重愛彼女の独占欲
土曜日。
今日は、クラスのカラオケの日だ。
「隆太郎ー! 準備できた?」
アリスが俺の部屋に入ってきた。
「ああ、もうすぐだ」
「楽しみだね! 隆太郎の歌、初めて聞けるんだよ♡」
アリスが嬉しそうに言った。
「お前、歌上手いのか?」
「んー、どうだろう。前世では、カラオケよく行ってたけど」
アリスが少し考えた。
「でも、この体になってから歌ってないから、どうなるか分からない」
「まぁ、楽しめればいいだろ」
「うん!」
※ ※ ※
待ち合わせ場所の駅前に着くと、すでにクラスメイトが何人か集まっていた。
「あ、隆太郎! アリスちゃん!」
女子たちが手を振ってくる。
「おはよう」
「おはようございます!」
アリスが元気よく挨拶した。
「アリスちゃん、今日も可愛い!」
「え、そうですか? ありがとうございます♡」
アリスが照れた顔をした。
その時、白州と桜井先輩も歩いてくるのが見えた。
「あ……」
俺が思わず声を漏らすと、アリスが俺の手を握った。
「大丈夫。気にしないで」
「ああ」
でも、白州と桜井先輩がこのカラオケに来るとは聞いていなかった。
「おはよう、みんな」
白州が挨拶した。
「あれ、白州さんも来るの?」
クラスメイトの一人が聞いた。
「うん。桜井先輩も一緒に」
「へぇ、先輩も来るんだ」
クラスメイトたちが少しざわついた。
アリスが俺の腕を抱きしめた。
「隆太郎、頑張ろうね」
「何を?」
「歌を♡」
アリスがニッコリ笑った。
でも、その笑顔には何か企みがありそうだった。
※ ※ ※
カラオケ店に着くと、広い部屋に案内された。
クラスメイト約15人、それに白州と桜井先輩を加えて、総勢17人。
「じゃあ、順番に歌っていこう!」
誰かが提案した。
「最初は誰が歌う?」
「じゃあ、俺から!」
男子の一人が手を挙げて、マイクを取った。
アニソンを歌い始める。
「おお、上手い!」
「さすが!」
クラスメイトたちが盛り上がっている。
俺とアリスは、隅の方に座っていた。
「隆太郎、何歌う?」
「んー、考えてない」
「じゃあ、一緒にデュエット歌おうよ♡」
「デュエット?」
「うん! 恋人同士で歌うと、もっと仲良くなれるって言うし」
アリスが嬉しそうに言った。
「まぁ、いいけど……」
「やった!」
その時、白州が歌い始めた。
ラブソングだった。
白州の歌声は、思ったより上手かった。
「白州、上手いな……」
クラスメイトの一人が呟いた。
歌い終わると、拍手が起こった。
「白州さん、すごい!」
「ありがとう」
白州が照れたように笑った。
その時、白州の視線が俺に向いた。
でも、俺はアリスと話していて、気づかなかった。
「次、誰が歌う?」
「じゃあ、アリスちゃん!」
女子の一人がアリスを指名した。
「え、私?」
「うん! アリスちゃんの歌、聞きたい!」
「分かりました!」
アリスが立ち上がって、マイクを取った。
「何歌おうかな……」
アリスが機械を操作して、曲を選んだ。
イントロが流れ始める。
それは、最近流行りのポップソングだった。
そして、アリスが歌い始めた瞬間――
部屋中が静まり返った。
アリスの歌声が、あまりにも綺麗すぎたのだ。
透き通るような声。完璧な音程。感情のこもった歌い方。
まるで、プロの歌手のようだった。
歌い終わると、しばらく沈黙が続いた。
そして――
「すっげぇぇぇ!!」
「うまい! マジでうまい!!」
「プロかよ!?」
部屋中が大盛り上がりになった。
「アリスちゃん、歌手目指した方がいいよ!」
「本当に上手すぎる!」
クラスメイトたちが口々に褒める。
「え、えへへ……ありがとうございます……」
アリスが照れた顔をした。
白州の表情が、少し曇っているのが見えた。
※ ※ ※
その後も、色々な人が歌った。
「次、隆太郎とアリスちゃんでデュエットして!」
女子の一人が提案した。
「デュエット?」
「うん! 二人で歌ってるところ見たい!」
「まぁ、いいけど……」
俺とアリスは、デュエット曲を選んだ。
ラブソングだった。
イントロが流れ始める。
俺が先に歌い始めた。
正直、俺は歌が上手い方ではない。でも、一生懸命歌った。
そして、アリスのパートになった。
アリスが俺を見つめながら、歌い始める。
その歌声が、さっきよりも優しくて、温かかった。
まるで、俺に語りかけているような歌い方だった。
サビで、二人で一緒に歌う。
アリスが俺の手を握った。
俺も握り返した。
歌い終わると、部屋中から拍手が起こった。
「キャー! ラブラブ!」
「お似合い!」
「リア充爆発しろ!」
色々な声が飛び交う。
白州が、複雑そうな顔でこちらを見ていた。
※ ※ ※
休憩時間。
俺とアリスは、廊下に出ていた。
「隆太郎、楽しい?」
「ああ、楽しいよ」
「良かった♡」
アリスが嬉しそうに笑った。
「隆太郎の歌声、素敵だった」
「お前の方が100倍上手いだろ……」
「そんなことないよ。隆太郎の歌、心がこもってて好き♡」
アリスが俺の腕を抱きしめた。
その時、トイレから白州が出てきた。
「あ……」
白州と目が合った。
「隆太郎……」
「よう」
俺が軽く手を挙げると、白州は少し寂しそうな顔をした。
「二人とも、楽しそうだね」
「まぁな」
「そっか……」
白州が俺たちを見つめた。
「アリスさん、歌上手だね」
「ありがとうございます」
アリスが丁寧に答えた。
「白州さんも上手でしたよ」
「そう? でも、アリスさんには敵わないよ」
白州が苦笑した。
「隆太郎、アリスさんみたいな彼女ができて……良かったね」
白州の言葉に、何か引っかかるものを感じた。
「ああ」
俺が答えると、アリスが白州に向かって言った。
「白州さん、後悔してるんですか?」
「え?」
「隆太郎を振ったこと」
アリスの言葉に、白州の顔が少し青ざめた。
「この前、図書館で聞いちゃったんです。白州さんが『後悔してる』って」
「それは……」
「でも、もう遅いですよ♡」
アリスがニッコリ笑った。
「隆太郎は、今私の彼氏ですから」
アリスが俺の腕を抱きしめた。
「白州さんが手放した隆太郎を、私が大切にします♡」
その言葉に、白州は何も言えなくなった。
「じゃあ、戻りましょう。隆太郎」
「あ、ああ……」
アリスが俺の手を引いて、部屋に戻った。
白州は、その場に立ち尽くしていた。
※ ※ ※
部屋に戻ると、桜井先輩が歌っていた。
ロックな曲だった。
歌い終わると、拍手が起こった。
「さすが先輩!」
「カッコいい!」
その時、桜井先輩が白州の方を見た。
「舞、次お前歌えよ」
「え……うん……」
白州が元気なく答えた。
明らかに、さっきの会話を引きずっている。
白州が曲を選んで、歌い始めた。
でも、さっきとは違って、どこか元気がなかった。
歌い終わると、拍手は起こったけど、さっきほどではなかった。
「白州、大丈夫? 元気ないぞ」
桜井先輩が心配そうに聞いた。
「うん……大丈夫……」
白州が無理に笑顔を作った。
アリスが俺の耳元で囁いた。
「ざまぁみろ、だね♡」
「お前……」
「だって、隆太郎を傷つけた人だもん」
アリスがニヤリと笑った。
その笑顔が、少し怖かった。
でも、同時に、アリスが俺のために怒ってくれているのが嬉しかった。
※ ※ ※
カラオケが終わり、みんなで店を出た。
「今日は楽しかったね!」
「また行こう!」
クラスメイトたちが盛り上がっている。
「アリスちゃん、また歌聞かせてね!」
「はい!」
アリスが嬉しそうに答えた。
白州と桜井先輩も、一緒に店を出た。
「じゃあな、隆太郎」
桜井先輩が手を挙げた。
「ああ」
俺も手を挙げた。
白州は、俺の方を見たけど、何も言わずに去っていった。
その背中が、少し寂しそうに見えた。
「隆太郎、帰ろ」
「ああ」
俺とアリスは、手を繋いで駅に向かった。
※ ※ ※
電車の中。
俺とアリスは、並んで座っていた。
「今日、楽しかったね」
「ああ」
「隆太郎とデュエットできて、嬉しかった♡」
アリスが俺の肩に頭を乗せてきた。
「お前、本当に歌上手いな」
「えへへ、ありがとう♡」
「プロになれるんじゃないか?」
「そうかな? でも、私は隆太郎の隣で歌ってるのが一番幸せだよ♡」
アリスの言葉に、俺の顔が少し赤くなった。
「なぁ、朝日」
「ん?」
「今日、白州に言ったこと……」
「ああ、あれ?」
「少し言い過ぎじゃないか?」
俺が聞くと、アリスは少し考えてから答えた。
「うーん、そうかもしれない。でも……」
アリスが俺を見上げた。
「白州さん、隆太郎のこと、まだ好きなんだと思う」
「え?」
「だって、隆太郎を見る目が……切なそうだったもん」
アリスの言葉に、俺は少し驚いた。
「でも、もう遅いよね。白州さんは、隆太郎を裏切ったんだから」
「ああ……」
「だから、私がちゃんと釘を刺しておいたの。『隆太郎は私のものだ』って」
アリスが俺の腕を抱きしめた。
「隆太郎、私のこと、独占欲強いって思う?」
「まぁ……少しな」
「ごめんね。でも、我慢できないの」
アリスが真剣な顔で言った。
「一度、隆太郎を失ったから。もう二度と、誰にも取られたくない」
その言葉に、俺の胸が熱くなった。
「大丈夫だ。俺は、お前以外の誰にも取られない」
「本当?」
「ああ、約束する」
俺がそう言うと、アリスは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、隆太郎♡」
アリスが俺の頬にキスをした。
「ちょ、ちょっと! 電車の中だぞ!」
「いいじゃん。誰も見てないし♡」
アリスがイタズラっぽく笑った。
この重い愛……相変わらずだ。
でも、嫌じゃなかった。
※ ※ ※
家に帰ると、母さんが待っていた。
「おかえり、二人とも。カラオケ、どうだった?」
「楽しかったです!」
アリスが嬉しそうに答えた。
「そう。良かったわね」
百合子さんが優しく笑った。
「朝日ちゃん、今日も隆太郎とラブラブだったんでしょ?」
「ゆ、百合子さん!」
アリスの顔が真っ赤になった。
「あら、図星?」
「も、もう!」
アリスが恥ずかしそうにキッチンへ逃げていった。
「隆太郎」
「ん?」
「朝日ちゃん、本当に楽しそうね」
「ああ」
「あの子、あなたのこと、本当に大好きなのね」
母さんが優しく笑った。
「これからも、大切にしてあげてね」
「ああ、もちろんだ」
※ ※ ※
その夜、俺は自分の部屋でベッドに横になっていた。
今日のカラオケのことを思い出していた。
アリスの歌声。
二人でのデュエット。
白州の寂しそうな顔。
そして、アリスの重い愛。
全てが、俺の心に残っていた。
コンコン
ドアがノックされた。
「隆太郎、起きてる?」
アリスの声だった。
「ああ」
ドアが開いて、アリスが入ってきた。
「ねぇ、隆太郎」
「ん?」
「今日、私……言い過ぎたかな?」
アリスが不安そうな顔をした。
「白州さんに」
「んー……まぁ、少しな」
「ごめんね……」
「いや、謝ることないよ」
俺はアリスの頭を撫でた。
「お前は、俺のために怒ってくれたんだろ?」
「うん……」
「ありがとう」
その言葉に、アリスの顔がパッと明るくなった。
「隆太郎……」
「でも、次からはもう少し優しくしてやれよ」
「うん、分かった」
アリスが笑顔で頷いた。
「隆太郎、優しいね」
「そうか?」
「うん。だから好き♡」
アリスが俺に抱きついてきた。
「お、おい……」
「ちょっとだけ、このままでいさせて」
アリスが俺の胸に顔を埋めた。
「今日、すごく楽しかった」
「ああ」
「隆太郎と一緒に歌えて、幸せだった」
「俺も楽しかったよ」
「本当?」
「ああ」
俺がそう言うと、アリスは嬉しそうに笑った。
「これからも、ずっと一緒にいようね」
「ああ、約束だ」
俺たちは、しばらくそうしていた。
やがて、アリスが顔を上げた。
「隆太郎、大好き♡」
「ああ、俺も」
「じゃあ、おやすみ♡」
「おやすみ」
アリスが部屋を出ていった。
俺は、天井を見つめながら考えた。
アリスとの日々は、毎日が楽しい。
白州と付き合っていた時とは、全然違う。
アリスは、本当に俺のことを大切にしてくれる。
俺も、アリスを大切にしたい。
ずっと、一緒にいたい。
そう思いながら、俺は眠りについた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。
応援が次回更新の励みになります!




