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69話 戦

注:エロじゃなくR15 流血沙汰というか……。


 まだ、解除していなかった日本刀を、一応構えておく。

 剣の心得なんてゼロなので、コレをどうこうすることは無いけど、牽制には…なって欲しい。


 頼みの綱の、チェーンを地中に這わせ、ちらちら気になる魔術師の操駆おどりをどうにかしようとして、鎖が一定以上進まないことに気がついた。

 便利魔法とはいえ、やっぱり限界はあるのか…。

 取りあえず大体50メートル圏内は射程距離ということは把握できた。


 面倒だし、ここは一発、みなさんに眠ってもらおうか、それとも、重力を加えて地面と仲良しになってもらおうか。


 それにしても、この人たちはイストーラの人なのかな? 一応皆さん、軍服ではないけど、いかめしいその雰囲気は兵士とか軍人とか傭兵とかいったものに該当しそうだ。


 殺気で、ちびりそうですよ…。


 とっとと、ドアーで帰っておけば良かったかな。



 自分にアドバンテージがあると思い込んでいたせいか、後方から近づいていた敵の存在に気づかなかった。


「うぐっ!!」

 突然口を塞がれて、刀を持つ腕を強い力で押さえられた。


 腕をひねり上げられ、手から刀が落ちナイフに戻る。

 容赦ない力に、肩が外れそうになる。


 気を失いそうになった。




”目を閉じるな! 耳を塞ぐな!”



 王都に向かう途中、襲われたときにディーに怒鳴られた声が脳天に響いた。




 まだ、負けてないし!


 わたしの最強である鎖よ、来い!



 足元から土を巻き上げ、鎖がわたしを中心に渦巻きながら敵を弾き飛ばした。


「ひぎゃぁぁ!」

 後ろで悲鳴を上げた男を振り返る。


 鎖の威力のためだろうか、男の両腕が千切れ飛んでいた。

 すぐに目を逸らし、直視はしない、できない。



 威力が強すぎるってわかってたのに…。


 じわりと後悔が広がるが、周囲から向けられる一層の殺気に、現実から逃避しそうになる思いを引き止める。


 ズボンの裾から出していた鎖を右手の指輪まで戻す。

 

 たったそれだけの隙も、敵は見逃さず、剣を振りかざした男たちが殺到する。


「鎖よ、防御せよ」

 右手を上空に向けその先から鎖を円錐状にわたしの周囲を回転させる。


 何者の剣も通さず、何者の矢も弾き飛ばした。



「化け物めっ!!」

「王を惑わす、異界の魔術師め! この地で尽きるがいい!!」

「わが国を乗っ取ろうとしているのを知らぬとでも思ったか!」


 多くの罵詈雑言が防御壁の向こうから浴びせられる。

 いや、耳に、脳に、心に直接刺さりこんでくる。



 何のことかわからない。

 あの人たちが、何を言っているのか、わからない。

 なぜわたしに怒り

 なぜわたしに殺意を向け

 なぜわたしに剣を突きつける!?


 あんたたちが呼んだんでしょうが!!!

 なんでわたしが殺されなきゃなんないの!?


 ふざけんじゃないわよっ!!!!! 


 そう思うのに、何もできない。



 がなりたてる声がますます大きくなる。

 怒声に、意識が持っていかれそうになる。



「リオウ! 目を閉じるな!!」

 遠くから叫ばれた声に、ぼうっとしていた意識が引き戻される。


「ディー?」


 遠くで、剣のぶつかる音がする。

 人の悲鳴が聞こえる。


 渦巻きわたしを護る鎖の壁の向こう、魔術師の周りにいた男たちを一人の人間が凄い勢いで切り倒している。

 遠くなのにわかる。

 木立の向こうなのに、あれが、ディーだってわかる。


 敵だって強いだろうに、ディーが一太刀振るうごとに敵が倒れてゆく、魔術師にたどり着くと、無抵抗の魔術師を一刺しで地に転がした。



 頭にうわんうわん響いていた怒声が、消えた。





 ディーは襲い来る敵を、問答無用に切り捨てる。

 怒号が上がり、悲鳴、血が飛び散る。


 死んだ人が大半で、残りは致命傷で、軽症など一人も居ない。


 殺意を持っている人間を、生半可なことで止めることはできないんだと、現実が。


 ”目を閉じるな”


 ディーの声が聞こえる気がする。

 ディーの目が、その剣が、その存在感が、目を逸らすことを許さない。







 周囲は血の海になり、わたしの足元には力なく鎖が垂らされていた。

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