9話 宿屋に着く
馬上、隊長の後ろに乗せられて、隊長にしがみつく。
拘束がなくなったから、ずいぶん楽になりましたよ!
そうそう、隊長が言ってた『魔法の脅威が無くなった』ってのは。
魔術師の血等を摂取した者は、その魔術師の攻撃魔法が効かなくなるんだってー。
簡単に教えてもらったけど、ようは、相手の体内に入ったわたしの細胞が、相手の中に同化して、味方認識しちゃうから、とか、そんな感じっぽい。
まぁ、よくわかんないけど!
疑問は尽きないながらも、おとなしく連行されとく。
だって、行くところ無いし。
いざとなったら、魔法でどうにでもなりそうだし!
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お…お尻が二倍になった気分です…。
「早く降りろ」
先に下りた隊長が、馬の背で身動きできないわたしに、イライラしていらっしゃいます。
無理です…降りれません。
(痛みのあまり)なみだ目なわたしの視線から、わたしの状態を察したらしい隊長は、小さくため息を吐くと、馬上のわたしのわきの下に手を入れ、軽々と持ち上げ…荷物のように肩に担いで下さった。
……えぇ、足もがくがくして歩ける気はこれっぽっちもしませんが、この、荷物のように担がれるのはどうでしょう…頭が下にさがって、鼻血がでそうです。
何とか隊長の背中に腕を突っ張って上体を起こすと、丁度宿屋に入る途中だった為、店の入り口に後頭部を強打してしまった。
「~っつ!!」
「…何をやっているんだお前は」
「な…なんでも、ナイです…」
後頭部を抱え、隊長の背中に逆戻り。
先に入って宿泊の手続きを済ませていたジェイさんに続いて、上階への階段を上り(もちろん、担がれたまま移動)部屋の寝台に転がされる。
ぐったりとうつ伏せになったまま動けない…。
なんていうか、重力に抗えないよ…体が重い、お尻が痛熱い、おなかすいた、腰が痛い、眠い…。
「…ぐぅ」
「一瞬で…」
転がした次の瞬間に寝息を立て始めたその様子に、隊長は軽く引きつつ、既に爆睡している魔術師の下敷きになっているシーツを無造作に引き抜き、乱暴にその上に落とす。
「…ふんっ」
何か思うところがあったのか、隊長は鼻でひとつ荒く息をつくと、部屋に灯してあったランプの火を吹き消して、そっと部屋のドアを閉めて出て行った。