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二十五.五話 密かな晩酌

 ―役所―(視点:三人称)


 辺りはもう既に夜で、隆真達が出かけてから二時間ほどたった役所。

 その中にある、遊雅たちには教えていないお酒と特殊なつまみが楽しめる、「居酒屋」的な場所で一人。

 寂しさに暮れ、お酒の入ったジョッキを眺め、偉そうに方杖をつきながら、いつも落ち着いている店主と会話をしている役人が。


 「はぁ、本当に大丈夫かしら⋯。隆真ちゃん達。」

 「そうですね。

 私はその人の顔を見たことがないので、どんな性格かは正確にはわかりませんが、貴方の話で大体理解はできましたから、いつか信仰を築きたいと思っていた矢先、ダンジョンでの殺人事件ですからね。

 肝が冷えるのも当然でしょう、私も正直悔しいです。」

 「こんなこと言ったらダメかもだけどさ〜?あの生意気な勇者とかメイドとか、邪魔すぎるのよ〜!隆真ちゃんともっと話したいのに、話す隙をぜんっぜん与えてくれないわけ!もうほんっと腹立つ!!」

 「傘さんは本当に、嫉妬深いお人ですね。」

 「わかってるなら態々口に出さないでよ、今飲んだくれてるんだから。」

 「お酒を飲みすぎるのは身体に悪いですよ。」

 「もう、わかってるって〜!店主ってホント、つれないわね〜!」

 「好きなのは私じゃなくて、隆真さんなんでしょう?ならば、私に構うより積極的に隆真さんに話しかけたほうが良くないですか?」

 「今居ないんだってっ⋯!ダンジョンだから命の危険があるかもしれないし、どうしようもないから、ここで飲んであげてるのよ!」

 「あっ⋯、そうでしたか⋯。」


 傍においてあるツマミもお酒も跡形もなく消えている。

 この話している瞬間でカバっと食べて飲んだとなると、この女は相当な呑んべえだなと店主は思った。


 「新しいツマミ、お出しいたしましょうか?」

 「あぁ、よろしく〜!今日は一杯しか飲んでないから、あの変態野郎とは違うぞ〜いえ〜い!!」

 「しー!子供たちや網津さんたちに聞こえたらどうするんですか⋯!これは内密的な晩酌なんですよ⋯?」

 「わ、わかってるっての⋯。ひっく、」


 本当にわかっているのかどうか、店主には甚だ疑問である。

 これで年齢が29歳なんだから、若さも美貌も表だけと心底わからされる。


 「はい、できました。ハイボールも持ってきましたよ。」

 「お、随分早かったね〜!桑鶏(くわどり)の唐揚げか〜、いいね〜!!」


 二度揚げだったり、揚げ方に拘ったり、使う鶏にも拘った、愛情たっぷりの鶏唐揚げ。(隣には三日月型の檸檬が添えてある)

 衣を箸でちょんちょんと突付くと、鶏の肉汁が衣から溢れ、幸福に満ちる。

 傘の表情は、既に虜な顔だ。


 「それじゃ、頂きます。あ、店主さんも一個良いわよ。隣にでも座って。」

 「ここ、私担当の店なんですけど⋯。」

 「良いから良いから〜!」

 「はぁ⋯。わかりました。」


 面倒くさそうにそう言うと、厨房から席の方へひょいと移動し、よっこらしょも言わずに席に座った。

 隣の顔が半分赤い傘に比べたら、百倍落ち着いている。

 一瞬の間が空いたあと、二人は箸をサッと持ち、唐揚げを刺して口に放り込んだ。


 「改めまして、頂きます。」

 「私も⋯、頂きます。」


 食べた途端サクッ、と衣の心地よい音が鳴り、中の肉のじゅわっとジューシーな肉汁と歯応えが自然と二人を笑顔にさせる。

 味付けも、ニンニクや醤油の味が口の中に広がって、お酒に進む味を成り立たせている。

 グビッとジョッキの中にあるハイボールを半分飲み、「かぁぁっ!」と豪快な声を上げる。

 そのあとは、三日月型の檸檬を取り、綺麗な果実の雫をサッと唐揚げにかけて食べる。

 サクサクジューシーで味付けが濃い唐揚げに、スッキリサッパリしている檸檬が合わさって、なんとも言えない至福の味。

 そしてまたハイボールをグビッと飲む、これが何よりの幸せだ。

 いつまでもこうして、傘さんと酒を飲み合いたいなと店主は心の底から感じ、隆真が居たら一緒につまみを食べ、酒を飲み、喋り倒したいな〜と、傘は心の底から思ったのだった。


 つづく

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