神様、てすごい
翌朝、俺は何か重いものが乗っているような感覚で目を覚ました。
「ん……?」
目を開けると、そこには金髪の美少女が俺の上に乗っかっていた。
「おはよう、隆太郎♡」
アリスが満面の笑みで俺を見下ろしている。
「お、おい! なんで俺の上に乗ってるんだよ!」
「だって、隆太郎の寝顔が可愛くて……つい」
「つい、じゃねぇよ!」
俺は慌ててアリスを押しのけようとしたが、アリスは俺の首に腕を回してしがみついてきた。
「やだ! もうちょっとこうしてたい!」
「朝からこんなの恥ずかしいだろ!」
「恥ずかしくないよー。だって、隆太郎は私の彼氏なんだから」
アリスがそう言って、俺の頬にキスをした。
「ちょ、ちょっと!」
「えへへ、隆太郎の顔、真っ赤♡」
アリスが楽しそうに笑っている。
これが……転生後の太刀川朝日。
前世の彼女は、もっと控えめだったはずなのに……。
「なぁ、朝日」
「ん?」
「お前、前よりも積極的になってないか?」
俺の質問に、アリスはきょとんとした顔をした。
「そうかな?」
「そうだよ。前のお前は、こんなに……」
「こんなに?」
「……ベタベタしてこなかった」
俺がそう言うと、アリスは少し考えてから、ニヤリと笑った。
「だって、一度死んじゃったんだもん。もう遠慮してる暇ないでしょ?」
「は?」
「隆太郎との時間は、一秒だって無駄にしたくないの!」
アリスがそう言って、また俺の頬にキスをした。
「だから、これからは前よりももっともっと隆太郎にベタベタするからね♡」
「ちょ、ちょっと待て!」
「待たない! だって、隆太郎のこと大好きだもん!」
アリスが俺の顔を両手で挟んで、目を見つめてくる。
「隆太郎も、私のこと好き?」
「す、好きだけど……」
「じゃあ、いいじゃん!」
アリスが嬉しそうに笑った。
これは……想像以上に大変なことになりそうだ。
※ ※ ※
朝食の時間。
アリスが作ってくれた朝ごはんを食べながら、俺は昨日のことを思い出していた。
「なぁ、朝日」
「ん?」
「学校のこと、どうするか考えたか?」
俺の質問に、アリスは箸を置いた。
「うん! 実はね、昨日の夜、寝る前に色々考えてたの」
「で、どうする?」
「転校生として、隆太郎の学校に行く!」
アリスが力強く言った。
「だから、そうするためにはどうすればいいんだって話だよ」
「それがね……」
アリスがリビングのテーブルの上に置いてあった封筒を持ってきた。
「これ、今朝ポストに入ってたの」
「封筒?」
俺が封筒を見ると、そこには「白金アリス様」と書かれていた。
「開けてもいいか?」
「うん」
俺が封筒を開けると、中から色々な書類が出てきた。パスポート、ビザ、留学許可証、さらには戸籍謄本のようなものまで。
「これ……全部本物なのか?」
「多分ね。神様が用意してくれたんだと思う」
「神様……本気出しすぎだろ……」
俺は書類を一枚一枚確認した。どれも本物としか思えないほど精巧に作られている。
「これなら、学校に申請できるな」
「でしょ?」
アリスが嬉しそうに笑った。
「じゃあ、今日学校に行って、先生に相談してみるか」
「うん! 一緒に行こう!」
「え、お前も来るのか?」
「当たり前じゃん! 私のことなんだから」
アリスがそう言って、俺の腕にしがみついてきた。
「分かった、分かった……」
※ ※ ※
学校に向かう途中、アリスは終始ご機嫌だった。
「ねぇねぇ、隆太郎!」
「ん?」
「手、繋いでいい?」
「別にいいけど……」
俺がそう言うと、アリスは嬉しそうに俺の手を握った。
「わーい! 隆太郎の手、温かい♡」
「お前の手も温かいよ」
「えへへ」
アリスが嬉しそうに笑った。
道を歩いていると、周りの人がアリスを見て驚いている。やはり、金髪で青い目の美少女は目立つらしい。
「隆太郎、みんな見てるね」
「ああ、お前が可愛いからな」
「もう、隆太郎ったら♡」
アリスが嬉しそうに俺の腕にしがみついてきた。
そのまま歩いていると、前方から見知った顔が歩いてきた。
白州舞だ。
俺の元カノで、桜井先輩と浮気していた女。
「あ……」
白州も俺に気づいたらしく、一瞬だけ動きを止めた。その顔は、どこか気まずそうだった。
「隆太郎……」
白州が俺の名前を呼んだ。
「……よう」
俺は軽く手を挙げた。
白州の視線が、俺の隣にいるアリスに移る。
「その子……誰?」
「俺の彼女だ」
俺がそう言うと、白州の顔が驚きに染まった。
「彼女……? もう新しい彼女ができたの?」
「ああ」
俺の答えに、白州は少し複雑そうな顔をした。
「そっか……早いね」
「お前に言われたくないけどな」
俺がそう言うと、白州は何も言えなくなった。
「あの、隆太郎は私の大切な彼氏なので、あまり近づかないでもらえますか?」
突然、アリスが白州に向かって言った。
「え?」
「隆太郎を傷つけた人には、隆太郎に近づいてほしくないんです」
アリスの言葉に、白州の顔が少し青ざめた。
「あ、あなた……隆太郎から話を聞いたの?」
「ええ、全部聞きました」
アリスがニッコリと笑った。でも、その笑顔は全く笑っていなかった。
「隆太郎を遊びで付き合って、浮気して、捨てた最低な女だって」
「ちょ、ちょっと!」
白州が慌てた。
「でも、もう大丈夫です。隆太郎には私がいますから」
アリスがそう言って、俺の腕を抱きしめた。
「私は、絶対に隆太郎を裏切りません。だって、隆太郎のこと、本当に大好きですから♡」
その言葉に、白州は何も言えなくなった。
「じゃあ、私たち行きますね。さようなら」
アリスがそう言って、俺の手を引いた。
「おい、朝日……」
「なに?」
「お前、すごい迫力だったぞ……」
俺がそう言うと、アリスはケロッとした顔をした。
「そう? 普通だよ?」
「いや、全然普通じゃなかったから……」
「隆太郎を傷つけた人は、許せないの」
アリスが真剣な顔で言った。
「だから、あの女の子には近づいてほしくないの」
「分かった、分かった……」
俺は苦笑した。
これが、転生後の太刀川朝日。
前世よりも、愛が重い。
※ ※ ※
学校に到着すると、校門の前で数人の生徒が話をしているのが見えた。
「ねぇ、聞いた? 太刀川さんのこと」
「うん……信じられないよね。まさか、あんな事故で……」
「この前、葬式だったらしいよ」
「可哀想に……まだ若いのに……」
その会話を聞いて、俺の足が止まった。
太刀川朝日の死が、学校中に広まっている。
当然だ。生徒が一人死んだんだから。
「隆太郎……」
アリスが心配そうに俺を見上げた。
「大丈夫。行こう」
俺はアリスの手を握って、校門をくぐった。
廊下を歩いていると、あちこちで太刀川の話をしている生徒たちがいた。
「太刀川さん、いい子だったのにね」
「隆太郎くんと仲良かったよね。可哀想に……」
「彼氏だったって噂もあるよ」
その言葉を聞いて、俺は少し胸が痛んだ。
アリスが俺の手を強く握ってくれた。
「大丈夫だよ、隆太郎。私、ここにいるから」
「……ああ」
俺たちは職員室へと向かった。
※ ※ ※
「すみません、田中先生いますか?」
俺が職員室の入り口で声をかけると、担任の田中先生が出てきた。
「おお、隆太郎じゃないか。よく来たな」
田中先生の表情が、どこか沈んでいた。
「隆太郎、太刀川さんのこと……本当に残念だったな」
「……はい」
「君たち、仲が良かったと聞いている。辛いだろう」
田中先生が俺の肩に手を置いた。
「もし、辛くなったら、いつでも相談してくれ」
「ありがとうございます」
俺はそう答えた。
「それで、今日はどうした? その子は?」
田中先生がアリスを見た。
「あ、初めまして。白金アリスと申します」
アリスが丁寧にお辞儀をした。
「白金……? 外国の方?」
「はい。アメリカから来ました」
アリスが流暢な日本語で答えた。
「ほう、日本語上手いね」
「ありがとうございます。日本が大好きなので、たくさん勉強しました」
アリスが笑顔で答えた。
「それで、相談というのは?」
「あの、アリスをこの学校に転入させたいんです」
俺の言葉に、田中先生は少し驚いた顔をした。
「転入? それは……」
「書類は全て揃っています」
アリスが持ってきた封筒から、書類を取り出した。パスポート、ビザ、留学許可証、それに成績証明書や健康診断書まで。
「ほう……これは……」
田中先生が書類を一枚一枚確認している。
「パスポートに、ビザに、留学許可証……全部本物だな」
「はい」
田中先生が書類をじっくりと見ている。特に、留学許可証とビザの有効期限を確認していた。
「これは……ちゃんとした留学プログラムだな。期限も問題ない」
「はい。正式な手続きを経て、日本に来ました」
アリスが真剣な顔で答えた。
「でも、急だな。今日から?」
「できれば、明日からお願いしたいんです」
アリスがお願いした。
「うーん……」
田中先生が少し考えた。
「分かった。校長先生に相談してみるよ。少し待っててくれ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
アリスが嬉しそうに声を上げた。
「ああ。でも、許可が出るかどうかは分からないからな」
「大丈夫です! 絶対に許可出ますから!」
アリスが自信満々に言った。
「お前、なんでそんなに自信あるんだよ……」
俺が小声で聞くと、アリスは小声で答えた。
「だって、神様がついてるもん」
「それ、頼りすぎだろ……」
※ ※ ※
田中先生が校長先生と相談している間、俺たちは廊下で待っていた。
「うまくいくといいな」
「大丈夫だよ。絶対うまくいく」
アリスが自信満々に言った。
「お前、本当に楽観的だな」
「だって、私には隆太郎がいるもん」
アリスが俺の腕にしがみついてきた。
「隆太郎がいれば、どんなことでも乗り越えられる気がするの」
「そんなに俺を頼るなよ……」
「頼っちゃダメ?」
「ダメじゃないけど……」
「じゃあ、いいじゃん♡」
アリスが嬉しそうに笑った。
その時、廊下を歩いてくる生徒たちが、俺たちを見て話し始めた。
「ねぇ、あれ……隆太郎くんじゃない?」
「本当だ。でも、隣にいる外国人の子、誰?」
「めっちゃ可愛い……」
「太刀川さんが亡くなったばっかりなのに、もう新しい彼女?」
「え、そうなの? 早くない?」
その会話を聞いて、俺は少し気まずくなった。
アリスが俺の手を握った。
「気にしないで、隆太郎」
「……ああ」
「私が隆太郎を守るから」
アリスの言葉に、俺は少し驚いた。
「お前が俺を守るのか?」
「うん。だって、隆太郎は私の大切な彼氏だもん」
アリスが俺を見つめた。
「誰にも、隆太郎を傷つけさせない」
その真剣な眼差しに、俺は何も言えなくなった。
その時、職員室のドアが開いて、田中先生が出てきた。
「おお、隆太郎。アリスさん」
「はい!」
俺たちは田中先生の方を向いた。
「校長先生と相談した結果……」
田中先生が一呼吸置いた。
「転入、許可が出た」
「本当ですか!」
アリスが飛び上がって喜んだ。
「ああ。特別に明日から、この学校の生徒だ」
「やったー! 隆太郎、聞いた? 私、明日から隆太郎と同じ学校に通えるの!」
アリスが嬉しそうに俺に抱きついてきた。
「おう、良かったな」
「うん! ありがとう、隆太郎!」
「いや、俺は何もしてないけど……」
「隆太郎が一緒にいてくれたから、うまくいったの!」
アリスが俺の頬にキスをした。
「ちょ、ちょっと! 学校だぞ!」
「えへへ、ごめん♡」
アリスが舌を出して笑った。
田中先生が苦笑しながら言った。
「アリスさんは、隆太郎と同じクラスに配属する予定だ」
「本当ですか! 嬉しい!」
「ただし、授業についていけるかどうか、最初は様子を見させてもらう」
「はい! 頑張ります!」
アリスが元気よく答えた。
「それから……」
田中先生が少し真剣な顔になった。
「隆太郎、アリスさん。学校では、太刀川さんの話題は避けた方がいい」
「……はい」
「特に隆太郎は、太刀川さんと仲が良かったと知られているからな。変な噂を立てられないように気をつけろ」
「分かりました」
俺はそう答えた。
「それじゃあ、明日からよろしくな」
「はい! よろしくお願いします!」
※ ※ ※
学校を出て、俺たちは家に帰る途中だった。
「やったね、隆太郎! 私、明日から隆太郎と同じ学校に通えるよ!」
アリスが嬉しそうに言った。
「ああ、良かったな」
「うん! 明日から、隆太郎と一緒に登校して、一緒に授業受けて、一緒にお弁当食べて、一緒に帰れるんだよ!」
アリスが俺の腕を抱きしめた。
「楽しみだなぁ♡」
「お前、本当に嬉しそうだな」
「だって、嬉しいもん。隆太郎と一緒にいられる時間が増えるんだから」
アリスの言葉に、俺の胸が温かくなった。
「でも……」
アリスの表情が少し曇った。
「みんな、私のこと……太刀川朝日のこと、話してたね」
「ああ……」
「寂しいな。みんな、私が死んだって悲しんでくれてる」
アリスの目に、涙が浮かんだ。
「でも、私はここにいるのに……誰も気づいてくれない」
「朝日……」
「ごめんね、変なこと言って」
アリスが涙を拭った。
「でも、隆太郎だけは知ってくれてる。それだけで、十分だよ」
俺はアリスの頭を撫でた。
「なぁ、朝日」
「ん?」
「お前、転生してから……なんか変わったな」
「変わった?」
「ああ。前よりも、積極的というか……明るいというか……」
俺がそう言うと、アリスは少し考えてから答えた。
「うーん、自分ではよく分からないけど……」
アリスが俺の手を握った。
「一度死んで、生き返ったからかな。もう、後悔したくないの」
「後悔?」
「うん。前世では、隆太郎に気持ちを伝えるのが遅すぎた。だから、隆太郎と過ごせる時間が一日しかなかった」
アリスの表情が少し寂しそうになった。
「でも、今世では違う。もう遠慮しない。隆太郎のこと、全力で愛する」
その言葉に、俺は少しドキッとした。
「だから、これからはもっともっと隆太郎にベタベタするし、隆太郎のこと独占するし、隆太郎以外の女の子には近づかせないからね♡」
「それ、重くないか……?」
「重くていいの。だって、隆太郎のこと本気で好きなんだもん」
アリスが俺を見つめた。
「隆太郎、私の愛、重い?」
「……重いけど、嫌いじゃない」
俺がそう言うと、アリスの顔がパッと明るくなった。
「本当? じゃあ、もっと重くしちゃおっかな♡」
「いや、これ以上重くしなくていいから……」
「えー、ダメ?」
「ダメだ」
「むー」
アリスが頬を膨らませた。その顔が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。
「なに笑ってるの?」
「いや、お前が可愛いから」
「え……」
アリスの顔が真っ赤になった。
「も、もう! 隆太郎のバカ!」
アリスが俺の腕を叩いた。
「いきなり可愛いとか言わないでよ! 恥ずかしいじゃん!」
「お前、さっきから俺に散々ベタベタしてきたくせに、今更恥ずかしがるのかよ」
「だ、だって……隆太郎から言われると、なんか……恥ずかしいの……」
アリスがモジモジしている。
その姿が、前世の太刀川朝日を思い出させた。
ああ、こういうところは変わってないんだな。
「なぁ、朝日」
「な、なに?」
「これからも、よろしくな」
俺がそう言うと、アリスは顔を上げて、満面の笑みを浮かべた。
「うん! こちらこそ、よろしくね、隆太郎♡」
アリスが俺の手を強く握った。
俺たちは、そのまま手を繋いで家へと帰った。
明日から、アリスが学校に通う。
どうなるか分からないけど、きっと大丈夫だろう。
だって、俺には太刀川朝日がいるんだから。
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