十八話 キングに見放されたクイーン
―パルテール 商店街―
多くの人が行き交う王都の街、「パルテール」。
貿易も盛んに行われており、観光目的で来る人も多い。
そんな中でも、人の思惑は入り込む。
王政による問題の対処の放置、それによって顕になる国の弱点。
不平等条約なるものを無理矢理結ばされてでもしたら、この国は必ず滅亡の一途を辿る。
そして、王都内の治安もまぁまぁ悪いと、サンドロープ図書館の人達に聞いた。
となると、このままだと殺人事件や盗難事件などが多発し、国の滅亡と共に、国民の関係にも亀裂が入る可能性がある。
これは非常にまずい。
俺達が住んでいる国は何十何百という街が入っていて、きっと治安が良い場所があれば、悪い場所も当然あるだろう。
そして王都の問題が加速していく中で、治安の良い街でも問題が起きたら、安地となる場所は他国以外、何処にもなくなる。
どうにか王に相談して、解決してもらえないか頼まなければ⋯。
そんなことを考え、下をじーっと見つめ、腕を組みながら歩いていると⋯、
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴が聞こえた。
商店街を抜けた、市街地辺りからだ。
俺達は逆流を進むように人並みを潜りぬき、急いで駆けつけた。
「チッ、デケェ声出しやがって⋯!!」
「お、おい待て!!遊雅、夏恋、嵐魔!追跡頼む!!」
「「「了解!!」」」
男が逃走し始めた先には、女性の刺し傷が⋯。
血がドロドロ流れ始め、ナイフには回復不可能とされる(図書館情報)複合魔術毒という特殊な毒が、これでもかと言うほど塗りたくられていた。
許せない⋯、絶対に許すものか⋯!!
「わ、私⋯、オペスキルでどうにかできないか試してみる!」
「え⋯?む、無茶だよ!オペスキルでもこの毒は強すぎて回復ができないって!!」
「できないからってやろうとしないのは自分の甘え!!たとえ不可能でも少しでも治せる可能性があったら治すが吉!!」
「そ、そうだけど⋯。」
「オペスキル、回復特化⋯、超高速複雑手術を施します⋯!!」
そういうと悠七は、目にも止まらぬ速さで手術?なるものを施し、そのお陰で、血まみれだった刺し傷はきれいに元通り。
ナイフもポトンと下へ落ちていった。
「⋯、あれ、ここは⋯⋯?」
「あっ、目が覚めた!」
「あの人は、何処⋯?」
「あの人なら、先程あなたを包丁で刺して逃走しましたよ。」
「そう、わかった。ありがとう、親切に教えてくれて。あと、オペスキルで復活させてくれて。」
「礼は良いんです。あなたが助かっただけで、それだけで十分です。」
優しい笑顔を向けながら、彼女は奥の部屋へと戻っていった。
犯人とはどういう関係だったのだろう⋯、今度会った時に聞いてみるか。
―一方、遊雅達は―
「待てぇ!!」
「くっ、」
「なかなかに足の早い悪人ですね⋯、ならば強行突破で捕まえましょう!」
「あんまり傷つけんようにな!!」
「わかってますって!狐の魔法、呱々の舞!」
「な、なんだ⋯!?か、風がっ⋯!!」
「狐の魔法、音の乱れ渦 開花!!」
「⋯っ!!あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!うるせぇ!!赤子の声がエコーみたいにずっと耳の中に残って消えねぇ⋯!!うるせぇしうぜぇし何だこれ⋯!!」
「嵐魔ナイス〜!」
「誠にありがたき幸せ⋯。」
「さぁて犯人君、俺達と一緒に来てもらおうか。」
「くっ、か、勝手にしろ⋯!それよりこのうるさいのどうにかしろ!!」
「はいはい、まったく世話の焼ける犯人さんですね」
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「お〜い!捕まえたぞ〜!!」
前から聞こえてきたのは、遊雅のデカくもはっきり聞こえる声だ。
「ありがとう!!急な命令だったけど、早急に対処できたみたいで良かったよ!!」
俺も返しとして、デカくもはっきり聞こえる声をプレゼントしてやった。
うるさすぎて周りの人困惑してますけども。
「こちらこそ、仕事を任せてくれてありがとな!はぁ、やっと近くまで着いたぜ。」
「お疲れ様、遊雅。」
「いや、お前も一緒に走ったろ」
「真似しようと思って」
「普通そんな時に真似するやつなんていねぇだろ!」
相変わらずこの二人は仲が良いみたいだ。
ツッコミとボケという、芸人にとって重要なポジションをだいぶわかっているみたいだ。
俺は芸人ってのはあんまり良く知らないが、とても感心するな。
―――――――――――――――――――――
「さっきの悲鳴、皆さん大丈夫でしたか?」
「⋯だ、だいじょ、だいじ⋯、噛んじゃう⋯⋯!」
「貴方はもう喋らんくて良い!⋯そっちの方はどうやら、ことが済んだようですね。
では今から、この王都の長⋯、そしてこの国の王の住む城、ランベリア城へ皆様をご案内致します。
玉座の間にて、王とご対面して頂き、名や職名、役所から殺人識別課に変わったことについてなどを話して頂きます。
注意すべき事と致しましては、御無礼のないよう、王の前ではちゃんとした姿勢で跪くこと。それと、不敬な言葉は慎むこと。
この二つです。」
あんだけ問題を放置してる割には、ここら辺の決まりはちゃんとしてるんだな。
タチ悪いというかなんというか、どうせムカつく顔してるんだろうから一発ぶん殴ってやりたいっていうか。
まぁ、その気持ちは抑えてやろう。
「では、私に着いてきてください。ほら、君も行くよ。」
「は、はぁい⋯。」
そうして俺達は、王の居る場所、玉座の間に赴くことになったのだ。
俺が考えるに、性格はきっと筋金入りの腹黒系のやつだ。
悪人面してそうな、なにかやばいことを企んでそうな顔をしているに違いない。
さっきの事件も俺達が解決できたから良いものの、もし誰も居なかったら死んだままだったわけだし。
有能な回復護衛とかを、付近に配置しておくとかできなかったのかね⋯?
まぁ全部諦めたように放ってるような国だからね、そんなことに一々目をつけてられないよね。
そんなこと言っても言い訳にしかならないけどね。
取り敢えず、王とは一回顔を合わせておきたい。
お互いに顔を知り合うことで、行動できる幅は増えていく。
ジロジロ見るつもりはないけど、せめて俺の記憶の中には刻み込んどいてやるよ。
俺も相手の顔をすぐ忘れるような、とんでも鬼じゃないんでね。
つづく




