56話 夢の中で
「やっと!!! やっと呼んでくれた!!! 良子っ!!」
がばぁっつ、と抱きしめられて、目を白黒させる。
「え、えっと、委員長?」
「そうですよ! 委員長ですよ! もうっ! もうっ!! あまりにも音沙汰が無いから心配してたんだよ!?」
体を離して両手を握られる。
久しぶりに会う委員長は、ちゃんと高校の制服を着て、高めに結ってあるポニーテールも、意思の強いその目も変わってなかった。
「ごめんね、大丈夫だった?」
黒目勝ちの瞳が揺れるのを見て、咄嗟に笑みを作る。
「大丈夫だよ、ほら、ぴんぴんしてる」
力こぶを作って見せると、少し離れて、上から下まで視線を這わされた。
「……えっと、良子サン? その服はもしかして、イフェストニアの服じゃ…?」
言われて、自分を見れば、確かに従者服を着ている…。
というか、ここ、どこ?
「ここは夢の中。 良子がそう望んだから、こうして、やっと会うことができたの」
「夢?」
ということは…えぇと、目の前にいる委員長は、単なる空想の産物、夢の登場人物ってだけの…?
「夢だけど、只の夢じゃないよ? 私は日本に居て、そこから良子の夢に繋がってるの、だから、夢の中だけど現実!
それにしても……アノヒト達…想像力が無いにも程があるわね……、なんで、よりにもよってイフェストニアなのよ!
何にもされてない!? 殴られたりとか、監禁されたりとか!」
心配顔ですがりつかれて、首を横に振る。
「最初は…縄掛けられてたけど、なんだかいつの間にか従者として雇ってもらえることになったし、ディーも周りの人たちも、結構よくしてくれるし。 メイドになったり、魔法で冷蔵庫作ったりして…うん、面白いよ」
そういって苦笑すると、委員長は探るようにわたしを見つめていたが、言葉に裏が無いのがわかったのか視線を緩めてくれた。
「…そう、いい人たちに出会えたんだ? あれ? でも、従者って事は、まさか主は軍の人…?」
「え、う、うん。 貴族とかじゃないけど…伍番隊の隊長とかやってるヒト」
あ、あれ?
委員長が orz な格好で脱力してる…。
「ぐ…軍で…その上、隊長クラス……。 まさか、とは思うけど、その国の王様とかにあったこと、あったりする?」
「え、あるけど?」
あ、委員長が落ち込んでる。
これは、何かフォローしておいた方がいいよね!
「あのね! 王様、ちょっと怖い感じだけど、案外気さくだし、ちょくちょくお城を脱走してるし、カキ氷も好きだし! そんなに悪いヒトじゃな……」
不意に、世界がゆがんだ。
「あ! いけない! 目が覚めそう!? また、夢で逢おうね! そう願ってね! でも、会ってるの内緒だよ! 誰にも言わな……」
焦って言う委員長の姿が消える…そして、意識が浮上する……