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二十話 呑気に街探索

 ―玉座の間―


 「行ったみたいですね。」

 「あぁ、そうだな。いやぁでも、久しぶりにこの玉座に立てたなぁ〜!あいつらが来るまでこの椅子の質感に触れて、幸福感に浸っていたのだよ〜。

 それをあいつらは⋯!土足で上がり込んで、俺の邪魔をするように王都の問題にも関わってきて!ほんと失礼っつうか鬱陶しいっつうかぼんくらっつうか愚鈍というか痴れ者というかなんというか⋯、クソだわぁ、隆真!!

 まぁ?王はもう既に殺してるしここ数年俺に逆らう民もほぼ居ないからいいけどよ?隆真が入ってきただけで、それだけで虫唾が走るし俺の企みもバレちまいそうだから怯え⋯んんっ!嫌なんだよ!!

 あいつの顔面も性格も苦手で大っ嫌いだ!だからいつか殺してやる!!殺し損ねた分まで滅茶苦茶にな!!

 ヴィレスよ、前言ったことはちゃんと覚えているよな?」

 「はい、しっかりと記憶しております。」

 「よし、隣にいる女はどうにでもして良い。取り敢えず、付近の者になりすまし隆真共を尾行・監視しろ。隙を見つけたら俺に知らせろ、いいな?」

 「はい、わかりました。」


 ―螺旋階段―(視点:ヴィレス)


 監視に就いて数日が経ち、私は隆真や隆真の仲間たちのことをわかってきた。

 そして、今回の任務、メイドに扮する作戦で御一緒にさせてもらったこの子のこともわかってきた。

 今は私の術でぐっすり眠っている、それもすごく幸せそうに。

 私はこの子を抱えながら、隆真の居る城前に出向いた。


 ♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦


 ―城前―(視点:隆真)


 改めてこの街を見渡すと、結構栄えているんだなということが人目でわかる。

 あの王にしてはかなり出来すぎている程、立派な街だ。

 他の王か、先代の王が造ったとかありそうだな。一応頭の中に入れとこう。


 長さや大きさがそれぞれバラバラな家が沢山並んでおり、その奥には百を超える出店の数々。

 さっき見たときには、独特な料理や独特な遊び、宝石や服、花などの特産品などの出店があった。

 正直急な殺人事件でそれどころじゃなくなったが。

 因みに当人は、殺した被害者と恋人関係だったらしく、その人に別れを告げ、取り敢えず城内の出られなさそうな場所に幽閉しておいた。(ご飯は自動で出てきま〜す。)


 暫く街を眺めていると、後ろからメイドの足音が。

 もう一人の方も目が覚めたみたいだ。

 三十分ぐらいしか待っていないから大丈夫なのだが⋯。(嘘)


 「お待たせいたしました⋯。この子が眠りから覚めないもので、無理やり起こしました。」


 大丈夫なのか、その起こし方⋯。


 「ご、ごめんなさいっ⋯!目の前で変な態度取っちゃって⋯。私⋯、素敵な人を見ると過剰に興奮しちゃって、気が動転しちゃうんです⋯。」

 「私もありますよ〜!隆真さんの前では⋯、なかなか素直になれないんです。」

 「わ、私は素直よ!!あんまり話さないけど⋯。」


 確かに、傘さんと話したことあんまり無かったな。

 今更ながら急に思い出した。


 「それで、今から何処に?」

 「折角なので、この街を案内しようかなと。そう思った所存です。」

 「しょ、所存でしゅ⋯!」

 「無理して喋ろうとしなくて良いって。」


 緊張してるのか、ずっと噛んでいる。

 素直になれないのは無理ないが、あの王に任せられた人だから、他の人にも対応してるはずなんだが⋯。

 それでもこんなに恥ずかしがっているのが、少し違和感に思えてきた。


 「なるほど、では有難く案内してもらおう。」

 「承諾を貰いました。では、行きましょう。」


 その後俺達は、沢山の家が並んでいる市街地を抜け、商店街に入った。

 やはり出店の数は多く、売られているものも多い。

 人もよく通っており、栄えていることを再認識させられる。


 俺達がまず立ち寄ったのは、タコスや焼きそばといった多文化系の食べ物が買って食べれるお店。

 俺と美浦が買ったのはガーリックビーフタコス、傘さんが買ったのは富士宮風焼きそば。

 遊雅、夏恋、露が買ったのはお手軽ステーキ定食とソフトクリーム、嵐魔が買ったのはトマトミネストローネ、悠七が買ったのは和風ダレのビーフタコス。

 そしてリーダーは、ビールとチチャロン×ワカモレディップという不思議な名前の料理を頼んでいた。

 金額は合計で銀貨16枚、別世界換算で言うと1600円⋯、まぁまぁ高い。

 いや、ビールは色でお酒だってことはわかったけど、チチャロンとワカモレってなに?

 長めで分厚い焼目のついた豚肉と、黄緑色のゲテモノ足しただけじゃん。

 美味しそうという言葉が出てこないんですが⋯。

 まったく持って味が想像できなくて混乱する俺を横目に、歩きながら堂々と肉をワカモレにディップに食らいついている網津さん。

 マジで勇気ありすぎて尊敬するわ⋯、そしてビールをグビッと喉に流し込んで、太陽のような眩しい笑顔を見せる。

 なんかすごい楽しそうだね。そのうちに俺は美浦の方へ近づき次の出店へ。


 次に立ち寄ったのは、狐のお面やその他の特殊なお面が売ってある店。

 俺と美浦が買ったのは、白い狐のお面で、遊雅と夏恋は黒い狐のお面で、露は皆を驚かすためにひょっとこのお面を選んだ。


 「おい遊雅、ばぁ〜!!」


 シーン


 「おい露、わっ!!」

 「ぎゃぁぁぁぁぁ!!お前が脅かすな、刺すぞ!!」

 「ふふふっ、」

 「なんか怖いぞ夏恋⋯。」

 「気の所為でしてよ?おほほほ(気の所為じゃない)」


 金額は合計で銀貨10枚、別世界換算で言うと1000円。普通ぐらいか。

 その後も金魚すくいやルーレット、射的など、様々な出店に触れ、気づけばもう日が沈んでいた。

 もう王に報告は済んだし、他の街に情報が行き届くかどうかはわからないけど、ちゃんと言ってくれることを信じて。

 俺はメイド二人との別れを惜しみつつ、街の料理を懐かしみながら王都を後にした。


 「隆真さん!待って下さい!」


 後ろから泣きじゃくって掠れたメイドさんの声が聞こえた。


 「ま、また会えるよね⋯?隆真さん⋯!」

 「名前、覚えててくれたんだね。有難う。きっと会えるよ。その日まで待っててね。」

 「約束だよ⋯!」

 「あぁ、約束する。」


 ずっと照れていたメイドの子にサヨナラを告げ、役所に戻った。

 帰る前に後ろから「私の名前はリエナ」と言ってくれた。

 久しぶりの日本語じゃない名前に、俺は新鮮味を感じた。

 リエナ、ちゃんと覚える。絶対に忘れない。

 そして今度会ったときには、絶対に仲良くなっている。

 そう心の中で確信した。

 だが、その中で渦巻くのは、起きないで欲しいあの王都内での悲劇。

 それが起こるような嫌な予感が、ずっと俺の頭の中を悩ましている。

 もしリエナになにかあったら、俺は絶対に助けに行く。

 そう心の中で深く誓った。


 「―もし、この王都を助けることが出来る人間が存在するのなら、きっと君だよ。隆真。」


 つづく

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