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50話 お留守番 4  アル来襲

「おかえりなさい、リ…レイさん」

 え、笑顔、なんだよねアルさん?

 なんだろう、心休まらない笑顔がわたしの周りに多数存在する気がする…。


「た、ただいま帰りました。 な、何かありましたか?」

 駆け寄って見上げたわたしに、アルさんは貼り付けた笑顔のまま手にしていたカゴを渡してきた。

「約束していた差し入れです。 ああ、オルティス君久しぶりです、リレイを送ってくれてありがとう、あとは私が引き受けるよ」

 突然わたしの肩を抱いて高圧的にオルティスに言い放つアルさんにびっくりする。

「あ、ああ、それでは失礼します。 リレイも、またな」

「あ、はい、ごちそうさまでした」

 きびきびと歩いてゆくオルティスの背を見送りつつ、後頭部へ突き刺さる視線に…後ろを振り返るのが躊躇われる。



「…さてと、リレイさん、少しお話をしましょうか?」


 ぴゃぁぁぁぁ!!!




 路上でなんてお話(十中八九説教)できないので、家主不在だけど家に入ってもらい居間に通す。

 持ってきてもらったお菓子を菓子盆に乗せて出し、いつものように涼しげな白いカップに冷凍箱から氷を数個入れ、冷蔵箱に常備してあるアイスコーヒーを注ぐ。


 ええと、先に謝っておくと、うん…わたしまだ動揺してたんだよね……。




「……これは…!」

「アイスコーヒーですけど?」

 素で驚くアルさんに、わたしの方が驚く。

 アルさんは、カップを手でつつみその温度を確かめ、恐る恐るカップに口をつけ傾ける。


 こくり

 あくまで上品に一口のみ、目を見張る。

「やはり! これは、氷ではないですか!!」

「は? はい、氷ですが……あ」


 忘れていました、冷凍箱の存在はまだ明かしていないことを!!

 王宮では、かたくなに秘密を守っていたのに。


 じーっと見つめてくるアルさんの方を向きつつも、視線は斜め上へ…。


「リオウさん……この氷は一体どこから仕入れてきたんですか」

「え、ええと、氷売りのおじさんが…」

「前にも言いましたように、氷は王宮ですら滅多に使われない貴重なもので、手に入れるとすれば、王宮の裏にある氷室の中に、冬のうちに貯蔵された氷くらいなものですが、それだとて、よっぽど重要な晩餐会の折にしか切り出すことはないと聞きました。 で? この透明度も高い、すばらしい氷は一体どうやって手に入れたのですか?」


 orz


 すっかり退路を断たれてますよね、わたし。




 もう仕方ないよね…、わたしが作ったってばらさなきゃいいよね?

 

 アルさんを台所へと案内して、冷凍箱を見せる。

 ついでに、冷凍箱に常備してある、残りわずかな冷凍果物をひとつ食べてもらう。

「…っつ!!!」

 目をきらきらさせて頬を上気させるアルさんに、引いちゃったよ…。


「なんて素晴らしい!! これも冷蔵箱と同じ作者ですか!? 素晴らしい! 素晴らしい魔法です!」

「はあ…」

 確かに便利な魔法だとは思うけど。

「お願いですリオウさん! この作者の方に会わせてください!!」

 両手を握り締められ、熱い瞳で訴えられる。


 けど。

「無理です」

「ああ、これも譲り受けたものなのですね? でしたら、その譲ってくれた方にアポイントメントを取れないでしょうか? 勿論お礼はしますし、その方のことも口外いたしません!」

「駄目です」

「なぜですか!? このように素晴らしいもの、100万出しても、いや、500万は固いですね! 冷蔵箱とあわせれば1千万は…っ!!」

「っ!! ちょ、ちょっと待ってください」

 冷蔵箱+冷凍箱で1千万…。

 心の天秤が動きます…、い、いやいや、駄目駄目、平穏無事な生活にそんな大金要らないし!

 いやしかし、有っても困るものでも、あ、いやいやいやいや…!!



「アルさん落ち着いてください(自分もな)」


 

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