二十六話 戦況乱立
―ダンジョン―
ダンジョン内でクソ龍であるラベリアに翻弄されていた俺。
飛ばされた後に扉があるか確認しても扉は何処にもなく、気がついたら目の前にはまたラベリア。
死なないことを良いことにぶっ飛ばされ、骨を砕かれ、焼かれ、海に沈められ、水蒸気爆発で身体を破裂させられ、痺れさせられ、また焼かれ、終いには沢山の棘に貫かれそうになっていた。
その時、救世主のように現れ俺を守ったのは、大聖剣を使い熟し魔法まで使えて精神攻撃も効かないという最強の勇者、ルジカだった。
「貴殿よ、無事か?」
「お陰でな。というか攻撃の痛みはあるけど死なない身体になってて、変な感じがしたよ。」
「不死身というのは聞こえは良いが、痛みを感じるとなればただの生きた屍だから、だからな。」
「ルジカの言う通りだ。」
そして目の前には、攻撃を防がれた事によって怒りを覚えている、可哀想な龍がドシンと立っていた。
「見事だね。あっしの攻撃を防いだとなると、君は相当の腕の持ち主だと思われるよ。
だけどさぁ、もっと雑魚い攻撃を防いでほしかったなぁ〜!さっきの針攻撃はとっておきの技だったんだぞ!?
それを尽く防いで、そんな奴は極悪非道だ!!あっしの気持ちも考えない悪党だ!!」
「さて、どっちが悪党なんだろうね。我にはわからない、わからんよ。」
そう言うと、いつもよりギュッと剣の持ち手を握りしめ、魔力を込めた。
すると剣は青色に光だし、後にそれは剣を纏うオーラとなった。
そして、片足から的に向かって飛びつき、剣を両手で握りしめる。
どんだけ強力な攻撃を放つんだ⋯?胸が高鳴って仕方がない。
「大聖剣よ、我を導き給え―。青蒼の雷鳴!!」
「うがああああああああああああああ!!し、痺れる!?な、なんで⋯?あっしには物理攻撃と魔法が通用しないはず⋯!どういうこと⋯?」
「大聖剣よ、我を導き給え―。青蒼の打撃!!」
「うがっ、ああっ、いたあああっ!!物理攻撃も⋯?ちょっとあんたどういう原理で!!」
「大聖剣よ、我を導き給え―!」
「って、聞いてるのォ!?」
「青蒼の怒流!!」
「ちょっと待って!あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!」
空気がどっと圧縮され、こっちまで息が苦しくなるような怒涛の攻撃。
物理攻撃や魔法が通じる原理はよくわからないが⋯、圧倒的にダメージを与え続けている。
戦況は今絶好調、さっきとは打って変わって絶望を感じさせない展開が来た!
俺はこの激アツ展開に一人で盛り上がっていた。
「ちょ、もう⋯、いい加減にして⋯!」
「まだまだ足りない、足りんぞ!!」
「仲間がどうなってもいいっていうの!?」
「⋯っ!!」
「あっしがやられたらどうせ仲間も死ぬ、共倒れで意味はなくなる⋯。それに、あっしが死んだらあんたたちは一生そこから出られなくなっちゃうよ?いいの⋯?」
ラベリアはわざとらしく痛がっているフリをし、偽りの涙を流して、ルジカを騙そうとしている。
そんな謳い文句に騙されるかと思ったが、ルジカは下を向いて考え込んでしまった。
「そうそう、そうやって幾度も考えて考えて答えを見出していけばいいのよ。そしたらきっと、
さいぜんのみちがあんたをうめつくすでしょう♪あはっ!」
「って、騙されるとでも?」
「は?それってどういうこと?仲間を裏切るって?あっははっ!あんた底なしの痴れ者だね!やっぱりあっしより極悪非道じゃん!」
「違う。お前に突撃したとき、腹から仲間だけを取り出して透明化させ、今は役人の隣にそっとしておいている。お前は知らぬ間に一人高々しく高揚感に浸っていたってことだ。」
「ぁ?」
俺の隣にルジカの仲間を?いつの間にそんなことしてたのか!
戦いに夢中で全然気付かなかった⋯、やっぱりルジカすげぇよ⋯!
その感情が顔にドッと出た。
「うそだうそだうそだ、そんなことあり得るはずがない⋯!!あっしの、私の悪辣さをものともせず、ここまでやった人間なんて見たことがなかった⋯⋯!!
ああ!!私の私の私の、あの方に貰った寵愛の証⋯!!その全てが!こんな簡単に⋯!?そんなことがあっていいはずない⋯!!
あってはならないんだぁーーーッ!!!!!」
そう言うとラベリアは、山をも砕く龍の咆哮を上げ、怒りのようなオーラを纏い俺達に直進してきた。
こいつの言うあの方というのは、王であり俺の宿敵でもある覆面の男だ。
確信がついた⋯、間違いない。
「大聖剣よ、我を導き給え⋯。だ、ダメだ⋯、魔力を使いすぎて身体が思うように動かない⋯!!」
「な、なんだって〜!?」
やばい⋯、ラベリアはチーター並みの速さでこっちに突進してきてる⋯!
しかも周りに炎まで纏っている⋯、当たったら一溜まりもない⋯!
またしても絶望的状況に陥った、どうしたら良い⋯?もうわからない!!
「き、気迫押し!!」
「効かねぇって言っただろうが!無意味なことをする愚図め!火炎で骨の髄まで焼き焦がされて、死ね!!」
半歩先にはラベリア、気迫押しも効かない⋯、何も手がない⋯。
死んでしまう、どうしよう⋯、頭が回っているように混乱して止まらない⋯。
誰か、誰か助けてくれ⋯!ダンジョンには誰か居るんだろう⋯?
あ、そうだ!ルジカの仲間!仲間ならなんとかしてくれるはず⋯!
と言っても、姿が見えないと意思疎通なんて無理だ⋯。
終わりだ⋯、誰も助けてくれない⋯、今度こそ終わりだ⋯⋯。
俺は結局、死ぬしかないんだ⋯、死ぬ運命しかないんだ⋯。
そこに変わりはない、捻じ伏せることもできない⋯⋯。
短い命だった、やっぱり無理なんてしない方が良かったのかな。
ただ死を悟って、死を受け入れた。
「死なせません⋯、絶対に死なせたりしません!聖霊の守護!!」
「⋯!?こんのぉ⋯、邪魔ばっかりぃぃぃぃ!!!!」
そこに現れたのは二度もの救世主。
絶望に浸っていて存在を忘れていた、二人のメイド⋯。
片足が高く上がり、男のように俺達を守ってくれるメイド⋯。
緑髪のリエナと、橙色で長い髪を持つもう一人のメイドを⋯、やっと思い出した。
「私達が、助けに来ましゅたっ!!か、噛んだ⋯!!」
「勇敢なお姿を、これ以上汚すことはできません。お下がりを―。」
つづく




