44話 給与明細 4
気がついたのはベッドの上でした。
オプションで横に上半身裸のディーに腕枕されて抱きしめられてます。
ついでにわたしの服も脱がされて、下着のみとなっています…コラー!
「気がついたか、リオウ」
軽くパニックになっているわたしに、目覚めたディーがほっとした笑みを浮かべた。
「えぇと、おはようございます」
「もう寒気はしないか?」
んん? もう?
「寒気はありませんが…もしかして、わたし寒がってました?」
「熱が出たからな。 で、この傷は誰に付けられたのか、聞いてもいいか?」
左肩の傷跡を撫でられる。
痛くはないけど、敏感になっているのかぞくっとする。
「痛いのか?」
身をすくめたわたしに、心配げに聞いてくる。
「ちょっと、こちょばしいだけです。 痛くありません」
「そうか。 で、誰に切られた?」
ディーの目が細まる。
こ、ここはやっぱり正直に話すべきか!? い、いや、しかし!!
「…隠すのか? それは、誰かを庇うということだが、お前は誰を庇う?」
片肘をついて軽く上体を起こし、すっと細めた視線がわたしを見下ろす。
うわわん! ディーの凍える視線っ!!
階段であったことだけ正直に答えましたです、はい。
「オルティスか…ちっ、忌々しい」
舌打ちをするディーから、黒い炎が見えるようだ…。
これで、さらにバル隊長とのことがバレたら…。
「…まだ何か隠しているな?」
すぃぃ~と視線を逃がす。
駄目だ、あの目を見ちゃ駄目だ。
上掛けを口元までしっかり掛ける。
「リオウ」
もう一眠りさせてください、わたし病み上がり(?)ですし。
ぎゅうと目をつぶる。
「リオウ…」
「ひゃぅっ!」
耳元で囁かれ耳たぶを含まれる。
「いつまでだんまりできるかな」
低い声に鼓膜を揺さぶられる、ひぃぃ、魔王の囁き、魔王降臨…。
だからさぁ、魔王に一般人が勝てるはずないんですってば…。
「ロットバルド隊長が動くか……」
びしっと制服に身を包んだディーが、わたしの腰の帯を結びながら愉快そうに呟く。
ひとしきり吐いちゃいましたよ。
でも、バル隊長に明細見せちゃったのとか、何も言われなかった。
なんでだろう?
「詳しいことを知りたいか?」
少し考えて、首を横に振ると、頬を撫でられた。
「聞きたくなくても聞け」
「えぇぇー!」
「お前は、知っていようといなかろうと、面倒ごとに巻き込まれる。 それならば、知っておいて多少なりとも警戒をしろ!」
しくしくしくしく……巻き込まれたくて、巻き込まれてるわけじゃないよぅ。