49話 お留守番…? 3
「いっただきます!」
両手を合わせていただきます!
目の前の、できたてサンドイッチ等等!
中途半端な時間だから空いている喫茶店で、まるで貸切のようですよ。
食堂じゃないから本格的な食事じゃないけど、軽食の種類は結構あるんだね。
美味しいっ
うまうま食べているわたしを、オルティスはじっと見てる。
まぁ別に気にもなりませんけどね、いつもどおりだし。
「本当に美味そうに食うな」
「美味しいですよ? 食べますか?」
まだ手付かずの皿を押し出す。
「いや、いい。 見てるだけで腹が膨れる」
「そうですか? じゃあ、遠慮なく」
笑顔で皿を引き戻す。
程なく、完食!
「ごちそうさまでしたー」
食後のお茶を啜りながら、超満足!!
「…いっそ、清清しいな」
「はい? 何がです? 好きなだけ奢ってくれるって言ったのオルティス様じゃないですか、男に二言はないんですよ、食い物の恨みは怖いんですよ?」
「なんのことだ…。 まぁいい、デザートは要らないのか?」
ほあ!? 一応遠慮してたんですが! デザート!!
「いいんですか? じゃ、じゃあ、このケーキが…っ」
勢い込んで言うわたしに、オルティスは肩を震わせて笑う。
また、馬鹿にして!?
憤慨して口を開くわたしを手で制して、お店の人にケーキを1つと珈琲を2つ注文した。
「ありがとうオルティス様」
「お前は本当に現金だよな」
一緒に珈琲を飲みながら、幸せ感を満喫する。
オルティスも何を言うわけでもなく、のほほんとした様子でカップを傾けてる。
「…やっぱりお前は違うよ……」
ぽつりと呟いた声に、目を上げる。
「何が違うんですか? ああ、他の女の人とは違うってことですか? 確かに、大食らいっていう自覚はありますけど…」
「あ、いや、そうじゃなくて。 いや、いいんだ」
誤魔化すように笑うから、とりあえず追求するのはやめておく。
「さぁて! 食うもん食ったし、帰りますか」
「……お前は、本当にお前だよな」
なんですか、なんかの哲学ですか。
「オルティス様だってオルティス様じゃないですか」
「俺は……。 色々あんだよ、大人の世界は」
苦笑いして、テーブル越しに頭をぐりぐりと撫でられる。
「大変ですね、大人の世界は」
ペイッと頭の上の手を退ける。
すると今度は、まとめていない髪にさらさらと指を通す。
それも取り返し、一本の三つ編みにして端を紐で縛る。
すると今度は、剣だこのある手で頬を撫でられる。
「…なにがしたいんですかオルティス様」
ペイと手を叩き落として、唸る。
そんなわたしをオルティスが楽しそうに見る。
「お前は俺に靡かないな」
「…靡いて欲しいんですか? 無理ですけど」
「……無理なのか」
軽くショックを受けた感じのオルティスが、テーブルの上にひじを突き項垂れる。
「くそ…多少なりともショックを受ける自分にショックだ…」
わけがわからないです。
「じゃぁご馳走様でした! お気をつけてお帰りください!」
喫茶店を出てお礼をいうと、渋い顔をされた。
「送っていく」
「必要ないですよ、まだ日も高いですし」
にこにこして辞退する。
「若い娘を一人で歩かせられるか」
「大丈夫ですよー、わたしなんかをどうこうしようとする物好き居ませんってー」
にこにこして更に辞退。
「若いというだけで食指が動く男も居る。 さあ、行くぞ」
「……大概失礼ですよね、オルティス様って」
「お前ほどじゃない」
結局、一緒にディーの家へ向かうことになってしまった…。
いやいや、わたしが歩いて帰る後ろをオルティスが付いてきてるだけですけどね。
ひとっ言も会話しないし。
とにかくさっさと帰るために、いつもの倍の速さで歩きましたよ! ディーと歩くときは、色々と道草食いながら歩くけど、今日はまっすぐに帰宅!!
……あれ…? なんでアルさん、ウチの前に居るの?
たらり と冷や汗が背中を伝ったのは、なぜでしょう。