んだ。それから少しした所で「ええっ!?」と言うメアリさんの悲鳴が聞こえてきた。


「どうしたんだ?」


「あ、やべぇ。忘れてた」


 俺が疑問の声を上げると、隣に立っていたムトーがやってもうた、と言った様子でそう呟いた。


「ムトー、説明しろ」


「あー…その、な。書類はともかくあの血液はギルドカードを作るために必要でな。血液の情報を読み取って必要な内容だけギルドカードに載せるんだよ。こんな風にな」


 そう言ってムトーが差し出してきた銀色に輝くギルドカードを受け取って中を見てみる。



《ムトー》

Lv: 25

性別 男 年齢 35歳 種族 ヒューマン

冒険者ランク B


《称号》

鍛治職人、親バカ、お人好し



 ふむ。ギルドカードはこんな風になるのか。そして、メアリさんが悲鳴を上げた理由も理解してしまった。


「称号か……」


「間違いないだろうな……」


 さてどうしたもんか。ムトー曰く、女神の眷属は俺、勇者の姫宮を含めてこの世界に三人だ。しかも俺は公には存在が確認されていない。そんなのが目の前に現れたらビッグニュースだ。彼女の驚きも理解できる。


 すると、件のメアリさんが引き攣った笑みを浮かべつつギルドカードを持って現れた。


「あ、あのー……すみません。これに心当たり、ありますか?」


 彼女がそう言って差し出してきたギルドカードを見る。



《ユウキ・フジカワ》

Lv: 1

性別 男 年齢 17歳 種族 ヒューマン

冒険者ランク D


《称号》

異世界人、女神の眷属



 しっかり刻み込まれているな。レベルやランク等は上昇したらオートで更新される素敵仕様だとか。どう説明しようかね……。


 俺がそう考えていた時だった。


「さっき言った通り複雑な事情があってな。メアリ、このことは黙っていてくれないか?いずれバレるかもしれんが、今はまだ公にしたくないらしい」


 俺がどう説明しようかと悩んでいる間にムトーがそう頼み込んでくれた。


「ああ、込み入った事情ってそういう……。分かりました。因みにその称号の項目ですが、秘匿する事ができますのでそうしましょうか?」


「是非お願いします」


 メアリさんの理解と申し出に感謝しつつ、再びギルドカードを差し出す。するとメアリさんは再びギルドの奥に向かい、一分ほどで戻って来た。渡されたカードを見ると称号の欄には何も記載されていない。


「ひとまずはこれで大丈夫でしょう。ですが、ギルドマスターや鑑定能力を持った一部の人間には見破られる可能性があるので注意してください」


「ありがとうございます」


 メアリさんからの忠告を心に留め、俺はお礼を言う。本当なら彼女も立場上、ギルドマスターとかに報告しなくてはいけないはずなのにな。ホント、良い人だ。こんな人を嫁に出来たら幸せだろうな。


「それじゃ、早速依頼でも受けるか!メアリ、俺とエレナとユウキで受けれそうな依頼はあるか?」


「そうですね……。ムトーさんとエレナさんはBランクですからユウキさんと一緒に受けれるのですとC、Dランク相当ですから…そうだ、これはいかがですか?」


 ムトーの質問にメアリさんは依頼書と思われる書類をパラパラと捲ると、一枚の紙を差し出してきた。


「『ブラックウルフの討伐』?」


 書類を見たエレナさんがメアリさんにそう問い掛ける。依頼書と思しき書類には確かにそう書かれている。因みに依頼のランクはCだ。


「はい。実は近頃、このホルン村近隣でオオカミの群れに行商人の馬車が襲われる事態が相次いでいるんです。何でも通常のオオカミよりも……それこそ人を乗せて走れそうな程の大きい黒い個体が居て、群れを率いているのだとか。そこでギルドはその黒い個体をブラックウルフと名付けて冒険者の方々に討伐を依頼しているんです。でも、今ちょうどこの村にいるCランクの冒険者の方達は別の依頼で留守でして。ムトーさんとエレナさんなら初心者のユウキさんを連れていても何とかなると思うのですが……」


 メアリさんの説明を聞いてムトーはふむ…と思案顔だ。チラリと俺の方を見たりもしている。大丈夫かどうかと言う事を考えているのだろう。


 しかし、俺はそんな事はどうでもいいと考えていた。


「受けよう、ムトー」


「ん?だが、お前はまだレベル1だろうが。命が掛かっているから変な見栄張るなよ」


「そうよ。今のユウキくんじゃあ普通のオオカミ相手が精一杯だと思うわ」


 俺の言葉にムトー夫妻が反対意見を述べてくる。だが、簡単に引き下がるわけには行かない。今回の獲物であるブラックウルフ、丁度良い『ターゲット』だと俺は思っているのだ。


「悪い、ムトー。今回ばっかりは引き下がれない。テイムの実験も兼ねようと思ってるんでね」


「お前……ブラックウルフを手懐けるつもりか!?」


 小声でムトーにそう語りかけると、ムトーは小声でだが驚いた声を上げる。


「まあな。最大で所持できるのが6体までともなると、そこら辺の雑魚を手懐けても仕方がないと思ってな。今回の話は正直言って俺的にはおいしい話なんだ」


「だからってなぁ。その分のリスクが高いだろうが」


「何一つリスクを背負わずに何かが叶うわきゃないだろう?だからこれは当然のリスクだ。それだけの価値があると俺は思っている。何、そんなに遠くではないし道中の雑魚を倒せば経験値も入ってレベルアップくらいするだろうさ」


 俺は真剣だった。後半は楽観的ともとれるセリフを吐いていたが、この世界で生きるのなら魔物との戦闘は避けられない。早いか遅いかだ。ムトーとエレナさんと言う二人の強力な助っ人までいるのだ。これを利用しない手はない。ゲーム等ではこれを寄生と言って忌避される行為だが、実際に命を掛けている以上はそんな事は言っていられない。


 なら、ヘマをしても助けてくれる仲間が居る内に戦いの雰囲気やらに慣れつつレベルを上げるのがベストだ。今回の依頼でそのブラックウルフとやらもテイムできれば万々歳というわけなのだ。


「私はユウキさんなら大丈夫だと思うなぁ」


 そこでルカから思わぬ助け舟が出た。


「ルカ?」


「だって私ユウキさんのトレーニングを何回か見たことあるけど、凄かったよ?大きな岩を魔法で壊したり、剣で斬ったりしててドラちゃんも流石だって……」


 ん?ドラちゃんって誰だ?例の木の近くで俺がトレーニングしているときルカが見ている事はあったが、近くに他の子がいた覚えはない。俺が知らないだけで友達が来ていたとかか?名前だけ聞くと青い某ネコ型ロボットを想像してしまう。


「……反対しても一人で突っ走りそうだしなぁ。仕方ねぇな、その依頼を受けるよ」


「アナタがそう言うなら、私も従うしかないわね」


 俺の熱意とルカのフォローが功を奏したのか、ムトーとエレナさんはようやく首を縦に振ってくれた。


「え、あのー……自分で勧めておいて何ですがよろしいんですか?」


 メアリさんが心配そうに聞いてくるが、ムトーとエレナさんは苦笑いをしつつ頷くだけだった。


 と言う訳で、俺はムトーとエレナさんと共にブラックウルフ討伐(捕獲)の為に依頼を受けると、ルカを預けてギルドを後にした。

前回で戦闘回予定とか言っておきながら戦闘のせの字もなくて済みません。次回こそは戦闘回になるはずですので…。本日中に更新できればと思っています。

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