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十九話 不様な王様

 ―城内―


 「先程は失礼しました⋯、どうやらこの街の平和を脅かす「殺し人」がこの街に現れたみたいです。」

 「殺し人?罪人みたいなものか?」

 「そうですね。明確に罪人と言うことはないのですが⋯」

 「対処とかはするんですか?王やその周りの方が行動を起こさないと、国の信頼的にも問題があると思うのですが⋯。」

 「その事なのですが⋯、知っている方はいると思うんですが、王や王政の方々は、王都内や他の街の問題の情報が耳に入らないよう遮断をされていて、殺し人を含んだ反逆者の対処も一切行っておりません。

 各街の長が月に一度集まる会議、「長王(ちょうおう)会議にも御出席されておらず、長達は怒りを募らせている状態です。

 勿論他国との信頼も失っており、隣国である「ファルゼア」の国王は、この国の財宝や土地などを毟り取る為に、不平等条約を結ばせようと画策しているとの情報が入っております。」


 城の中に入って早々、重苦しい雰囲気が辺りを張り詰める。

 ここが平和ならこんな話なんてしない。そう思うと、非常に胸が痛む。

 俺はどうにかしようと拳を強く握りしめたが、その様子を見ていた照れてなかった方のメイドが冷淡に⋯。


 「止めようとしても無駄ですよ。王は自身の命が危うくなると、目つきを変えて兵士たちを強化した状態で操り、攻撃してくるんです。しかもその強さは、神の使いである大賢者をも凌ぐとか⋯。」


 と、忠告をしてくれた。

 親切にどうもと、俺はすかさず頭を下げた。


 しかし大賢者、聞き慣れない人物だ。

 神の使いと言う位だから、圧倒的に強いというのは分かるんだが、どうして操る能力と強化する技で、その者たちのように強くなるんだろうか。

 暫く考えているうちに、ツーンと頭に痛みが走った。

 あまり深く考えすぎないほうが良いというサインだろうか?これから分かるという暗示なのだろうか?

 わからないけど、ここは素直に切り替えたほうが良さそうと感じ、下がっていた顔をグッと上げた。


 「それでは、一通り話は終わりましたし、質問もないようですので、玉座の間の方にご案内させて頂きます。着いてきて下さい。」


 そう言われ、俺達は彼女の思うがままに城の中を進む。

 城内の色は、全体的に純粋な白といった感じで、頭の中が飽和してくような感覚がする。

 天井には洋風の装飾、「シャンデリア」などが使われていて、見ているだけで楽しい。

 階段の構造も螺旋状となっていて、気づくと目が回って気が動転してしまう。

 ここで襲撃にあった時に敵兵を負かせるというわけか、少し悔しいが頭が良いなと軽く称賛した。

 窓の位置も窓の形も結構トリッキーだ。

 5つの円盤型の窓が、魔法陣のように曲線で繋がれており、手を突き出して誰かを召喚しようとしたら、本当に出てきちゃいそうな程に面白い創りだ。

 城の中にいる人は俺達と、護衛と思われる兵、そして国王だけだと思われる。

 扉に一般人は通行不可って張り紙が然りげ無く貼ってあったし、扉を開けたのはメイドだし、窓の魔法陣みたいなやつが、一般人を入れないよう機能しているのかな?そう感じた。


 やっと階段を上がりきった⋯、かれこれ十数分は掛かった。

 太ももがパンパンに膨れ上がって、今にも破裂しそうな程に痛む。

 息も上がって満身創痍、護衛さんとかはいつもどうやってここ上がってるんだろう⋯。

 他愛のないことを気にする間もなく、メイドと美浦達は前を進んでいく。

 ちょ、ちょっと早いって⋯!そう訴える気持ちを抑え、情けない歩き方で歩いた。

 ここの直線の通路はどうやら、王以外の高貴な人達、俗に言う「貴族」の住む部屋が、枝分かれ状態のように左右に存在する場所らしい。

 そして、そこを暫く歩いていると、礼儀正しく並んでいる左右の護衛兵がお出迎え。

 近くに通ると、ビシッと決まった感じで此方を見る。


 そういうの、役所でもやりたいな〜。

 やるとしたら学校でだな。

 殺人識別に入る為の段階として、ステップとして学校というものを作って、そこで幼い子供を鍛え上げるといった事もしてみたい。

 武や魔法の教育にも使えるし、今度網津さんに頼んでみるか。


 そして玉座の間の扉が開かれ、中に入る。

 すると奥の真ん中に居る、金の装飾が張り巡らされた椅子に堂々と座っている、実に贅沢な生活をしてそうな国王を見つけた。


 「貴様ら、何の目的でここに来た。しかも私の街の問題にも関わってきよって、自分たちでも実に無礼だと思わないか?」


 初対面で話す一発目にしては、ちょっと辛辣だな。

 しかも、頬杖をつきながらワイン飲んでこっち睨みつけてるような国王に、そんなこと言われたくない。


 「俺達は、この国全土に「殺人識別」という名を広める為、王にその存在を把握して貰う為に来ました。俺の名前は甲高隆真です。」


 ここは名乗らねば⋯、変な義務感を感じ衝動的に名を名乗った。


 「や、耶麻美浦と⋯、申します!(緊張には慣れてないから、堅苦しくなっている。)」

 「白河傘です。」

 「詩夜永露で〜す。宜しくお願いしま〜す(こういう場に慣れてないから、いつもの調子に)」

 「約代遊雅です、おなしゃす。(略しただけ)」

 「風姫夏恋です。お、おなしゃす⋯?(便乗)」

 「夏恋⋯、無理して言わなくて良いんだぞ⋯?」

 「役所もとい殺人識別のリーダー、与那川網津です。」

 「狐族の一人、嵐魔と申します。お目にかかり誠に光栄です。(高貴な人にはいつもこうするのが、狐族には当たり前らしい)」

 「サンドロープ図書館の方で手術医をしてました。オペスキル持ちの浅木悠七です。」


 皆つられて挨拶してくれた、これが協調性というやつか?

 実に素晴らしい⋯。自分一人で鼻が高くなったような気分になった。


 「よく自分らから名乗ってくれた。態々名乗らんでも忘れるというのに、面倒くさい奴らだ。もう帰って良いぞ。役所のことは兵にも言っておく。次期広まるだろう。」


 これほどまで信用の出来ない言葉を聞いたのは久しぶりだ。

 他人に責任を押し付けてるし、絶対邪魔だって思ってるだろうし⋯。

 焦ってる様子もないし、何なら落ち着きのある様子だ。

 だが、微かにこの王都内に、血の匂いがした。

 誰かが誰かを殺したと思われる、きつい血の匂いが。

 この玉座、なにか裏がある⋯、そう思いつつ、王に睨みを効かせ、玉座の間を後にした。


 つづく

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