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十七話 王都「パルテール」へ

 新しく殺人識別という役職が完成してから数日、周りの街に広めたら、沢山の声援を貰った。

 主に北西の街の図書館の方に声援を貰ったって感じだ。

 美穂によると、図書館以外の街の住民は治安が悪いのか、散々貶されいたぶられ、トラウマになったという。

 サンドロープ側にはあまり行ったことがなかったからわからなかったが、そんな事があったとは⋯。

 いずれ、サンドロープにも行ってみよう。

 美浦の代わりに、等身大に立って。


 一方北東の街「ラーバント」は、未だ音沙汰なし。

 工場の多い街とは聞いていたのだが、人が住んでいないのか、役職が別の名前になるのを反対する者が多いのか、それはまだわからない。

 前に起きた覆面の男の件で、魔力がまだ残っているのだろうか?

 どちらにしろ、今後調査しないといけないな。

 

 ♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦


 今から俺達が行くのは、王の住む街として言われていて、街ながらも独立を続けていることから、独立国のような街と言われている、所謂王都と呼ばれる街だ。

 何故そこまで独立したがらないのかは謎だが、俺の家族を殺されたことを黙っていた罪は重い。

 その場で言及して問い詰めてやりたい。が⋯、王は俺達より地位や権力、名声は大きい。

 逆らったら、面倒なことになるに違いない。

 ということで、こめかみにミキミキと怒りを溜めつつ、俺達は王都に向かった。


 その街の名は「パルテール」、別世界からこの世界に情報が入ってくる「雪崩」によって、頭の中に入った花の名前をそのまま付けたという。

 ここから十キロほど離れている場所で、行き方は向こうから馬車が運ばれるため、それに乗って移動するといった感じだ。

 国の雰囲気としては、感謝の絶えない国と聞いている。

 特産品は花。貿易が多い物は、花は勿論のこと、街で作った宝石やアクセサリー、別世界チックの服装など。

 経済的にも安定しており、独創的で芸術的な建物が数十軒ほど建ち並んでいる。

 ただ国王や政府は、国内や王都内で起きた問題を放ったらかしにしている面で、大勢の国民が不満を募らせている状態。

 内乱も起きるかもしれないというのに、王政は何故何もしない⋯?


 暫く海辺の方で待っている間、俺は前から疑問に残っていたことを皆に話した。


 「どうしてこの世界は、別世界の文化や言葉、単語が急にこの世界の人間の脳に入ってくるんだろう?なにか根拠や原理が分かれば良いんだけど⋯。」

 「急に何を言い出すのかと思えば⋯、雪崩の話か。たしかに不思議だよな〜、雪崩って。」

 「雪崩の言葉自体も、別世界で起きる自然災害のことを表してますからね。どうしてその名前になったかも謎です。」

 「今までそんな事考えてこなかったわね、自然に頭に入ってくるもの。当たり前だと思って生きてたわ。」

 「原理もわからないし、根拠も説明できるわけじゃないしな⋯、なぁ露!」

 「小突いてくんな!刺すよ?」

 「調べたら後々分かるかもしれませんね。いつになるかはわかりませんが。」

 「私が推測するに、雪崩は他の世界の方が干渉した影響なんじゃないかと思います。」

 「でも、転生者や転移者、召喚者は一切居ないわけじゃん?仮にそうだとして、どうやって情報を流したんだろうってなるから、その線は薄いよ。」

 「そうですか⋯。」

 「俺は分かるぞ!!」

 「えっ!?網津さん、貴方わかるの⋯?」

 「あぁ、分かるぞ!雪崩の根拠や原理は、コウノトリに袋に包んだ状態の世界の情報を運ばせて、ここに届けた!!」

 「⋯、信憑性はあるけど、何故コウノトリなのかがわからないわ。」

 「リーダー、根拠のない変な話はしない方が良いよ。」

 「ほ、本当だってのぉっ!!」


 網津さんとはあまり関わっていないから、今言ったことが本当かどうかなんてわからないけど、それでも馬鹿らしい話だったことは確かだ。

 そんな話をしていたら、北東の方から二体の馬車がやってきた。

 そしてその後ろには、人がたくさん乗れるような空間が、小さな窓から確認することが出来た。


 「役所の方々もとい、殺人識別課の皆様。お待たせしました。」

 「中にお入り下さい。王都に向かう間、ここでゆっくり寛いで行って下さい。」


 そう言って二人のメイドが、俺達を出迎えてくれたので、しっかりと誠意を持って中に入った。

 室内は優しい光で照らされており、お洒落な雰囲気さえ感じられる。

 座れる長椅子は広く、見た感じ人数分座れそうだ。

 座り心地もよく、清潔で快適⋯、配慮が十分なされている。

 香りも雰囲気によく似合った、丁度いい花の香りの香水が室内に漂っている。

 まさにこの瞬間こそ、心躍る一時といった感じだな。

 ワクワクする粋な演出、有難うメイドさん!俺は他の馬車に乗っているメイドさんに、満面の笑顔を然りげ無く見せた。


 「な、何あの笑顔⋯。」

 「素敵〜!!」

 「えっ!?き、君気でも狂った⋯?」

 ――――――――――――――――――

 王都へ向かっている最中、俺は左右にくっついて寝ている美浦と傘を少しどかし、窓からの光景を眺めた。

 沢山の農作物や自然溢れる木々の揺らめき、動物達の走りでさえも、この馬車にかかれば龍の如く速く追い抜く事ができる。

 なんだか外の風景をこうやって眺めて黄昏れていると、清々しい気持ちになるな。

 悩み事も辛い事も考え事も、一気に風に吹き飛ばされて消えていくような、スッキリするような、そんな気分にさせてくれる。

 この馬車という乗り物は、国宝級と称されても良いぐらいの存在だ。心の中でそう感じた。


 車内では皆、個性的な過ごし方をしてる。

 美浦と傘は急に退かされたので、吸い付くようにまた俺の両腕を包囲して寝ている。

 露は遊雅、夏恋と和気藹々に話しながら、でも嫉妬なのか、俺を偶に睨みつつ、この時間を過ごしている。

 網津さんは相変わらず、いびきをガーガーかいて寝ている。

 まるで怪獣がすぐそこにいるような、そんな不快感を感じる寝方だ。

 嵐魔さんは網津さんとは違い、落ち着いた様子で気持ちよく寝ている。

 見ていてこっちも気分が良くなる。

 悠七は美穂をチラチラ見ながら、俺の話し相手として付き合ってもらっている。

 気軽かつ気さくで、言い方に気になるところはあるが、話していて楽しい人だ。


 そして、暫くして窓の外を見てみると、王都の城みたいな建物の影がしっかり見えた。

 王都に城⋯、悔しいぐらいに立派そうで壮観そうだ。

 国王がいるから仕方がないとは思うが、贅沢すぎるなこれは。

 そう思いつつ、馬車が止まる時を待った。


 「つき、つ、つ⋯!!」

 「着きました!外へどうぞ!」

 「あ、有難う⋯?」


 メイドの一人が俺を見ないで、出迎えてくれた。

 機嫌を悪くしちゃったのか、それとも照れたのか⋯。

 きっとどっちかだな。やっぱりメイド服は素晴らしい!その気持ちでもう一回笑顔を向けた。


 「はうっ⋯!!」

 「ど、どしたー!!本当に気でも狂ったかー!!」


 しっかしこれから王都か。

 俺もそんな、名義上厳粛的な街に行けるとはな⋯。

 誇らしげを持ちつつ、どデカい扉を抜け、街に入った。


 つづく

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