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後編その2

アルフィースを刺し、アリエを手に入れた神父は魔物の襲来という混乱に乗じて、村から脱出する腹積もりだったが裏通りから出たそこで、最初に魔族に魅入られた隊員を連れた一団と遭遇してしまった。


出会い頭の遭遇に気が動転しながらも何とか言い訳を取り繕おうとするより早く、両脇を抱えられて引き摺るように歩かされていた隊員の足が急に止まり、両側の隊員が訝しげに見た瞬間魅入られた男の顔が、ぐにゃりと歪む。


「ひぃっ!?」


獰猛な獣が笑ったかのようなイビツな笑みに、抱えていた隊員達は慌てて手を離した。


手を離された隊員は倒れそうになるが、体が前屈みになった所でいきなりガクンと動きが止まる。


『みツけた、せイれい、ミつけタぞ』


明らかに人間には発せられない、嫌悪感を抱かせる禍々しい声が隊員から発せられたかと思うと、隊員の"影"がゆっくりと盛り上がって老人の形になっていく。


「う、うわあああああ!!」


隊員を連れていた他の隊員達が脱兎の如く逃げ出す中、神父は逃げ出す所か目も動かせない。影が左目の無い老人の姿になると、隊員がブッツリと糸が切れたように倒れこんだ。


「あ……?あ…あ…?」


声を出そうとしても、パクパクと口が動くだけで声も出せずにガクガクと体が震えて、小脇に抱えた気絶したままのアリエをドサリと落とす。


『おまエ、せいレいの、"カス"を、もっテいるナ……なんニん、くらッタ…?』


ニタニタと嗤う魔族の言葉に、神父は愕然とする。


神父が『精霊依存症』の者達を集める本当の狙い。


それは、『精霊依存症の者をその身に取り込むことでその力さえも自分の物にできる。例え何の力を得ることも無くても、それは取り込んだ者が弱かったからで、更なる強い力を持つ者を取り込め』────という、馬鹿げた教義を実行する事。


ただ精霊依存症の者を殺し、その肉を喰らうだけの狂った男。それがこの神父だった。


元々の教義を捻じ曲げ、己の欲望を満たす一部の中でも神父は熱狂的な信者で、精霊依存症の者を殺して喰らう為には何でもやった。


自らの体に精霊石を埋め込んで精霊依存症の者と同じ気配を出し、相手を油断させて殺すという事もやった。


その報いは、自らが同じ目に会う事で果たされる。


"ただ、そこにいるだけ"それだけの筈なのに、心の奥底から湧き上がる恐怖が神父の心を蝕む。


魔族の"存在自体"が人には恐怖になり、恐怖は、瘴気にとってのエサとなる。


「ああ……あああ……ああああああああああ!!!」


老人から溢れ出す死の気配に、神父の恐怖心が爆発した。しかし、それは長くは続かない。


神父の悲鳴が辺りに響く。


体を、命を、記憶を、その全てを奪われる感覚に、壊れたその心までもが貪られる。


力を得た魔族の目が、倒れたままのアリエに向けられる。


「たマしいに精霊をやドしたにんげン…ああ…"ついで"だ。きさマも喰らってやろウ」


それが、アリエの命を奪われた理由。あまりにも理不尽な理由でさえ、魔族にとっては至極当然の事だった。






「こんの野郎!!」


巨大な炎の槍が老人に向かって放たれる。


村にいた術者が見せた炎の魔法とは桁違いに精密かつ繊細で一部の綻びも無い、凄まじく訓練された事が分かる魔法。


ゼンの使った精霊石より放たれた、炎の槍に匹敵する威力を秘めた一撃必殺の筈の魔法は、老人に命中する前に黒い"モヤ"に当たって砕ける。


「チィッ!」


続けて先ほどの炎の槍に匹敵するだけの氷の槍も放たれるが、これもまた黒いモヤの前に消滅した。


「うそっ、効かない!?」


「効かなくても気を緩めるな!隙を見つけるんだ!」


「「はいっ!」」


隊長であるナビツの激励に、淀みなく若い男女二人の返事が返ってくる。


ナビツ率いる精霊騎士団第三部隊第二小隊の隊員は、ナビツを含めて5名でその内2名は新人だが、競争率の激しい精霊騎士団へ入隊を許されただけの実力はあり、魔法の腕はかなりのものだった。


それでも、目の前の老人────魔族の瘴気による障壁が突破出来ない。


素早く動きながら魔族の瘴気による攻撃をかわし、炎と氷の魔法が交互、あるいは同時に踊り狂う。


今年の新人は上出来だ……違う場面であればそう褒めただろう。しかし、今は実戦の最中だ。それも相手は魔族。一瞬の油断による即全滅があってもおかしくはない。


「結界はどうなっている」


ナビツ自身も時折風の魔法を駆使して二人を援護しつつ、側で額に脂汗を流しながら目を閉じ、必死に杖を構え続ける銀髪の女性騎士であるフィーメルに問いかける。


「ダメです。魔族に取り込まれた精霊の影響で、通常の三割も効果を発揮しません」


20代に差し掛かったばかりと思われる銀髪のフィリスは、その整った表情の眉間に深い皺をよせながら最悪の事態を告げた。


魔族と戦う場合、他の魔物と違って最も厄介なのはその身に纏う『瘴気』だ。


一度触れれば生きとし生けるものの命を奪う瘴気は、魔族にとっては外界と己を隔てる壁のようなもので、その瘴気をいかに減らして本体にダメージを与えられるかで魔族を倒せるかどうかが決まる。


対魔族戦では、結界士と呼ばれる術者が結界を張ることで瘴気の流出をその場に押し留め、結界越しに魔法を放つ事で瘴気を散らしてから、本体に特別な武器で直接攻撃するというのが基本的な戦略だ。


だが、それだけでは魔族を滅ぼしたことにはならない。滅ぼすためには魔族の本体を精霊の力を持った武器か、精霊術で攻撃しなければならないのだ。


しかし、今対峙している魔族は精霊の力を取り込んでしまっている。


精霊の力は、魔族を倒す力にも成り得れば魔族の力を増加させる力にも成り得る諸刃の剣のようなものだ。


そして最もやっかいなのは、魔族が精霊の力を取り込んだ瞬間。


取り込まれた精霊の力が魔族に消化されきるまで、結界士の術も精霊の武器も術も効き辛いのだ。


ナビツ達の所属する精霊騎士団第三部隊は、別名『魔導部隊』と呼ばれる魔法を使うエキスパート揃い────つまりは、最悪の相性の相手。


ゲタゲタと魔族が哂う。


顔の右半分が老人────そして、左半分があの神父の顔。


左腕も神父のもので補われた、半人半魔族の化け物がそこにいた。


魔族と対峙しているナビツが小さく視線を動かす。それは"もう一人"の第二小隊の隊員への合図。


「攻撃を集中するぞ!」


「「はいっ!」」


ナビツの掛け声で前衛を勤めていた二人が一斉に魔法を唱え始めた。


それを見た魔族が余裕然とした態度のまま二人を攻撃しようとするが、ナビツの風の魔法による刃が魔族をその場に釘付けにする。


小さく舌打ちをする魔族だが、実際はほとんどダメージは無い。


しかし、ナビツの使う風の魔法はただ攻撃の効果があるだけではなく、その場に圧し止めるという意味があった…と、ナビツが魔族へ向けて走る。


あきらメたか…?


いきなりの行動に魔族は訝しげな目を向けるが、軽く右手を振った。収束された瘴気がナビツを捉える。"キリ"のように先が鋭くなった瘴気がナビツの顔に命中する寸前、ナビツの姿がぶれた。


もう一度瘴気を放つ。しかし、またナビツの姿がぶれて当たらない。


チッ……。


忌々しげに瘴気を自身の周囲に展開する。


それはつまり────


「薄くなる」


ボッ!と瘴気の壁を突き抜けて、一本の矢が魔族に迫った。


猛烈な勢いで瘴気を集め、かろうじてそれを防ぐ。


普通の弓矢であればまったく効かないが、それは特別製の矢。瘴気を切り裂く予想外のダメージに矢が飛んできた方向に憎々しい目を向ければ、家の屋根に人影が見える。腰まである艶やかな銀髪がサラリと流れた。


「こノ人間ごときが…」


「よくやった、ナイーレ」


一瞬気を取られた魔族のすぐ側にナビツ。


有効な攻撃はできない…そう思った魔族の左の顔に、ナビツの右手がめり込む。


首が跳ね飛ばされる勢いで殴られて転がる魔族が事態を理解するより早く、炎と氷の閃光が魔族を襲った。


ナビツが後ろに大きく跳んで距離を取る。


瞬間────凄まじい爆音が周囲に響く。


「効果は……微妙か」


若い男。ケイサムが呟くが、爆心地で立つ魔族を目にしてウンザリとした。


「しつこい」


「魔族だからしょうがないよ……それでも────」


汗で額にへばり付いた金髪を掻きあげながら、ケイサムの呟きに答えるケイサムと似た顔立ちの若い女。ケイサムと双子の妹のアキリナが傍らに倒れている二人の幼い兄妹を見る。


────仇は、必ず討つ。


決意も新たに前を見れば、魔族の瘴気がさらに濃く、深くなっている所だった。


「しかし、コレもダメか」


切り札を切ってもダメージがあるように見えない魔族に、ナビツも苦笑を浮かべる。


ナビツが使ったのは魔力を直接拳に集中させて相手を射抜く技で、触れれば蝕まれる猛毒のような瘴気に対しては正気を疑うような技だが、魔力を纏う事でコーティングのような効果を発揮して、僅かの時間であれば瘴気さえも殴れるのだ。


"実際にこの技を使って魔族を殴り飛ばしている"のを見ていなかったら、さすがに試そうとは思わなかっただろう。魔族とまともに戦えるのは、普通であれば『勇者』のみだ。


並の相手であれば一撃必殺の威力が、それさえもこの魔族には効かない。


だが、下等な筈の人間に"二度も"、しかも"同じ左側"を殴られた魔族の心情は穏やかではなかった。


────ギィィィィアアアアアアアア!


怒り狂った魔族の咆哮。


怖気が走るその声に全身の毛が逆立つ。


右の虚ろな目がせわしなく動き回り、涎を垂れ流しながら続く絶叫と共に溢れ出す、瘴気。


その瘴気が急速に収束を始めた。


急速に収束した瘴気が魔族の周りにいくつも黒い玉となって現れ、魔族の周囲を猛烈な勢いで旋回し始める。


魔族の絶叫が続き、それに伴って魔族の周囲を旋回する瘴気の塊がものすごい数となり、一つでも触れれば命が無いその攻撃が、数え切れない程の数で襲い掛かろうとしていた。


「来るぞ!障壁!」


ナビツの額にも汗が滲む。フィーメルが魔族を一所に抑えるのを諦めて、障壁を張る。


ケイサムとアキリナの二人も、素早く回避できるように最小限かつ、頑強な障壁を張った。


ナイーレも恐らくどこかで障壁を張っているだろう。


この一撃はこれで防げたとしても、二撃は?さらに続いたら?


湧き上がる問いを打ち消して障壁の詠唱を強める。


せめて、後ろにいる二人の兄妹の亡骸はもう傷つけさせないように。


そして、気が狂ったかのような高笑いと共に、瘴気の塊が一気に放出されようとしていた。





目の前の光景に呆然としていた私の耳に、変則あし○ら男爵の叫びが聞こえた。それでも、私の目は倒れている二人から離れない。


あそこで倒れている、血を流して倒れているのは、あの男の子だ。


隣で倒れているの少女は妹さんだろうか。こちらもピクリとも動かない。


銀色の騎士達が二人を守るように動いているが、すでに息をしていないのがわかった。


半透明なウィンドウに表示された、男の子の状態を表す二文字。


『死亡』


それを見てからぐわんぐわんと視界が揺れて、気持ちが悪い。うまく、呼吸ができない。


聞こえていた声がもう聞こえない。


か細く、助けを求めていたその声は、自分自身を助けて欲しい声じゃなかった。


大事な人を助けて欲しいという────『声』


その声が……もう聞こえない。


唐突に理解した。これは、男の子の横に倒れる少女の声だったんだ。


自分よりも、男の子を助けて欲しいと願う声。


その声を奪ったのが誰か。


火を見るよりそれは明らかだ。


何しろ、今度は『失った事を悲しむ声』が聞こえているから。


変則あし○ら男爵の"中"から聞こえる。


囚われている────『声』


何かがお腹の底から込み上げてくる。


深呼吸をしてそれを出そうとしてみれば、出てくるのは震えた吐息。


吐き気じゃない。


これは。


────これは、怒りだ。







この世界に来て、初めて、ブチ切れます。









ピキ────


魔族が瘴気の塊を放出しようとした瞬間、そんな音が聞こえた。


何かがひび割れる様な音。


こんな状況でありながらその音はやけに耳に響き、疑問が湧き上がるよりも早く、"それ"は出現した。


「なん…だ、アレ…」


"それ"を見て、ようやく搾り出せたようなケイサムの声を聞きながら、その場にいる者達は皆同じ気持ちだった。


「────あ?」


その中でも魔族の反応は驚愕を通り越して呆然自失といった程だ。


白く輝く半透明な翼が4枚、ふわりとなびく。


そして"それ"の放つ力の波動は可視のオーラとなって立ち上り、周囲の者達を圧倒する。


気の弱い者であれば見ただけで卒倒しそうなほど強烈な力の波動に、平伏しそうになる自分を抑えるのがやっとだった。




そして…。




光り輝く白い翼と、




放たれるオーラを身に纏った、




そこに立つ者の姿がその全てを凌駕する。




その姿は…。




木の向こうに────




「コーホー…コーホー…」


挿絵(By みてみん)


体どころか、顔も頭も何もかも全身黒ずくめ。


翻すマントも黒という、露出している部分など何一つ無い、完全に黒ずくめのダース○イダーがそこにいた。


さらには、宙に浮かぶ無数の光の玉。


その光の玉が魔族に殺到する。


「…くっ、魔法か!だガまほウはきカ────!」


瘴気の塊を盾にしようとするが、光の玉が触れた途端にまるで豆腐を打ち抜くがごとく蹴散らされた。


キュボボボボ!という音を立てて魔族のいた場所を中心に光の柱が立ち上がり、魔族が木の葉のようにくるくると宙を舞ってビターン!と地面に叩きつけられる。


「グハっ、ば…バかな…わレに効く魔法なド…」


ようやく顔を上げた魔族が何かを言うより早く、魔族の前に巨大な魔方陣が出現した。


さらに右に一つ。左に一つ。後ろにも一つ。合計、四つもの魔方陣が魔族の周囲に現れる。


「なンだ…これハ…!」


魔方陣から、光り輝く"何か"が姿を現した。


魔方陣から現れたのは光り輝く、2メートルを超えようかというマッチョ達。


一人は何故か胸に七つの傷を持っていて眉毛が太く、一人は鋭い二つの角付き兜とマント姿で覇王様のような威厳を持ち、もう一人は肩までの長い銀髪に鉢金を被っていた。


もう一人は陰になって見えないが、奇妙な動きをしている。


マッチョ達がポキポキと指を鳴らす。


「え…ちょ…ま────!ぷげらっ」







<フルボッコタイムです。しばらくおまちください>











「がーっぺ!」





むふー。


司祭が持つ唯一の攻撃スキル『聖なる弾丸』を、特殊スキル『スキル複製』でぽこぽこ増やして一斉攻撃。


『隠密』のスキルの効果が切れるのは攻撃スキルを"発動した後"なので、『聖なる弾丸』は溜めておけるという利点がある。


一撃一撃は普通の攻撃スキルを持つ職よりは弱いけれど、こうして隠れた所からの一斉発射が出来るので対ボス戦とかでは重宝するのだ。


で、発動中に枢機卿のスキル『神召還』を転生ボーナスの『光の翼』に溜めておく。


この『光の翼』は転生すれば1対、計2枚取得出来て、この『光の翼』1枚につき1つだけスキルを保存しておける。


私は二回転生していて計4枚の翼があるので、保存できるスキルは4つ。これには時間のかかるスキルを入れておくと、同時に4回攻撃できるという豪華仕様だ。


中には捕獲スキル→攻撃スキル→捕獲スキル→攻撃スキル→発動中に再び溜め→捕獲スキル→攻撃スキル……と「ははははは!ずっと俺のターン!」とやっている人もいた。


『神召還』は一定の確率で様々な"神様"を召還できるスキルで、私にも何が出るのかまったく分からない。


今回は全員見事に肉弾戦の神様みたいだけれど、中にはレーザービームを放つ神様もいるとか。あの上半身裸で黒いスパッツの人も何かの神様だろう。


…さて。初めて横殴りをしてしまった……何とも申し訳ない気持ちになるけれど、どうしてもしなければならなかったのだ。


呆然を通り越して真っ白になっている、セイント☆矢に出てくるシルバーセイントみたいな人達の前に出ると、ズザザザザッ、と後退りされました。


うむ。


わかっている。わかっているのだ。不審人物だよね。めっちゃ不審人物だよね。


しかし、しかーし、しょうがないと思う。何しろ今の私の姿は『黒の枢機卿』シリーズ一式を装備しているのだから。


さらにレベル99の証拠であるオーラが出まくってるからね。これカットできないし。


でもこの装備。めっちゃくちゃ防御力が高いのだ…………主に、日差しに対して。


まともに化粧をしていない上に、日除けクリームも無い中歩くためにはこれしかなかったのだよ…!


しかし、盲目無効の夜でも見える暗視ゴーグル付きだし、毒無効、耐熱、耐寒、気配察知と他にも特殊能力付加のオンパレードなのでネタ装備の中でもレア中のレアだ。


何と声も変わるのだ。まあ、ただのMMOだったから、会話文がかすれた文字で表示されるだけだったので本当に変わっているのかわからないけど。


そして何より、顔を覚えられたら困るしね。


よく他の小説やマンガで異世界へ行って戦うとかを素顔でやってるけど、恨まれたら怖いじゃん────っと、そんな場合じゃなかった。


私は歩みを進める。本当は心臓がバクバク言っているし、普段より遥かに息が上がっているけれど、やらなきゃならないことがある。


本当はやりたくない横殴りを決行したのも、それを一刻も早くする為。


男の子に表示されている文字────『死亡』


そして、そのさらに後ろにある文字。



『蘇生可能時間 05:24/30:00』



前のほうの数字が1秒単位で減っている。これは恐らく、死亡してから30分以内なら蘇生できるという事の筈……お願い、神様……そうであって……!


私はアイテム欄からあるアイテムを取り出す。


青い親指程の小さな石。


アイテム名を『力の結晶石・青』という。


死亡してしまったキャラクターを蘇生させるスキルを使う時に必要なアイテムだ。


これが無いと、スキルだけあってもどうしようもない。


幸い私のアイテム欄にはこれが上限いっぱいいっぱいまで入っている。


本当は結構高級アイテムで集めるのは大変なのだけれど、カクカク不思議な動きをしながらアイテムをばら撒く人が捨てていった物を拾っていたのだ。


ありがとう。カクカク動く人。


動きが変だなーとか、邪魔だなーとか思っててごめんなさい。


カクカク動く人に感謝と謝罪をしつつ、スキル欄から『蘇生』を選択する。


対象を指定して、クリック。


ぶわっと光が広がった。


男の子の上に光と共に現れたのは、4枚の白い翼を持ち、白い法衣のような服を着た女神様。黒髪をポニーテールのように結んだその顔は……顔は……か……お………………え……………………何で私の顔!?


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