シーズン2第3話「人形は夢をみるか」
ナーレはその惨劇を蹲ったまま、呆然と見ていた。
辺りは血の海。
自分を執拗なまでに追ってきた三人の内二人があっさりと死んだ。
残りの男も転がるようにして逃げ出した。
それを実行した"闇"────顔を背ける事すら出来ない。
体がガタガタと震えているのが分かる。
今度は自分だ……そう思うのはごく自然だった。
"闇"が周囲を見回すように一度頭を動かし、ナーレの側を見据える。
ゴクリ、と咽が鳴り、恐怖のあまりに視界が涙でぼやけた。
『────』
<<Active skill "Search(探索)" Lv5>> ────Re starting……Discovery
もう一度何かを呟いた"闇"が音も無く動き出すのが見え、ナーレの頭がパニックを起こし始める。
死ぬ……だが、それでもいいかもしれない。もう自分には戻る場所も無い。ここでのたれ死んだ方が────嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!死にたくない!!死にたくない!!!
相反する気持ちが頂点に達し、体の振るえが抑えられなくなった瞬間。
"闇"がナーレの横を通り過ぎた。
一瞥すら無い。
まるで何もないかのように通り過ぎる"闇"を呆然と見送った後、ナーレは無意識で立ち上がり……そして何も考えられずに、熱に浮かされたようにその後を追う。
それはまるで火の中に飛び込む虫のように────圧倒的な"力"という炎に魅入られた、一匹の蝶のように……。
☆
「ぐっ……! ち、ちくしょう……!何なんだ……!何なんだあのバケモノは……ッ!」
逃げ出した背の高い男は、右肩に刺さった矢を抜く間も無く走り続けた。呪詛の言葉を撒き散らしながら、必死に走る。目的地は名も無い村。そこに辿り着けば、もう"一人"神父がいる。そこまで行けば回復も出来る。
一刻も早くと焦りながら走る背の高い男の耳に、"何か"が落ちる音が聞こえた。
ヤツか────!
驚愕に振り向いた背の高い男の視界には、森の中が映るだけで何の気配も無い。
何の音だ……?
訝しげに思うが、先を急ごうとした時。唐突に理解した。嫌でも、理解されられる。その"軽さ"から。
落ちたのは、自分の右腕。
矢の刺さった場所からいつの間にか腐り落ちていたのだった。
声にならない悲鳴が森の中に響く。
恐怖に悶え、足を取られて転げながらも必死で思考する。
解毒剤は飲んだ筈。そもそも、塗っていた毒でこんな事にはならない。
こんな事になる毒など見たことも聞いたことも無い────
混乱で揺れる視界の中、キラリと光るものが見えた。
前にも見た事のある。髭面の男が持っていた。思い出せない……いや、思い出したくない。
強烈に沸き起こる"嫌な予感"に猛烈なまでに息が苦しい。
擦れる息と、歪む視界の中で見たのは"地面に落ちた本"
光っていたのは、その表紙に描かれた────聖ルセラオン教のシンボル。
背の高い男の心臓が激しく鼓動を打つ。
嘘だ。
そんな筈は無い。
逃げれた筈だ……!
あまりの苦しみに起き上がれなくなった体でかろうじて動く顔を上げた先にあったのは、ナイフ男の怨めしい顔。見開かれたままの眼から伝う赤い筋は、すでに乾いている。
二度と、動くことの無い……顔。
「ひぃっ!?」
戻ってきた……?!バカな!"村に向かって"走っていた筈だ!
何故だ……何故だ……何故だ!!!?
這うようにしてその場から離れようとするが、それすらもできない。
恐怖のあまり、気が狂いそうになる。寧ろ、狂った方が良かったのかもしれない。
「うあ……あ……あああああ!!何で!?何でだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
気付いてしまった。
自分の体の殆どが、腐り始めていたという事に。
痛みが無いのに、体のあちこちが腐り落ちていく。
その恐怖に目の前が暗くなる。
「た、助けてくれ!助けてくれ!……助けてくれ!『奇跡の巫女』様────!」
叫んだ男の顎が崩れ落ちる。
叫びは、通じない。
そこで────背の高い男の意識は途切れた。二度と動かぬ屍を三つ、その場に晒して。
<<passive skill "Addition poison(毒付加)">> ────Success
☆
<<Active skill "Recognition prevention(認識阻害)" Lv5>> ────Time out
AFK解除......現状Status......ButStatus 発動中......Hp34% Sp100%......
Hp回復率2%......
<<Passive skill "Auto guard(自動防御)" Lv5>> ────Success
?
NPCからのAttacおかくにn
counter Attac......Yes or No ?
<<Passive skill "Auto reflection(自動反射)" Lv5>> ────Success
危けn度......0%
counter Attac...... No
Skill の発動おかくにn 危けn度......3%
<<Passive skill "Spell canceller(スキル阻害)" Lv5>> ────Starting
Autoで危けnを排除 危けn度......0%
<<passive skill "Evasion up(回避率増加)" Lv10>>
<<passive skill "Evasion rate up(回避率追加)" Lv10>> ────Starting
げn状かくにn
ButStatus......『空腹』発動中......
ButStatus解除方法けnさく......
1.食事item Get ......在庫0......Game start から monster 4,068体撃破 Drop item ......0
2.Home帰還......Return item 使用不可
<<passive skill "Existence concealment(存在隠匿)" Lv10>>
......
<<Passive skill "Auto guard(自動防御)" Lv5>> ────Success
......
<<passive skill "Evasion rate up(回避率追加)" Lv10>> ────rate up Lv 2/10 Starting
......
「......クビオイテケー」
3.他Player search......
<<Active skill "Search(探索)" Lv5>> ────Starting......反応無し......
......
......
「......クビオイテケー」
<<Active skill "Search(探索)" Lv5>> ────Restarting……Discovery
!反応発見!
Player name 『†どっすん☆ふんばる子†』......登録済みPlayerと一致......Log参照......
Log────
Lv15 Hp8% Sp0% 状態:Paralysis(麻痺)
『heal me plz』
『む?』
『heal me plz』
『ひーるみーぷりず?』
『heal me plz』
『おお。もしかしてウワサのbot?』
『Hello ゲンキdesか ワタシ bot でありませn』
『おおお。初めて話しかけられたのがbotとは…』
『Hello ゲンキdesか ワタシ bot でありませn』
『bot』
『Hello ゲンキdesか ワタシ bot でありませn』
『キーワードに反応してくるんだー』
『heal me plz』
『んー…ここで動けなくなってるって事は状態異常で、もしかしなくても死にそうかな?』
『heal me plz』
『…普通は見捨てるんだろうけど…見捨てた方がいいんだろうけど…』
『heal me plz』
『しょうがないにゃあ…ドヤッ』
『heal me plz』
『せっかく往年のネタやったんだから受ける機能つけとけー。はいはい、ひーるひーる。ついでに状態異常解除解除』
『お。動いた動いた…って、無視かいっ…ま、いいけど…あ。おにいちゃんどいてだったら反応したかも…なーんて』
『あっ。私のタゲまでとりおってー』
『うりゃ。敵にもひーるひーる』
『ころしあえーフハハハハ』
『heal me plz』
『もうピンチかいっ。はいはい。ひーるっとくるぁ』
『……うん、飽きた。ばいばーい。botー』
『Hello ゲンキdesか ワタシ bot でありませn』
Log end────
mail送信......
『だちゅもる』from『†どっすん☆ふんばる子†』
『Hello ゲンキdesか ワタシ bot でありませn』
『heal me plz』
☆
スキル解説。
Active skill ── アクティブスキル(選択して使用するスキルで、使うたびにスキルポイント(Sp)を消費する)
Passive skill ── パッシブスキル(常時発動しているスキルで、一度取ってしまえばスキルポイントは不要)
Recognition prevention ── 認識阻害(『盗賊』の二次職『暗殺者』のスキルで、『隠密』の上位互換。『暗殺者』専用スキル。『隠密』であればスキルで見破られる事もあるが、こちらはスキルでの対処不能。見破るには特殊アイテム(有料)が必要)
Auto guard ── 自動防御(近接物理攻撃を一定の確率で自動的に"払う"事で、ダメージを完全にゼロにするスキル。元々はナイト系のスキルで、他のキャラが取得する場合は有料。最大Lvは10だがナイト系以外が取れるのはLv5まで。なお"現実"にSTR型のプレイヤーに"払われる"と人間の腕なんかは軽く取れる)
Auto reflection ── 自動反射(遠距離物理攻撃を一定の確率で反射するスキル。二次職『暗殺者』から転生してなれる特殊上位職『島津豊久』の専用スキル。別名『矢でも鉄砲でも持って来い────ただし、スキルは別な』)
Spell canceller ── スキル阻害(自分を対象に攻撃スキルを使おうとした相手に、一定の確率で小石をぶつけて詠唱をストップさせる嫌がらせの為だけのスキル……なのだが、Auto guardと同じくSTR型がやると軽く体に穴が開く)
Evasion up ── 回避率増加(『盗賊』のパッシブスキルで、Lv毎に回避率が増加する。最高はLv10)
Evasion rate up ── 回避率追加(特殊上位職『島津豊久』の専用スキル。半パッシブスキルで戦闘が長引けば長引くほど、敵の数が増えれば増える程効果が増える。最大Lv10でEvasion upとは効果が重複しない。ちなみに同じ効果の攻撃用のスキルもある)
Existence concealment ── 存在隠匿(『暗殺者』のスキルで、他のキャラクターにステータスを調べられるのを防ぎ、攻撃を受けた時にLv毎にミスを誘発する)
Search ── 探索(二次職『暗殺者』のスキルで周囲のプレイヤーを見つけると同時に、対象のプレイヤーのある程度のステータスも表示する)
Addition poison ── 毒付加(『暗殺者』のスキルで、一定の確率で攻撃時に様々な毒を与える)
つまり、戦闘職は戦おうと向かうだけで滅ぼされる恐れのある危険な存在である。
☆
「出来た」
鍋を掻き混ぜていたナイーレの言葉と同時に聞こえた、ナビツの「よーし、今日は終了」という声でケイサムが肩で息をしつつへたり込む。
端正な筈の顔はだらしなく崩れ、汗が滴るのもそのままだ。
アルフィースも肩で息をしてはいるが、足はまだしっかりとしていた。アルフィースが剣を腰の鞘に仕舞うと、それを待っていた影がすっとタオルを差し出す。
「お疲れ様です、兄さん」
差し出されたタオルで顔の汗を拭うアルフィースを微笑ましげに見つめるアリエを、更に羨ましげに見つめるケイサムをアキリナがゲシッと蹴りつつ、食事の支度を手伝う。
鍋の番をフィーメルと代わり、ナイーレが追加の薪を取ろうと馬車に向かった時。
「ぷぎっ」
不意に小さな泣き声が聞こえ、視線が声の聞こえた森の木の影に集中する。
木の影にいたのは、体長40cm程の2本足で立つ子豚。
おどおどと周囲を伺いながら木の影から体を半分覗かせていた。
「あれ?豚人族?なんでこんな所に?」
「……迷子?」
訝しげにするアキリナとナイーレが近寄り側で屈むと、子豚は鼻をヒクヒクと動かす。どうやらいっちょ前に警戒しているらしい。
その様子に、自然と笑顔になる。
豚人族とはオスがイノシシがそのまま直立したような姿と、メスが豚がそのまま直立したような姿をした種族で、どちらかと言えば『魔物』に分類される種族だった。
人懐っこく好奇心旺盛という性格で人語を操る者もいる高位の魔物であり、怒らせればオスで500キロ、メスでも300キロ以上という巨体で暴れる為危険だが、基本的に友好的で人の世に混じって生活しているものもいる。(ちなみにこの世界にも豚はいるが、同一視すると非常に怒られる)
ナイーレがじーっと見ていると、その気配に気圧されたようにおろおろとしだす。
「……かわいいっ」
「ぷぎゅっ!?」
目にも留まらぬ速さでナイーレに抱き上げられた子豚が、圧迫されたヌイグルミのような悲鳴を漏らしたその時、アキリナがぎゅーぎゅーと絞められ顔色が赤から青へと変わり始めた子豚の背中に、何かの紋様のようなものを見つけた。
「あれ?この子、背中に紋様が────」
「────マズイ!!」
疑問の声を上げたアキリナの声をナビツの緊迫した声が遮り、ナビツの様子にみんなが唖然とする。
「豚人族は豚人族でも普通のやつじゃない!!そいつは『オーク』だ!!本隊が来るぞ!!!」
よーやく、主人公の名前が出てまいりました。
†どっすん☆ふんばる子†
結構こんな感じで適当にその時の気分で名前付けて、後悔した事が多々あります。
作中のネタが分かった方、結構いい年ですね?w 仲ー間w
そして暗殺系特殊上位職『島津豊久』の登場。
リボルテックは予約待ちw
ちなみに顔の線は垢です。ええ。"赤"ではありません。"垢"です。
botなので風呂には入りません。
どこかのキャラクターにくりそつですが、"垢"ですので違うでしょうw
それにしてもこの小説を書いていると、無性にR○がしたくなるんですよね。
久しぶりに復帰しようか迷う程……ちなみにウェブマネーはすでに購入済。
仕事が忙しい上にR○までやり出したら小説がものすごく遅れるので我慢我慢……。
沢山の人がいて重くて重くて大変でも楽しかった、あの頃のような懐かしい想いに浸れる小説造りを頑張りますw
あ。でも、どこかのサーバーでローマ字+数字のプリがウロウロしていたら、御注意をw
ちなみに次回はイラスト満載の漫画かよって版になる"かも"しれません。予防線予防線。
数えたら、最低でも5枚以上必要なんですよね。
というわけで、ちょーっとお待ちください。
最後にJob解説。
『島津豊久』
暗殺者の特殊上位職。暗殺者系統の職の中で唯一『刀』『鉄砲』といった日本由来の武器が使える。ついでにライト○サーベルも(赤のみ)
二刀流も(刀+鉄砲の亜種組み合わせも)可能な公式チート職。
その代わり転生条件は激厳しく、str・agi全フリが最低条件。
その後luk・dex・intに振るかによって『完全回避型』『PvP仕様型』『大規模殲滅型』となる。
vitにはまったく振れないのどころか、まともな防具が無いので装甲は紙。
さらには転職用アイテムが"くじ(有料)"をやった時に稀に出る引換券を5枚集めてできる"スロット"で当てなければならないという鬼仕様。
出すのに100万掛かると噂のアイテムだが、全部のサーバーに『島津豊久』がちょこちょこ出現しているため、GMのbo────
む?誰かが来たようだ。
では。また。