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異世界に行ったら女神の眷属になってました  作者: クロネコ
 第一章 始まりの風が吹く森
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6話 トレーニング開始

修正:ステータスに種族の欄を追加。

 さて、思い切って外に出てきたはいいがどうしようか。魔法の練習をするつもりだが、建物のすぐそばでやるのは憚られる。ブロウは小爆発を起こすとあったが、その規模が大体どの程度かも把握できない。もし仮に誤爆して建物に損傷を負わせたらムトー達に申し訳が立たない。


「あれ、ユウキさん?何処に行くんですか?」


 どうしたもんかと思っていた所で背後から声を掛けられる。振り向くとそこには赤毛をサイドアップに纏めたルカがいた。


「ん?ああ、実はこれからトレーニングをしようと思ってな。何処か魔法を撃っても平気な場所は無いかな、と」


「そ、それでしたらいい場所がありますよ。案内しましょうか?」


「是非、頼むよ」


 ルカからの意外な申し出に俺はすぐさま食いついた。人見知りだって言っていたから当分は避けられるだろうなと思っていたからな。適応能力が高いのかもしれない。まあ、それを言ったらこの状況に適応してしまった俺にも言えることなのだろうが……。


「では、こちらへ……」


 ルカはそう言うと、森の方へとスタスタ歩いて行った。俺は彼女を見失わない様に小走りでその後を追って彼女の三歩程後ろを歩き出す。と言うか、森の中に入って大丈夫か?魔物に襲われるぞ?


 すると、途中でルカが腰に下げていたポーチから小枝のような何かを取り出してソレにマッチで火をつける。火のついたそれは線香の様に煙を出しながら静かに燃える。ソレをルカは小さな穴が幾つか空いた細長いお香立てのような容器にソレを入れて蓋を閉じた。穴からは煙がモクモクと出ている。香りも何となく線香に近い感じだ。


「それは?」


「魔物よけのお香です。これに火をつけると魔物が嫌がる香りと煙を出すんです」


 ルカの説明を聞いてなるほど、と思った。確かにそれなら森の中でオオカミのような魔物に襲われる心配は無い。聞けば、これから行く場所は彼女のお気に入りの場所でこの方法を使って安全に行き来しているとの事だ。


 それから歩き続けること約10分。少し開けた場所に出た。どうやらここが目的地らしい。開けた所の真ん中には大きくて立派な木が一本生えていた。


「ここなら広いので大丈夫だと思います。あ、でもこの木に当てないで下さいね?」


「ああ、わかっているよ。ありがとう」


 大きな木の根元に座り込んで念を押してくるルカにそう礼を言うと、俺は早速練習に取り掛かることにした。ちょうどいい事に、広場の一角に高さ2メートルくらいはありそうな岩が地面から生えていた。これを的にさせてもらおう。


 俺はその岩から十分に距離を取る。使う魔法はブロウだ。テイムは魔物が居ないと使っても意味がないので必然的にコイツを使うことになる。今後しばらくお世話になる魔法だから、しっかりと練習しておきたい。


 因みに魔法の発動方法は簡単で発動させたいと言う意思を持った状態で名前を口にすれば発動できるらしい。ただ、難度の高い魔法は発動までに時間が掛かるらしいともエレナさんから聞いた。


 《ブロウ》は無属性魔法の中でも簡単なものに含まれるはずだから、発動までのタイムラグはほとんどないはずだ。取り敢えず、一回試してみよう。


「……《ブロウ》!」


 俺は岩に向かって左手をかざして、魔法の名前を叫んだ。直後、昨日のオオカミとの戦闘の際にも感じた身体から微かに何かが抜ける感覚が。その次の瞬間には俺の左手から光る透明の球体が出現、岩に向かってかなりのスピードで飛んで行った。


 その球体が岩に接触した瞬間、ドパンッ!と言う音と共に球体が爆発した。いかに「小」がつくとは言え爆発と言う事でそれなりの威力があったのだろう。的となった岩の表面が少し抉られて亀裂が入っており、破片が辺りに飛び散っていた。


「お、おおぅ……」


「び、びっくりしたぁ……」


 魔法が撃てた事と予想以上の威力に驚いている俺とルカ。俺はルカに悪い、と軽く謝ると今度は連続で発動させてみる事にする。


「《ブロウ》、《ブロウ》、《ブロウ》!!」


 三回ブロウを唱えると、身体から先ほどよりもやや多い量のMPが持って行かれる感覚と共にブロウが三発左手から発射され、岩に当たって爆発した。流石に三発連続は耐えられなかったのか、岩は破片を撒き散らしながら崩れ落ちた。


 ふむ。これならブロウはどうとでもなりそうだな。練習を重ねていくだけで良さそうだ。取り敢えず、一度ステータスを確認してみるか。


 俺は頭の中でステータス、と念じてステータスウィンドウを開いてみる。


   ☆


《ユウキ・フジカワのステータス》


性別 男  年齢 17歳 種族 ヒューマン

Lv: 1   EXP 68/100%

HP  100/100 

MP  9984/9999

STR  8 

VIT   6

DEX  10 

AGI   9

INT  12


《スキル》

なし


《アビリティ》

ステータス、ストレージ、無属性魔法


《称号》

異世界人、女神の眷属


   ☆


 ん?おかしいな。MPが減っているのは確認したが計算が合わない。ブロウ一回辺りの消費MPは4だ。今さっき俺は、ブロウを合計で4回使った。つまりMPの消費量は全部で16となるはず。なのに消費されているのは15ポイントで1ポイント足りない。何故だ?


 そう思っていたらステータスのMPが9984から9985に変化した。なるほど、MPが自然回復したのか。それで消費MPの数字に1ポイントの誤差があったのか。合点がいった。


 すると、またMPのポイントが回復した。……何かちょっと回復が早いような気がするがまあ困る事ではないから今はスルーしておこう。


 と、そこに先程まで木の根元にいたルカがおずおずといった様子でやって来た。


「ユ、ユウキさん?今の魔法は……」


「ああ。何か無属性魔法って言う特殊な魔法らしい。所謂ユニーク魔法ってことになるのかな?」


「ユニーク魔法、ですか?それってすごい事なんじゃ……?」


 ルカのおずおずとした質問に俺は正直に答える。ルカは俺の返答に目を見開いて更に驚いた様子を見せる。確かに、これは冷静に考えれば凄い事になるのかもしれないな。魔法が使える事自体俺にとっては凄い事だ。それどころかこの場所、この本来とは異なる世界に居ることすら通常ありえないことなのだ。もう色々起こりすぎていて何がどう凄いのかわからなくなりつつあるだよなぁ……。


「どうだかな。さて、次はフォーミングエッジでも使ってみるか」


 俺はそう呟くと、ストレージの中からフォーミングエッジを取り出した。またもやルカが驚いているがこの際スルーさせていただく。因みに、フォーミングエッジの詳細をステータスを用いて見てみるとこうなる。


 《フォーミングエッジ》 

STR+30%、DEX+10% 《振動剣》使用時:貫通効果付与

銃弾発射時の消費MP 1 剣形態《振動剣》使用時消費MP 10/分

勇気が考案した剣と銃の両方の特性を持つ勇気専用の武器。銃形態時はMPを消費して弾を生産して発射する。実弾モードと魔法属性を付与した魔弾モードに切り替えられる。魔弾モード時の属性は任意選択。


 と、このようになっている。因みに魔弾モード時に付与できる属性は自分が使用できる魔法属性のみとなる。つまり、現時点で俺が使えるのは無属性の魔弾のみだ。あと武器装備によるステータスの上昇だが、コイツの場合は俺のステータス値を元に上昇値が変化する仕様になっている。


 つまり現時点の弱っちい俺のステータスでは上昇値も大して無い。俺のSTRは8、DEXは10でフォーミングエッジ装備によるステータス上昇はSTR+30%、DEX+10%。計算してSTR+2.4……端数切捨てで+2としてDEXは+1ということになる。


 ……やべぇ、ほとんど変わんねぇ。大して無いどころか微々たる物でしかないじゃないか!この問題はレベルアップするなり、STRかDEX上昇効果の付いた装備を付けるしかないみたいだな。まさか異世界に来てレベルを上げて物理で殴れ作戦を取らなくてはいけなくなるとはな……。


 俺は内心うんざりとしながら、フォーミングエッジを使ったトレーニングを開始する。もちろん、ルカから十分に距離を取った上でだ。


 まずは、剣形態で適当にフォーミングエッジを振ってみる。剣を振るうたびにビュンッビュンッ、と風を切る音がする。適当とは言いながらも真っ直ぐに線を描くようにして振る。十分間程振った所で今度は魔力を流して《振動剣》モードにする。


 先程吹き飛んでしまった岩の残った部分を使用する。一応まだそれなりの大きさで残っているので丁度良いだろう。俺はそのままフォーミングエッジを《振動剣》モードのまま振り下ろした。


 するとスパッと言うか、さっくりと言うか……岩はあっさりと斬れてしまった。この岩は実は豆腐で出来ていてその豆腐を斬っているのでは?と言う錯覚すら覚えそうな程にだ。


 設定した通りに性能に舌を巻きつつ、続いて銃形態で銃撃の訓練をする。


 的は勿論ブロウで破壊してしまった岩の破片だ。大きいものとそこそこのもの、あとそれなりに小さいものと三種類に分けて設置した。まずは大きい的を狙う。


 バンッ!という火薬の弾ける音と共に銃口から弾丸が発射される。銃弾は大きい的の中央から若干右方向にズレた位置に命中し、的の一部が大きく弾けた。


 次は中ぐらいの的を撃つ。再びバンッ!と言う炸裂音を轟かせながら銃弾が発射され、的を撃ち抜いた。俺はそれを確認するとすぐさま小さい的を狙い撃った……が、照準が甘かった様で見事に外してしまった。


 これでも射的はそこそこ上手い方だと自負していたんだが、流石に実弾では勝手が違うか。要練習だな。


 それから俺は、小一時間ばかり射撃の訓練を行った。するとルカがそろそろ昼食だから戻ろうと言って来たので、訓練を中断して俺はルカと共にエレナさんの作る美味しい料理を食べる為に来た道を戻っていくのだった。


 なお、道中でルカにフォーミングエッジのあれこれを聞かれたのは言うまでもない……。

次回はレベル上げの話の予定です。

お読み頂き、ありがとうございます。

感想、誤字報告等ありましたら、ご遠慮なくどうぞ。

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