47話 お留守番
ぽてぽてと、行きの倍の時間を掛けて家に戻る。
「ただいまー…」
出がけに掛けた、施錠の魔法を解除して、人気のない我が家…いや、ディーの家に入る。
そのまま2階の、自分に与えられている部屋へ直行する。
ぼふん
ベッドに倒れ込み、ごろんと仰向けに転がる。
転がったまま靴を脱いで、腰の帯を外して、ベストを脱ぎ捨てる。
案外暑いんだよね、このベスト…。
というか、ズボンも暑い!!
どうせ家の中に居るんだし、スカートでもいいよね?
起き上がり、裸足のまま床に下りてクローゼットを開ける。
「……増えてる気がする?」
よそ行きじゃなく、日常に着られるようなタイプのワンピースがね、明らかに増えてる。
そのなかから、茶色がかったオレンジ色のワンピースを取り出して着てみる。
「涼しい…」
やっぱりスカートは涼しい。
こんな時は、女で良かったと思う。
涼しくなったらちょっと気分が浮上した!
うし! 洗濯すっか!!
洗濯場は外だから、一応カツラもかぶっておこう(こっちの女性はみんな長髪だったので、短髪は悪目立ちしそう)。
今着ていた服を籠に入れ、続いて隣のディーの部屋へ。
いつでも入ってきていいとのお許しは貰っているので、ずかずかと踏み込み、クローゼットを開ける。
「やっぱり」
クローゼットの下の方に、脱ぎ捨てられた衣類の山。
一度に全部は籠に入りきらないので、何度か往復し、洗濯物を全部裏庭に持ち出す。
タライに洗濯物を入れ、操駆して水を満たし洗濯する。
”イオンの力ですっきり洗浄~”
じゃぶじゃぶごしごし、じゃぶじゃぶごしごし…
「……魔法最高…」
ティス家でメイドしてたときは魔法を使えなかったから、倍以上の時間をかけてもこんなに綺麗に汚れが落ちなかったけど。
魔法を使えばこんなに簡単に!!
広げたシャツは新品同様の白さ、CMなんか目じゃないよ!
洗った洗濯物に柔軟剤の魔法を使ってから、ぎゅうぎゅう絞って空いている籠に入れていく。
全部終わったら、竹篭2つ分の洗濯物だった。
その籠をえっちらおっちら、通りに面した物干しへ運んで干す。
魔法で乾燥できるけど、こんな天気のいい日はやっぱり天日干しだよね!
シーツを半分に折って掛ける、やっぱりシーツは太陽の匂いがしないとねー。
あと、空いている所にシャツを干してゆく。
勿論全部は干しきれないけど、干せるだけ干す!
「リレイ? リレイじゃないのか?」
聞き覚えのある声が、低い柵の向うから聞こえた。
うーわー…。
引きつりそうになる表情筋を何とか取り繕って、顔を上げる。
「オルティス様、お久しぶりですぅ」
なんでこんなとこ歩いてんすか、あんたの屋敷と逆方向でしょうに!