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二十三話 鼓舞の狼煙

 ―役所―


 「なるほど、そのダンジョンで仲間が気付かぬ間に殺されたから、その調査に行ってほしいと。しかもそのダンジョンは人間の亡骸は吸収せず、そのまま残ると⋯。わかりました、行きましょう。」

 「本当か⋯?本当なのか!?」

 「ええ、本当ですよ。」

 「ありがとう、実に有り難い!!」


 このやけに狂喜乱舞しているのは、曰く付きの訪問者だ。

 後ろの剣と鎧を見るに、れっきとした勇者のようだ。

 初めて見たな、ちゃんとした勇者。

 いや、厳密に言うと口調に癖のある、俺達がいつも対処してるようなヘラヘラした勇者よりかはましの勇者か。

 変な言い方が非常に気になるから、どうにかして欲しいものだ。


 そもそも、二回も同じような言葉を繰り返す馬鹿なんて、今まで見たことがない。

 大事なことなので二回言いました的なのは勿論あるけど⋯、最後の言葉を語尾のように繰り返し言う人は、誰でも見たことがないはずだ。

 でも、魔力や使っている武器の力を見ると、勇者であることに間違いはない。

 嘘をついているような面持ちでもない。こいつの言葉は信じるが吉だろうからな。

 ちょうど今、依頼が全く無くて困ってたところだし、リエナやもう一人のメイドさんを連れて行こうかな。


 「あたしは良いよ、でももう一人のメイドさんはどうかな?」

 「⋯、リエナさんが行くなら行きます」

 「よし、決まりだ!」


 ということで、俺とリエナ達、そして⋯。

 な、名前聞いてなかった。


 「そう言えば名乗るのをすっかり忘れていた、忘れていたぞ。名を言えと言われた訳では無いが、名乗ることは役人たちの仕事の貢献にも繋がるかもしれない。」


 ナイスタイミングだ!

 流石、こいつは俺のこと、よ〜くわかってるなあ!


 「僕の名前はハーヴェット・ルジカ、この世界では珍しいとされる、別世界での転生者だ、である。」


 転生者、んで勇者と。

 その四人でダンジョンに赴くことにした。


 でもこの勇者、他の異世界にあるような、最強さがない。

 覆面の男や照れてない方のメイドさんの持つ魔力と比べれば、圧倒的に魔力も少ない。

 恐らく背中に装備してある大剣による攻撃を、主に使っていると考えられるな。

 剣自体に魔力はなかった、剣技を得意とする者か。なかなか珍しい。

 俺はルジカの武器や魔力、装備などを、入国前のチェックの時のように、隅々まで見回した。


 「そんなにジロジロ見られたら困るんだが、実に困る。」

 「あ、すみません。少し強さを確認していたんですよ。別世界の転生者と言うぐらいだから、相当な力を持ってるんじゃないかと勘ぐってね。」


 するとルジカは、何を感じ取ったのか、ぎょっと目を丸くした。


 「役人である貴殿が、まさか優れた着眼点を持っていたとは⋯。恐れ入った⋯、恐れ入ったのだぞ⋯!」

 「え⋯?そっち⋯⋯?」


 てっきり俺は、「だろ〜?わかってる、よくわかってるじゃないか。」と自慢げに話すのかと思った。

 オレンジ髪のシュッとした髪型に、鋭い眼光、口調も一癖二癖あって、自分の強さを十分に理解してそうな立ち振舞にすっかり惑わされたみたいだ⋯。見た目だけで判断するのはダメだな。

 どうやら後ろのメイド二人も、同じことを思ったらしい。


 「貴殿の言う通り、この勇者。武に長けていたり、魔法に長けているわけではないが、後ろに装備してある「大聖剣へルフィディア」を振り翳すことを得意とする者だ。

 ダンジョンでは主に特殊攻撃のない強敵を相手にすることが多い。

 だが、潜っていたダンジョンは最下層に進むにつれ、特殊魔法や特殊防衛、自己再生をしてくる厄介な魔物が多くなった。

 我々も満身創痍だったのだ⋯、そんな状態で、魔物にやられた形跡のない仲間の死体が⋯。

 我がもっと見ていれば⋯、くっ⋯⋯。」

 「大丈夫だ。仲間の命は恐らく蘇生させる事はできないが、ルジカの無念も屈辱も、俺達が晴らしてやる。」

 「誠に有難う。役人である貴殿は⋯、我々の恩人だ!恩人だとも!」


 礼儀を正していて、なんだか聖剣士にも見えてくる風格。

 まるで白鳥が、人の形をして立っているようだ。

 でも、聖剣士のようで勇者っぽさも併せ持っている⋯、多重人格者にも見える。

 こいつは意外と、凄い人なんじゃないのか?


 兎も角、彼の仲間に対する思いは、しかと受け取った。

 辛い経験をさせてしまうかもしれないが、行くと決めたんなら行く。そこは絶対に曲げない性格だとも思っている。

 俺は語勢を強めて、彼の覚悟を確かめる。


 「覚悟を決めろよ!」

 「覚悟なんて、相談する前から出来ている⋯、出来ているとも。」

 「よし、その意気だ!美浦達、役所を頼む。」

 「らしくないですよ、隆真さん。無傷で返ってくると信じてます。行ってらっしゃいっ!」

 「あ、後これ。王都のことについて頼みたいことがある、それについての紙だ。読んだあとにもし何かあれば、すぐ王都に向かってくれ。恐らく、あの王は偽物だ。」

 「⋯!?わかりました。改めて、行ってらっしゃい!」


 無傷か⋯、ハードルが高い気がするが、このダンジョン潜入は俺の強さを試すためにもある。

 だから、無傷で目的地に着いて、無傷で事件を解決して、無傷で帰ってきてやる!

 有限実行だっ!次第に胸が高鳴り、ダンジョンへと突き進んでいく―。


 つづく

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