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三話 強さの脅威

 俺は今、因縁の相手と呼ぶに相応しい、覆面の男と相対している。

 というのも、数分前。


 ―市街地―


 「魔力の気迫はだいぶ収まったみたいですけど、その原因は一体何だったのでしょうか⋯?」

 「それはまだわからないな。恐らく付近に、強大な魔物が居る可能性がある。さっきの気迫はその影響かもな。」

 「そうと考えるのが吉ですね⋯。傘さん達、無事だと良いのですが⋯⋯。」

 「だな⋯。」


(補足)気迫とは⋯⋯別世界では、気迫は相手を圧倒するような気力、闘志などのことを言うが、この異世界では基本的に、魔力が押し押せてくることや魔力量などを表す言葉として使われている。

気迫押しとは⋯⋯美浦が使った特殊な拳術で、掌を前に突き出す事によって魔力を押し出し、消滅させるという効果を持っている。


 そんな会話を交わしつつ、閑古鳥が鳴いているような市街地を、早歩きしながら進んでいた。

 目的地は勿論、友人の家。

 アイツのことだから、どうせ家に籠もって御伽噺でも読んでるんだろうけど⋯。

 爆発した音が聞こえたのは、確かにここら辺だった。

 だが、にしてはまったく煙たくないのが違和感だ。

 煙も火もないし、住民も騒いでる様子はない。

 というか、住民が人っ子一人通っていない。

 それも実に気になるところ。

 そして、胸を刺すような嫌な予感もする。

 誰かが事件を葬ろうと、なかったことにしようとしている?

 もしかしてこれは、誰かが見せている幻なのだろうか?

 頭があちこちずきずきと痛みだすほど、様々な可能性を考えた。


 「だ、大丈夫ですか隆真さん!顔色悪いみたいですけど⋯。」

 「あぁ、少し考え事をしてて⋯。すまないな、心配させて。」

 「いいんですよ!謝らなくても!私は貴方が心配だから、貴方のことを思って声掛けをしているだけです。」

 「そうか、ありがとうな。」


 今日の天候は、今の俺の気分と同じで、どんよりと曇り雨粒が天からドサッと落ちてくるような、そんな様子だ。

 一体これから、何が始まるっていうんだよ⋯⋯。


 ―ラーバント 友人の家の前―


 「ここだ。ここが、友人の家だ。」

 「家の外の様子は、特に変わったところはありませんね。魔力の気迫も感じませんし。」

 「なんならこの先の方が気迫が多い気がするな。」

 「ですね⋯。」

 「だったら、さっきの爆発は何だったんだろうか⋯?一応中にも入ってみようか。」

 「良いんですか!?勝手に入っちゃっても!」

 「大丈夫だ。こいつは無断侵入しても基本許してくれるから!」

 「⋯絶対許してなさそう。」


 中に入ると、少量の魔力が身体を伝った。

 相変わらず室内は暗い⋯、電気ぐらい付けとけよ⋯⋯。

 寝床の方を見てみると、誰も居ない。

 布団を捲ってみても、友人のゆの字もない。

 リビングの方も誰もいなかった。

 とすると、あいつは留守か?

 いやいやいや⋯、あいつに限ってそんなことあるわけがない。

 意地でも外に出たがらないタイプの人間なんだ、外に出てたら逆に奇跡と呼べよう。


 「あの、この紙なんでしょう⋯?少し魔力が練ってあります。」

 「紙というか、手紙の封筒だな。」

 「あ、ホントですね⋯。真ん中に封蝋されている印章がありますし、開けてみますね。」

 「魔力が練られてあるんだろ?開けられるのか?」

 「勿論です!私を舐めてもらっては困ります!⋯えいっ!」


 ほ、ほんとに開けられた⋯。

 脳筋ってこういう時に役に立つんだな。

 そして俺達は、その封筒の中に入った、綺麗に折りたたまれた紙を開いた。

 内容は、「外出の誘い」というものだった。

 場所はアビス川という、ここから二キロぐらいは離れている、川付近のアビス工場と書いてある。

 しかも送り主は「国王」と書いてあった。

 だから、断れず外出して居ないのか⋯。

 でも、なんのために引きこもりの友人を外へ出そうと?

 国王が俺の家族や家を壊し、殺すなんてことは考えられないし、貧乏な人間に手を出すような余裕もないはず。

 だとしたら、別の人間が関わっていると見て間違いないだろう。


 「国王!?こ、この人何したんですか!?」

 「それは違う⋯!別の人間が関わってる!」

 「えぇ〜っ!?でも、なんで⋯?」

 「この家の住民である俺の友人は、ずっとここに引きこもってて、それを知った何者かが送り主を偽り、それに国王を利用した。とすると、引きこもりである友人はその命令から逆らえないから、書いてある外出の場所に行くしかなかったんだ。恐らくこれは、俺を貶めるためだろう⋯!」

 「なんて悪どい事を⋯!!私、絶対許しません!!」

 「取り敢えず、書かれている場所に行ってみよう!」

 「はい!わかりました!」


 俺の身体はどっと焦燥感に襲われた。

 今行って、果たして間に合うのか⋯?

 集合は”今から”と、手紙には書かれてあった。

 あいつが俺達が出る前に家を出たのだとしたら、あの爆発音は⋯?

 傘や露、遊雅、夏恋が調べていたと言っていた場所も、恐らくこの辺り。

 調べた痕跡はなかったから、恐らく魔力の気迫が大きかった場所を調べたのだろう。

 その後に全てが動き出したとなると、出発した後から今までの時間は十分ほどだ。

 二キロも距離が離れている中で、走って間に合うか⋯。

 あぁもう、そんなことどうだって良い!早かろうが遅かろうが止めれなければその時点で終わりなんだ。

 目的地に向かって、ただひたすらに走るしかない!

 俺はさっきよりもペースを早め、光の速さと同格の速さで向かった。


 「は、速い⋯、速すぎますよ隆真さん⋯⋯!まるで、獅子みたい⋯⋯!かっこいい⋯⋯!!」


 工場と思われる建物が見えた。

 でも、友人らしき姿は見えない。

 遅かったか⋯⋯、でも、相手の面を拝めるチャンスだ!

 顔が風によって引きつりそうになるほど、全力で走った。


 「おい!そこの黒い装いのお前!」

 「ん?な、なんだあのバカ速い化け物は!?」

 「聞いているのか!!」

 「お、俺のことか⋯!」

 「そうだ!お前のことだ!」

 「そんな離れた状態で走りながら話しかけるより!着いた時に俺に話しかけたほうが良くないか!!」

 「今そっちに向かってんだよ!離れてるもクソもあるか!!」

 「あぁもう一々面倒くさいな!!はよこい!!」

 

 やっと着いた。

 そして、目の前に居たのは、黒い装いの覆面の男だった。


 ♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦


 そして、今に至る。

 相手である覆面の男は、オーラなどは纏っていないものの、強そうな風格は感じられる。

 武器を持っていないため、相手が何をするか全くわからない状態だ。

 しかもただ立っているだけで、隙だらけ。

 こっちから攻めたらなにをされるかわからない。

 何もわからない恐怖に、身体が乱される。

 なにより、友人が何処にいるかがまだわかっていない。

 覆面の男は、生きていると言っているだけで、細かい場所について仄めかしてはくれなかった。

 友人がどうなったかわかっていないまま、戦闘など出来ないのだが⋯。

 こっちから仕掛けた喧嘩は、責任を取らないと男として負けた気がするから、やるしかない。


 「んじゃあこっちからいかせてもらうぞ!!」

 「⋯!!」

 「スキル魔法、地面割(ソルムフランゲレ)!」

 「じ、地面が割れた!?」

 「この程度で驚いてるようじゃ、俺は倒せんわな笑」

 「⋯くそ、」


 スキル魔法、聞いたことない技の種類だ⋯。

 そして地面を割って攻撃するという特殊な攻撃⋯、手強いな。


 「スキル魔法、霧水(アクアネブラ)!」

 「なっ⋯!?前が、相手も見えない⋯!!」

 「スキル魔法、分身(スペクルムミッレ)千撃(カエシオ)!」

 「こ、攻撃が!?ぐわぁぁあっ!!!!」

 「隆真さんっ⋯!!」

 「スキル魔法、溶岩蒸苦(ラーヴァ・ヴァポール)!」

 「な、なんだ⋯?」

 「爆発だよォ!」

 「ぐわぁぁぁぁあっ!!!!」

 「少量の水でも、溶岩に触れたら体積が増えて水蒸気爆発を起こしちゃうっていう特殊な仕組み、習わなかったっけ〜?」

 「な、習った覚えは、ない⋯!」

 「かわいそ、義務教育受けてないんだね笑」

 

 完全に舐められている⋯。

 魔法をろくに取得できてないのが仇となったのかもしれないが、とにかく悔しい。

 悔しさで頭がいっぱいになる⋯、そして気づいたらまた惑わされる⋯⋯。

 負の連鎖だ。


 「スキル魔法、厄災濁流(カスタロウレンス)!」

 「し、下から水!?」

 「それだけじゃねぇさ!変化スキル魔法、針地獄(ヘル・アコース)!」

 「み、水が針に⋯!グア゛っ!!」

 「ぷはっはははははははっ!!!!酷くて華麗で醜く無惨で血腥くて素晴らしい!!!!

 これで俺に挑むことの無意味さを知ったろ!!最初っからお前に友人を助けることなんてできなかったんだよ!!

 ざまぁみやがれ雑魚が!!!!くぷっ、ぷはっははははははは!!!!!!」

 「く、っそぉっ⋯!!」


 やっぱり俺には無理なのかもしれない⋯。

 人助けも強敵倒しも、何もかも成し遂げられない壁に過ぎない⋯。

 俺は弱いままここに立った。

 何様気取りのまま、一番に駆けつけて粋がって⋯。

 周りから見たらただの無鉄砲人間だ⋯、そんな奴が救世主的人間になれるわけがない。

 最初から、そうだ。最初から運命は決まってたんだ。

 自殺に失敗して、一度は死ねなかったとしても、俺は死ぬって。

 あぁ、悔しい⋯、でもこれは運命⋯、仕方のないことなんだ。

 死ぬことに変わりはない、可哀想な青年なんだよどうせ。

 哀れで救いようのない青年なんだよ。

 だから、こいつに勝てないまま、友人に何もしてやれないまま、家族にも何もしてやれないまま⋯。

 俺はここで死ぬんだ。


 「もっとだ、もっと悔しがれ!!叫んで喚いて嘆いて苦しんで、死ね。」

 「隆真さん!!貴方⋯隆真さんに卑怯な手で、勝とうとするなーっ!!⋯気迫押し!!!!」

 「な、なんだ!?急に⋯!か、風に押され、グワぁッ!?」


 ま、また気迫押し⋯。

 美浦のやつ、また助け舟を⋯⋯。


 「大丈夫ですか隆真さん!」

 「おい、美浦⋯、下がれと言っただろう⋯。」

 「下がりませんよ⋯!死なせるわけには行きませんから!」

 「っ、お前に、また助けられたみたいだな⋯。借りができちまったよ⋯⋯!!」

 「それで良いんですよ。最初のうちはねっ!」

 「ふっ、そうだな⋯!」

 「お前ら貴様らてめぇら御主ら貴殿らオメェら君らこの野郎がぁ!!

 俺に攻撃が入ったからって良い気になりやがってぇ!!ふざけるなよぉ⋯!?!?俺がもっと本気出したらお前ら事ぶち殺せるんだからなぁ!?」


 俺はもうこいつに負けない、美浦がいるから勝てる。

 満身創痍の身体が、美浦のおかげかやけに動く気がした。

 地面が割れたことによる負傷も、棘による傷も、全部治った気がした。

 まだ動く、美浦とならやれる。

 誰かに頼るのは少し気に食わないが、倒せたら済む話だ。

 こうなれば二人で片付けよう!

 息ぴったりに、戦う体制を二人でとった。


 「こうなりゃもう、お前に傷跡を残して去るしかねぇな⋯!!スキル魔法ォ、操理(ドール)⋯!!」

 「何をする気だ⋯?」

 「わかってねぇのも無理はねぇ、お前を本気にさせる方法はこれしかねぇ、何が起きたのかわからなくなるだろうよぉ⋯⋯!」

 「ま、まさかお前⋯!!」

 「そうだ!こっちまでお前の友人を連れてきてスキルで八つ裂きにし⋯、お前を本気にさせた状態で逃げるのさぁ!!!!」

 「やっ、やめろぉぉぉぉ!!」

 「やめるわけねぇだろバカがぁ!!お前の悔しがる顔を見るまではやめねぇよ!!ぜってえにな!!!!」


 友人が宙に浮いている、その事実すらも信じたくない⋯。

 死んでしまう⋯⋯、友人がこいつによって、こんなやつによって死んでしまう⋯⋯!!

 止めなければいけないのに、脚も何もかも動かない⋯⋯!!

 どうすれば良い⋯?どうしたら⋯⋯!


 「隆真さんの友人を離せっ!気迫押し!!」

 「ほれぇ」

 「⋯⋯」

 「!?そ、そんな⋯⋯!!」

 「っはははははははははっ!!お前、隆真?ってやつの友人に傷追わせてんじゃねぇかよ笑

 大丈夫だったか友人くん!ねぇねぇねぇねぇ!!はっははははははははははっ!!!!」


 あぁ、あぁ⋯!友人が死んじまう⋯⋯!!何もしてないのに、友人が⋯!!友人が⋯!!

 友人は何も悪くないのに⋯、散々やられて死んじまって⋯⋯、俺はこいつの為に何もしてやれなくて⋯!

 美浦まで巻き込んじまって、ああ俺は馬鹿だ俺は馬鹿だ俺は馬鹿だっっ!!

 罵倒が頭の中に連鎖して鳴り止まない、破裂しそうで怖い⋯!

 どうしたらいい⋯?あぁもうわかんない!何もわかんないよ!!!!


 「それじゃあいくネェ〜?スキル魔法、体内破壊(カタストロフィ)!!!!」

 「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」


 つづく

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