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83話 報告

「……リオウ」

 低い声が心地よく耳に入る。

 ふわりと体を持ち上げられ、意識が覚醒する。

「リオウ」

 もう一度呼ばれて、ゆっくりと目を開ける。

「ディー…? あ、れ?」

 ディーに抱っこされているのに気づき、ついさっきまで母さんと話していた余韻が吹っ飛ぶ。

 ディーの膝の上に慌てて体を起こす。

 ええと! ディーが帰ってるってことは、もう夜!?

 焦って室内を見回せば、まだまだ十分日が高い。

「ディー、仕事は?」

「報告だけしてきた。 リオウ、イストーラへ行ったのか」

 断定口調で言われて、どう誤魔化そうかと逡巡してると、嘘はつかないほうが身のためだぞ、と警告された。

 ひぃ……

 

 そんなわけで、一切合財いっさいがっさいディーに報告しました。

 思うんだ、無表情であの目で見つめられ続けて、口を割らない人間が居るだろうか! いや、居ない!

 要約するとこんな感じ。

・楓が居なくなったので、扉を作って開けたらそこはイストーラで、楓が捕まっていた。

・イストーラを牛耳っていた宰相を捕まえて、宰相の洗脳魔法(?)を解除してイストーラ王に引き渡した。

・事後処理の為、楓はイストーラに残り、わたしは帰宅

・わたしがこの国に来ることになった経緯も大まかに説明


 夢の中で母さんと会ってたこと及び、楓が3回わたしが2回、イストーラを焦土にすることができる程の魔力があることはとりあえず割愛した。



「そうか」

 わたしがひとしきり白状した後、ディーはそう言ったっきり何か考え込んでいるようだった。

「ああそうだ、いいかげん、これは取ったらどうだ? 抱き心地が悪い」

 そう言ってわたしの胴を撫でる。

 ああ、鎖を解除するの忘れてた、だからイストーラに行ったのがばれたんだろうか?

 解除して縄に戻すと、ディーがそれを取り上げてポイとソファの横に放り、膝の上に乗せたままのわたしを抱きしめる腕に力を込め、わたしの首筋に顔を伏せた。

「ど…したんですか? ディー?」

 らしくない感じのディーに少し動揺しつつ、ディーの背中に腕を回して、慰めるように背中を撫でてみた。

 わたしを抱きしめる腕に力がこもる。

 少し苦しいけど、我慢する。


 暫くそうしてから、ディーは決心したように顔を上げた。

「リオウ、ずっと傍に居て欲しい」

「ディー?」

 真剣な様子に何事かと動揺する。

「愛してるんだ。 子供ができていなくても、お前を帰したくない」

 頬に手が添えられ軽く唇を吸われても、吃驚したわたしは反応を返せなかった。

「で、でも、だって…約束……」

 もし子供ができていたらこのままこの世界に残るけど、そうじゃなかったら一度向こうに戻って高校を卒業したいと……。

「待てない」

「いや、あの、ディー?」

 じっと見つめられるが、折れるわけには…っ。


「愛してる」


 だ、だから、なんでそんなに好きになってくれてるのか、わからないんだけどっ。

「じゃ、じゃあ! ウチの両親に会ってください!! 両親を説得できたらっ」

「わかった」

 即答…って、ディー?

 むしろなんだか、ニヤっとして…もしかしてわたし、早まった?

 そういえば夢の中で母さんが、不況で就職難だからイケメンと結婚も有り的なこと言ってなかったっけ……。

 いや、まさかね、そう簡単に異世界婚を認めるとか無いよね。

「では今晩にでもあちらにお邪魔しよう」

 今晩……今晩!?

「あ、あのディー。 実はさっき夢の中で母に会いまして、一度戻って説明することになってて、それが今晩なんですけど……」

「丁度いい、私も行こう」

 いや、あの、できれば一回わたし一人で行って、家族と話をつけてから……ああ、はい、駄目ですよね。




 こうして、恐怖の第一回家族会議にディーも参加することになりました…orz


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