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二十七話 信じている

 ―王都「パルテール」―(視点:三人称)


 「「「「「「「ぎゃあああああああああああああ」」」」」」」


 一斉に悲鳴を上げたのは、王都の国民たち。

 店や家は尽く焼かれ、一部の人々は無惨に焼かれ屍に、大半の人々は城内へ逃げ、謎の襲撃に恐れ慄いている。

 

 「な、なんで急にこんなことになんだよ!!」

 「俺達は何もしてない!悪いのは国王だ⋯!!」

 「貴方馬鹿なの!?そんなこと、国王に聞かれでもしたら⋯、貴方の命が!」

 「国王に聞かれでもしたら⋯、命が、どうした?」

 「ぁ、あ⋯!!お、ぉお許し下さい国王様⋯!!」

 「命が危ういからと、此処へ来ることを恐れているからと、思ったことを口に出しおって⋯、まったくもって哀れで滑稽な者よのう―。まぁ、俺に逆らおうとした罪、命で償ってもらおうか。」

 「お、お許し下さい!私はただこの人を守ろうと⋯!!」

 「そんな馬鹿みたいな綺麗事が、俺に通じると思ってんのか?馬鹿が。んなわけねぇだろうが!!弱いくせに誰かを守ろうなんて、俺の嫌いなやつにそっくりだ。ムカつくからお前、首はねて殺してやる。」

 「ま、待て⋯!!彼女を殺すな⋯⋯!!彼女も何も悪くない。悪いのは国王、それは事実だ⋯!!」

 「おっ、お前殺し人だったやつじゃねぇか笑 俺の嫌いなやつの仲間にこてんぱんにやられて、無様にも捕まって⋯。

 どうせ下にある無空空間に閉じ込められたんだろうが、後ろにいる女に解放されてここに立ったと。

 でもさ〜、折角解放されたっていうのに、その命を無駄にしちゃって恥ずかしくないわけ〜?」

 「恥ずかしくなんかない⋯、彼女を救えたら、それだけで本望だ―!」

 「お前もお前でダッセェな。じゃあ、さっさと死ね。」


 城の扉の前、白に包まれたこの空間で、一人の人間が王に殺されようとしている。

 そしてそれと同時に、殺人識別の役人たちも行動を起こした。

 その内の一人の美浦は、隆真に貰った紙をぎゅっと握りしめている。

 まるで、過去の因縁の敵を想起したかのように。


 「やっとあいつを、懲らしめられる⋯。あの覆面の男を!」


 反撃の狼煙は、遂に上がりだした。


 ♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦


 ―ダンジョン―(視点:隆真)


 上でボコンと音がした。

 爆発音かなんかだろうな、きっと覆面の男が暴れ出したんだ。

 外へ出たら覚悟しとけよ⋯?元の国王や国民の為にも、絶対に倒してやる!


 「聖霊の(スピリトゥス)核爆(ヌクレア)!!」

 「くっ、小癪なぁぁっ!!」

 「精霊魔術、光剣(クレーブル)(ランサーシア)(アバホ)!!」

 「け、剣が⋯!ああああああああああああああ!!!!!」


 ラベリアは助けてくれた二人のお陰で、なんとか圧倒できている。

 にしても、こんなやつまで覆面の男の配下に回ってるなんて、敵側からしたら愛されてるのか?あいつ。


 「お前ら、あっしのことこんなに虐めて楽しいか!?」

 「楽しい?そんなこと、思っていませんよ。ルジカさんの仲間を殺めようとした罰として、散々ボコボコにしてやってるんですよ。」

 「⋯っ!魔女め⋯。」

 「魔女か、龍を狩る魔女⋯。悪くないかもね。」

 「怖いこと言わないでくださいよ。あくまでいたぶるだけ、息の根を止めたら私達はここから出れなくなりますから⋯。」

 「それもそうね。」

 「ならあっしを殺せ〜!!」

 「「嫌だ」」


 リエナももう一人のメイドも、悪辣なことを言うもんだな。

 クソ龍のラベリアも、すっかり涙目だ。

 龍を泣かすなんてルジカでもできなかったんだぞ⋯?改めて二人の強さを実感した。


 「まぁ、こんなもんか。」

 「ですね。もう懲りたでしょう。」

 「お、、い、、、、お前⋯、ヴィレス⋯!良いのか、、、?あの方を裏切って、、、!!」


 ヴィレス?傷だらけで倒れ込んでいるラベリアは、もう一人のメイドの方に目線を合わせそう言った。

 しかも、「あの方を裏切る」って⋯?もしかして、あの魔力も特殊スキルも何もかも、配下だったからってことか!?

 なるほど、だからメイドとして近づいて、俺を陥れようとしたんだ⋯。

 でも、裏切るってことは、こっち側につくってことだよな⋯?

 なんの目的で?なんの為に裏切るんだ⋯?俺はヴィレスというメイドの顔をチラッと覗いた。

 するとヴィレスは、覚悟の決まった顔をしていた。


 「私は、私とリエナはもう、彼奴の味方にはつかない⋯!!幼い頃から両親を裏で傷つけて、全てをズタズタに引き裂かれたような顔をしていた親を見るのがどうしても嫌だった⋯。私自身も散々な扱いを受け、散々脅され、散々貶され、私の心までズタボロに⋯。そして、私の住む街である、王都まで滅ぼそうとしている。そんな暴挙、もう黙っていられない⋯!!隆真、御免なさい。色々黙っていて⋯。本当は貴方を殺す為にここまで来た人間なの、でも⋯、私は貴方の方につく。私は王都と家族を守りたい!それにも協力して欲しい。どんな罰を受けたって良い⋯、救ってくれるなら私はそれを受け入れる!」

 「ヴィレス⋯、そんなことがあったのね。あたしからも御願いします⋯、ヴィレスの両親を、王都を⋯、お救い下さい⋯!!」

 「ちょ、あっしを無視するなっ!!」


 二人は頭が割れるほど、堅い地面に頭をくっつけていた。

 そしてその思いも、十分受け取った。

 そして俺は、ある決断を下した。


 「ヴィレス、今からお前を殺す。」

 「はっ。」

 「ちょ、ちょっと隆真くん!なんでそうなるの!?ヴィレスは何もしてないのに⋯!!」

 「リエナ、俺に考えがあるんだ。少し我慢してくれ。」

 「そ、それってなに⋯?教えてよ!」


 隣でリエナが俺の肩を揺らしまくるが、そんなことは気にしない。

 死刑と言っても、こうするのみ。


 「ルジカ!お前の剣、借りても良いか?」

 「い、良いが⋯、貴殿に使い熟せる代物じゃないぞ⋯?」

 「んなことくらい、わかってるよ!」


 ルジカが貸してくれた、思ったよりどっしりして重い大聖剣を両手で持ち、俺はヴィレスの首根っこを狙って剣を振るった。


 「いやぁっ!!」

 「⋯、あれ?痛くない⋯!」

 「今俺が切ったのは、場所がわかるチップだ。これで味方についたとわかった瞬間、行動を起こすといったものみたいだな。どうやら今までは監視による護衛と判断されてたみたいだが、今の発言は少し危なかったな。後少しで恐らく、両親が死ぬところだった。」

 「な、何故そのことを⋯!?」

 「勘だよ。」

 「も〜、ヒヤヒヤさせて⋯、あたし、心臓冷えるかと思ったよ〜。」

 「ありゃ?口調が戻っちゃってるな〜!」

 「もう封印する必要もないかなって。」

 「まぁ、俺はそっちのほうが安心する気がするから、良いけどな!」


 前を見ると、勇者たちも目覚めたみたいだ。

 良かった。


 「わっしは⋯!!わっしは、どうしたら良い?」

 「あ、そう言えばいたな、こんな奴。」

 「忘れるの早いっての!!わっしはずっとここで一人ぼっちだった。勇者が来るまでここに居ろってあの方に言われて、かれこれ五年は経ったかな。だーれも来やしない。一人ぼっちですっごく寂しかった。あの方がくれた力も一人だと無意味だった。だからわっしはさっき、ダンジョンの形状とか人の生死を操って遊んでた。ぶっちゃけ楽しかった。殆どボコしたりボコされたりの連続だったけど、一人ぼっちの時よりかは楽しかった。だからわっしも解放して欲しい。どんな罰を受けてもいいから⋯!!」


 どうやら今言ったことに、嘘偽りはないらしい。

 なので最終的な判断は、被害者であるルジカ全て委ねることにした。


 「よし、貴様は⋯、この大聖剣よりレベルが低い剣、僧梵剣(そうぼんけん)に憑依してもらう、もらおうじゃないか。」

 「え⋯!?それだけでいいの⋯?」

 「文句があるなら此処においてくが?」

 「は、は、入ります!!喜んで入りますとも〜!!」


 そう言って、レベルの低い剣に入ったラベリア。

 すると剣の様子が変わり、暗い紫色に染まった剣に変化した。

 レベルやランクが憑依によって上がったらしい、流石(ドラガーン)の力!凄まじいな!


 「本当に、有難う御座いました!」

 「殺人事件なんて、大袈裟なことで貴方達を巻き込んでしまって⋯、申し訳御座いませんでした!」

 「貴方がたが宜しければ、私達も一緒に行かせて下さい!」


 そんな感じでルジカの仲間たちも連れて、向かうのは出口。

 ラベリアに話を聞くと、どうやら城に繋がっている通路があるから、そこに瞬間移動して魔法で開けるという流れになった。

 もうすぐあの覆面の男と再会できるのか⋯、楽しみだなぁ⋯。

 あの時から変わったところは性格ぐらいしかないけど、それでもお前を倒せるぐらいの気合はある。

 絶対にお前を倒す。そして⋯、家族や死んでしまった国民、王の仇を討つ!!


 つづく

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