55話 願わくば
あれ?
……そういえば、委員長、イストーラ?って国に行けって言ってたんだよね…。
で、ここは、イフェストニア……。
ベッドの中で眠りに落ちかけた瞬間、思い出した現実に一気に意識が浮上する。
もしかして、だから委員長が迎えに来ないのか?
いや、来れないのかも?
もしかして、こうやって呑気に生活してちゃまずかったのか!?
今更にも程がある仮説に、愕然とする。
いや、だって、だってだよ?
意味わからないじゃないですか、突然こんな世界に放り込まれて、魔法が使えるようになって、それからどうしろとか、言わなかったじゃない。
ねぇ、委員長、わたしに何かをして欲しいの?
わたしは何かをするために、此処にきたの?
わたしをどうしたいの…?
わたしはどうすればいいの!!
夜にくよくよ考え事をすると、どつぼに嵌るとはよく言ったものだと思う。
今まで蓋をしてきた思いが、堰を切ったようにあふれ出し、止まらなくなる。
わたしはイストーラに行かなきゃいけないんだろうか、ねえ、委員長?
でもねここに、わたしが安心して生きていられる場所があるんだ。
ディーがわたしに居場所をくれるんだ。
みんなが優しいんだ。
でも、ねぇ、日本に居るわたしの家族は元気?
凄く親しい友人は居なかったけど、転校当初からわたしを受け入れてくれたクラスメイトは元気?
そっちの世界が、恋しくて堪らない。
戻りたくて、戻りたくて、戻りたくて…みんなにあいたい……っ!!
あふれ出す思いが、嗚咽となってあふれ出す。
駄目だ、声なんか出したら、ディーに聞こえる。
そうしたら、ディーが心配する。
シーツを頭まで被り、息を止め、嗚咽を耐える。
今のは、単なる仮説だ! もう、忘れろ!
大丈夫、委員長が迎えに来てくれる!
だから、大丈夫!
でも…
……ねぇ、委員長…せめて夢にでも、会いに来て……・・・・・
壁越しに微かに聞こえていた嗚咽が止んだのに気づき、デュシュレイは詰めていた息を吐き出す。
手のひらはじっとりと濡れ、握り締めた爪が食い込んでいた。
「…リオウ………」
デュシュレイは祈るようにこぶしを額にあて、きつく目を瞑った。