九話 調査過程1
―聞き込みお調べペア (遊雅と夏恋)―(視点:遊雅)
俺達はまず、燃やされて家族まで殺されたという、隆真の家を探すことにした。
網津さんと傘さんのことは気になるんだが、調査を頼まれたんだ⋯。ちゃんと有力な情報を得て帰ろう。
北東の街には隆真の家らしき家は見当たらなかったから、役所から見て北西方向の森の中を歩いて行った。
昨日あんだけ雨が降ったせいか、草がまだ若干湿っている。
木からは雨のしずくが降ってくることがあり、顔や服に落ちてきたときは、少し身体が震えた。
隆真や隆真の家族や友人を襲ったやつの目的は何なんだろう?恨みか、妬みか、単に面白がってやってるだけなのか。
面白がってやってるなら、それはそれでおかしいけどな。
でも、俺が予想するに、そいつは人を殺したりすることを楽しんでるんだろう。
悪人は大体そんなもんだ⋯、役所という直接的にそういうのに関わりがない所に入ってる俺でも、他人に悪戯を仕掛けるような悪人は何度も見てきた。
役所はギルドと同じ扱いみたいなもんだからな、その辺のトラブルは止まないんだ。
友人を殺したとなると、次は俺達か?なら、俺がボッコボコにして倒してやるよ!あいつの代わりにな!
でも、隆真の友人が一人じゃない可能性もあるよな⋯、なら再会はできるけどまた逃げられそうだな。
逃げるのがお得意なのは良いことだが、それと膨大な力と挑発する余裕さや勇気をもっと他のことに活かしてほしかったぜ⋯。
そんなことを考えていたら、黒焦げで煤だらけの、恐らく木製だった家の原型すら留めてない建物を見つけた。
「なんというか、酷い有様だ⋯。」
「そうね⋯、酷い有様。」
関係者や当事者ってわけじゃないが、同情の余地しかない状態だな。
俺達は憐れむようにそっと口を噤む。
中に入ると、焼死体と思われる人が四人居た。
お母さんと思われる死体、お父さんと思われる死体、兄か姉と思われる死体、弟か妹と思われる死体だ。
心臓まで焼け焦げ、転がり落ちてくるんじゃないかってほど、酷い。
四人ともそんな状態だった。あいつが来なけりゃこんなことにはならなかったんだろうな⋯。
キッチンと思われる場所には、燃えたにしてはやけに綺麗なナイフが下に置いてあった。
気付かなけりゃこれで滑って倒れて、上の天井が崩れて下敷きになるところだった⋯。
でもなんで下にナイフが?誰かここに来て自殺しようとしたのか?
「忘れたの?隆真さんはここで自殺しようとしたのよ。」
「⋯、そうだったな。美浦さんが会議で言ってたわそういや。」
忘れたかったように頭の中で消えた、隆真の居た堪れない行動。
夏恋によって思い出して、少し悔やんだ。
それから俺達は、隆真の家族四人を土で埋め、埋葬し、綺麗な花を添えた。
どうか天国で、見守っていてください⋯、俺達が彼を救いますので。どうか安らかに⋯、という気持ちを込め、掌をぎゅっと合わせて礼をした。
そして、他の街で聞き込みをするために、その場を後にした。
「ねぇ、誰かに見られてる気がしない⋯?」
「ん?しないな。」
「なんでよ。」
「しないからしないんだよ!」
「どういう意味よ。」
「俺にもわからん。」
「なら言うなっ。」
「す、すみません。」
何故かツッコまれて悔しさがまた滲み出てくると同時に、森が開けて、街が見えてきた。
左右に逆ハ状の山が連なっていて、その真ん中に建物がズラ〜っと並んでいるという構図だ。
そして奥には砂浜と海、遠くから見るから分かる壮観さと美しさ⋯、俺はそこに見惚れたぜ。
そんなことは置いておいて、ここは北西の街、「サンドロープ」と言うそうだ。
海が近くて砂が沢山採れるから、サンドロープなんだろうか。
今度調べてみるか。
街の近くまで来ると、洋風チックの洒落た家が竹のように立派に沢山建っている。
一つ気になるのが、窓の質感がやけに艷やかで、ちゃんとしているところ。
「最近お前窓のガラス変えた〜?」
「変えた変えた〜。」
「良いじゃん!」
「洋風な感じもいいけど、あのカクカクした感じのが好きなんだよなぁ〜」
「分かる〜!!なんかそこはかとなく和風を感じるよね〜!」
通行人の会話を歩きながら傍聴していると、「ガラス」という単語が聞こえた。
聞き慣れない言葉だ⋯、でも役所の建物を思い出してみると、似たような窓があった気がしなくもない。
そのガラスとサンドの砂に、なにか関係があるのだろうか?近くの優しそうな男性に聞いてみた。
「あの、ここの窓ってガラス?製なんですよね?」
「そうですよ。他の国では実に珍しいんです。それがどうかしましたか?」
「そのガラスと、サンドもとい砂と、なにか関係があったりするんでしょうか?」
「はい。関係大有りです。ここの近くの砂は、強固な窓を作るのに適していましてね。それにこの街の長が気づかれたんですよ。そして、この街の工場で窓を大量生産して、販売したってわけです。」
「へぇ〜、製作工程とかは教えてもらえたりしますか?」
「少量の火魔法を砂に与え、じっくり焼いていくと、砂が透明になって固まるんです。
それを形状変化スキルで整え長方形にし、ガラスを固定する閉じたり開いたり出来るものも付けて、完成といった流れです!
形は取り付け後に自分でいつでも変えられます!」
「なるほど、だからサンドロープなのか。」
「役所の人達ならみ〜んな知ってるけど?遊雅貴方、世間知らずなんじゃないの?」
くっ、痛いところを突かれた⋯!悔しい⋯⋯!
「貴方がた、もしかして役所の人達ですか⋯?」
「はっ、はい。」
「やっぱり〜!私、いつぞやの時に貴方がたに助けていただいた、孤族の嵐魔です。」
一年前ぐらいの大雨の時に倒れてたところを保護して助けた、あの狐か!
孤族だったのか〜!耳がシュッと立って、尻尾もふわふわで、人にもなれて、凛々しい姿に成長して、俺大歓喜!!
「あの時の!成長したねぇ〜!!」
「はいっ!あの時助けてくださったお陰で、私は人としても狐としても、ここの住民としても成長しました!本当に有難う御座います!」
「こちらこそだっ!こんなに立派に成長した姿を、俺達に見せてくれて嬉しいぞっ!!」
「ちょっと?二人で呑気に話さないでくれる?遊雅、調査があるんでしょ?行くよ。」
「あ、ちょっ!?」
「私もっ!!同行させてください!!恩返しがしたいんです⋯!!できれば、役所の方でも⋯、働かせて欲しいです!!」
「そんなの、私が許さな⋯」
「嵐魔くんと言ったかな?網津さんに話して加入するまでは仮となるけど、一緒に行く気はあるんだな?」
「あります!!私、貴方がたの役に必ず立ってみせます!!」
「よし!良いぞ!!」
「有難う御座います!!」
「はぁ⋯。」
つづく




