5話 目的地を思い出すが、しかし
何度か試行錯誤して、大きすぎず、小さすぎないサイズのテントを……まぁこんな田舎道だし、夜だし、こんなところを通る人間なんて居ないだろうってことで、道の端にテントを設置し、その中に転がり込んだ。
地面がごつごつしていて寝づらいなぁ、と思ったのはほんの一瞬で、あとはスコーンと夢の中へ。
ぼふぼふぼふぼふ
テントを外側からばふばふされる音で目が覚めた。
「ほぁ?」
ぼけっと起き上がり、ばっきばきになった体をぐねぐねする。
「うーんっ、あぁ、寝覚め悪いなぁ」
伸びをすると案の定バキバキと小気味良い音が鳴った。
いまだに、テントがたたかれてる。
というか、どんどん叩く力が強くなってるようだから、もうそろそろ出ないと。
「はいはいー……っ」
テントから這い出すと、眼前に刃物が据えられた。
ほぁうぁぁぁ!!!
内心絶叫して、ぺったりへたりこんでホールドアップ。
わたしが抜け出たテントは、接点がなくなったためバサっという音ともに布に戻ったようだった。
「貴様、こんなところで何をしている」
視線を上げれば、群青の詰襟の制服に身を包んだヒトが、剣呑な目でわたしを見下ろしていた。
……生まれてこの方、あたらず触らず、それなりのいい子として生きてきたわたしには、その視線はイタイです。
「……隊長、この制服イストーラの魔術師のものですね」
「あぁ、だが、イストーラだとして、なぜわざわざ敵国に、その制服のまま来る? 何か裏があるのだろう」
後半はわたしに向けて、きつい口調で言っていたが…。
えぇと、聞いたことがある単語が出てきましたネ?
イストーラ
確か、委員長がイストーラに行きなさいって言ってなかったっけ?
んで、イなんとかはダメって…。
もしかしてー、もしかするとー。
「我が国イフェストニアに堂々と敵国の、それも最も警戒すべき魔術師がその制服のままくるとは。 度胸がいいというか…こうも堂々と喧嘩を売られると、いっそすがすがしいですね、隊長」
ほわわぁぁぁ!!!
やっぱり、ここはイフェ…なんとかって国っ!
それも、この制服は敵の国の魔術師とやらのモノでー!!
ワタクシ、このままだと捕虜確定ネー!!
なんてもの着せてんのよ委員長ぉぉぉぉ!!!!