5話 ステータス
勇気のステータス、公開。
追記:小説のタイトルを変更しました。
修正情報:ブロウとテイムの消費MPの記入漏れがあったので訂正しました。
種族の欄を追加。経験値の表示を%表示に変更。
《ユウキ・フジカワのステータス》
性別 男 年齢 17歳 種族 ヒューマン
Lv: 1 EXP 68/100%
HP 100/100
MP 9999/9999
STR 8
VIT 6
DEX 10
AGI 9
INT 12
《スキル》
なし
《アビリティ》
ステータス、ストレージ、無属性魔法
《称号》
異世界人、女神の眷属
☆
「どうしたってんだ、ユウキ?」
絶句している俺を怪訝な顔で見るムトー。その様子から俺の前の前にある透明の枠――ステータスウィンドウ、とでも呼ぶか――はやはり見えていないのだろう。それでも俺は念の為にムトーに問いかけてみる。
「ムトー。俺の目の前に透明な枠みたいな物が見えないか?」
「ん?透明な枠だと?見えないが……」
「そうか……」
俺は再び視線をウィンドウに戻す。そこには俺の名前と性別、年齢に加えてMMORPGなどでよく見るステータス用語と数値、その下には《スキル》、《アビリティ》、《称号》という文字。これは文字通り俺の現在のステータスなのだろう。異世界ものではよくあるやつだ。
だがな、一部おかしいよな?まずMP…即ち魔力量だな。9999ってカンストしてんじゃねぇか。Lv1の時点でMPカンストってどんなチートやねん。なんでや!関西弁でツッコミを入れるが心の中で言っているだけなので誰も文句は言わんだろう。……いかん、脱線してしまった。
ほかのステータスがLv1準拠な分、余計に目立つ。ってか、そうなると俺の魔力量は勇者である姫宮の三倍以上ということだぞ?一般ピープルの俺の魔力量が勇者を超えている件について。
次に突っ込むべき所は……称号の所にある『女神の眷属』ってなんぞ?多分文字通りの意味なんだろうが、そんな大層なものになった記憶はない。
どうしたもんかと思っているとふと、ウィンドウの端に光る目玉の様なマークがあったのでそちらに意識を向けてみる。すると、
『ウィンドウをディスプレイモードにしますか?』
《Yes/No》
という文章と選択肢がウィンドウ内に現れる。ディスプレイ……つまり他人にも見せられると言う事か?もしそうならムトー達にも何が起きたのか説明も出来るし、気になる事を質問しやすくなるな。
そう思った俺は、Yesの方を選択した。すると、ウィンドウの透明度が若干低くなった。
「うおっ!?ビックリした!」
直後、ムトーが変な声を出しながら少し後ずさった。どうやら本当にムトーにも見えるようになったらしい。
「見えるようになったか」
「……お前、これは《ステータス》じゃねぇか!神官にならないと使えないはずのこれをどうして?」
ムトーはウィンドウを見て先ほどとは違う驚きを見せた。この《ステータス》というアビリティは、その名の通りステータスを見る類のものらしい。後で聞いたところ、このステータスは自分だけでなく他人や魔物のステータスを見る事も出来るとか。
「さぁな?取り敢えずそれは置いておいてこれを見てくれ、コイツをどう思う?」
「どれどれ……って何だこの数値!?MP9999なんて聞いた事ねぇぞ!」
すごく、大きいです……(もちろん数字が)的なのを期待したんだが、流石に異世界人にこういうネタは無茶だったか。反省しよう。それはともかくとして、やはりこの数値は規格外らしいな。まあ、姫宮の3200という数値ですごいと言う位だから当然か。
「ああ。そこには俺もビックリなんだがそれよりも見て欲しいのはここなんだ、ここ」
俺はそう言って、《称号》の所を指差した。すると、そこに視線を向けたムトーの表情が固まる。
「……女神の、眷属?」
「文字通りの意味だろうが心当たりが無くてな。どういうものかも含めて何か知ってたら教えてくれ」
十数秒程口をパクパクさせていたムトーは、ハッと我に返ると己の両頬をペシペシと叩いた。そして俺の方を見ると真剣な表情で口を開いた。
「これは文字通り、女神さまの眷属である事を示す称号だ。現在、俺の知る限りこの国にこの称号を持つのは各聖域に居る大精霊達を除けば三人だ。王都の神殿にいらっしゃる女神さまの巫女であるセルカ様、勇者となったお前の仲間の嬢ちゃん、そしてお前だ」
ムトーはそう言うと、どこか疲れた様子で椅子に深く座り込んだ。驚きの連続で頭の整理がつかないのかもしれない。かく言う俺も冷静そうでも内心は何が何やらといった状態だ。
「女神の眷属は体の何処かにその証である紋章が浮かび上がると言う。この紋章を強く意識してみろ」
ムトーは新聞モドキに書かれていた不思議な紋章を指差しながら言った。いや、意識してみろったってなぁ。取り敢えず、やってみるか。体の何処に出るかも分からないまま、俺は新聞に書かれている紋章を頭の中で出てこい、と強くイメージする。
すると突然、右の手の甲が光ってそこに新聞に描かれているのと同じ紋章が浮かび上がった。何だこの「俺のこの手が光って唸る」状態は。シャ○ニングフィンガーかよ。
「出たな。ステータス通り、お前は女神の眷属らしい。召喚に巻き込まれた際に嬢ちゃんと一緒に認定されたのかもな」
ムトーは、先ほどよりも落ち着いた様子で言う。ヒゲの生えたオッサンの驚く顔は見ていて意外と面白かったんだが、まあいいか。俺はじゃあ、と他に気になっていたものについて聞いてみた。
「このアビリティの《ストレージ》と《無属性魔法》って言うのは?」
ステータスは自分や他人のステータスを確認するものだった。残りの二つのアビリティも名前でどんなものかはわかるが、念の為に詳細も確認したい。
俺が質問すると、ムトーは「ステータスにある気になる所を指でつついてみろ。じゃ、俺は仕事があるからな」とあくびしながら言い、何処かへと行ってしまった。アイツめ、さては説明が面倒になって来て逃げたな?しかし、その言い方からしてステータスの文字をタップすれば詳細を確認できると言う事か。見てみよう。
まず《ストレージ》から。これはその名の通り、物をしまうことができる倉庫の事だと書かれている。武器、食材、魔物の素材など色々な物を入れられるらしい。食材に関しては、中にある以上は腐ることもないと言う。便利だ。
試しに部屋からフォーミングエッジを持ってきて、ストレージ用のウィンドウを開いたままストレージにしまう事を意識する。すると俺の手からフォーミングエッジが消えて代わりに何もなかったウィンドウのアイテム欄に《フォーミングエッジ》×1という文字が現れていた。
うん、本格的にMMORPGみたいな感じだな。ついでだし、色々入れてみよう。近くにあった新聞や本、更には薪まで入れてみる。それらもしっかりとストレージに保存されて、名前がアイテム欄に表示されている。動作確認が完了した所でフォーミングエッジ以外の物を取り出して元に戻す。
続いて、《無属性魔法》だ。昨晩のエレナさんの話では魔法は何かしらの属性を含んでいるという。だが俺が持っているのは基本の六属性でも勇者の光属性でもない、無属性魔法。これらは一体どのような魔法なのか。
タップして見てみるとそこには、
《属性を持たない特殊魔法。女神の許可を得なければ習得できない》
としか書かれていなかった。イマイチぱっとしない説明だな、と思いながらもそれ以上に情報は出ないみたいなので何が使えるのかを確認してみることにする。
《無属性魔法》
ブロウ、テイム
あれ、二つだけ?五個くらいあるんじゃないかと期待していたんだがな…。取り敢えず、それぞれの効果を見てみよう。
《ブロウ》 消費MP 4
攻撃魔法。無色透明の光る球体を飛ばし、対象に触れた瞬間に小爆発を起こす。
《テイム》 消費MP 12
モンスターを瀕死状態にした所で使用すると、そのモンスターを一定確率でテイム(手懐ける)できる。テイムした魔物は魔石になり、アイテム化する。成功率はモンスターのランクによって変化する。失敗すると、相手に致死量のダメージを与えてしまう。最大保有魔石は六つまで。
なるほど。ブロウは攻撃魔法で、テイムは魔物をアイテム化させて仲間にできるのか。しかも最大保有数が六つまで……ポ○モンかよ。だがまあ、これはうまく使えばかなり役に立つんじゃないか?
いつまでもここに居座る訳にもいかない。元の世界に戻る為に、その方法を探さなくてはいけない。その過程で姫宮とも合流しなくてはならないだろう。新聞の記事によれば帰るには闇の一族を倒さなくてはならないみたいだし、もしそうなら俺も手を貸さなくてはいけないだろうからな。それ以前に、彼女を置いて戻るわけにも行くまい。俺も力をつけなくてはならない。
そう思った俺はステータスウィンドウを閉じて椅子から立ち上がり、台所で家事をしているエレナさんに一言声を掛けてから外に出る。
「さあ、修行開始だ!」
次回は修行タイムです。
お読み頂き、ありがとうございます。