第24話 一人の少女
緑の死後、香月はどう生きていくのか、
そして、択矢の人生は、どう進んでいくのか...
緑が亡くなってから、十六年の月日が流れた。
今は敬男さんと二人で択矢を育てている。
択矢は相変わらず病弱だが、気付けばあっという間に
大きくなっていた。
緑、択矢はもうこんなに大きくなったよ。
もう択矢は、僕と同じ背丈だよ。
僕、結構身長高いんだけどなぁ。
もう立派な大学生だよ。
緑、緑...
ダメだなぁ、僕
自分が自分に呆れてしまう。
気を抜けばまだ、涙が溢れそうになる。
緑が亡くなった直後、精神を病んでしまいそうな僕が
まともでいられたのは、択矢の存在と敬男さんの支えが
あったからだ。
二人にはつくづく感謝している。
そうだ。もう少しで択矢は成人か。
そうか...そうか。
空を見上げる。
すると、曇り空の中、雪がしんしんと降っている。
このままでは風邪を引いてしまうな。
縁側に下ろしていた腰を上げ、居間にある小説を手に取る。
その足で僕は、自室に戻った。
ーーー七年後ーーー
択矢が結婚をする。
相手は綺麗で礼儀正しい、とても清楚な人だった。
二人とも幸せそうで、見ているだけでこちらの心も
暖かくなる。
択矢のあの笑顔、思い出すだけで口角が上がってしまう。
僕も、緑と結婚するときはあんな顔をしていたのだろうか。
とても幸せそうで、とても嬉しそうで。
素敵な笑顔。
択矢と初奈さんの間に、子供が出来たらしい。
択矢が結婚し、その夫婦の間に子供が出来た...
僕の孫か...
そうか。僕はもうおじいちゃんなのか。
緑はお婆ちゃんになるのか。
そうか。
孫の名は、美波に決めたらしい。
良い名前をもらったなぁ。
今日は美波に会った。
とても小さくて、かわいくて。
愛おしい。
あぁ、緑。
孫に会えたよ。
とてもとてもかわいい孫に、会えたよ。
父さんが亡くなった。
葬式が終わり、少しずつ実感が湧いてくる。
いないのか。もう。
あっちで母さんと仲良くやってるだろうか。
二人幸せに、元気で。
美波が中学二年生になった。
仕事でほとんど家を留守にしているため、寂しい思いをさせてしまい申し訳ない。
女の子を男手一つで育てるのはなかなかに大変だ。
今日、美波から家に人を招いて良いかと相談された。
最近やけに美波はご機嫌だ。
友達か、彼氏でも出来たのだろうか。
今度、合唱コンクールがあるらしい。
どうにかして仕事の休みを取り、学校に着いた。
見ると、美波は一人の男子と親しげに話している。
合唱が始まった。
どのクラスの子も一生懸命歌っている。
とうとう三組の出番だ。
緊張で美波は少し肩が上がっている。
なんだか自分まで緊張してきた。
合唱が終わり、美波と車で家に帰る。
わざわざ仕事を休んだことを、美波は少し申し訳なさそうにしていた。
でも、美波。
謝りたいのはこっちなんだよ。
仕事を理由に、美波を一人にしてしまっていることを、
申し訳なく感じる。
今日、仕事が終わり家に帰ると、美波がまだ起きていた。
こんな遅くまで何をしているのかと尋ねた。
すると、少し笑みをこぼしながら、友人とやり取りをしていたと言う。
こんなに楽しそうな顔をした美波は久しぶりに見る。
少し安心した。
多分、美波なりに上手くやっているのだろう。
僕も、頑張らなくちゃな。
美波の座っている横にうっすらと、僕と同じくらいの背丈をした、穏やかな表情の男らしき影と、その横にもう一つ、優しそうな目をした女性らしき影が視えた。
不思議とそれを視ると、懐かしく、暖かい気持ちになった。
いやぁ、綺麗な終わり方に出来たんじゃないでしょうか。
なかなか自分でも納得できたかなぁと思います。
それではまた。




