42話 給与明細 2
正当な仕事に対する正当な報酬は当然のことです! それを不当に減額するなんてもってのほかー!!
考えるにつけ、怒りがこみ上げ、結果、わたしもやる気満々です!!
この物品 隊服10万 というのは、バル隊長が言うには隊服と言っても、祭典用の服は各自2着しかもてないことになっているから、毎月買うならば平時に着るシャツぐらいだろう、それならば本来1万程度で済むはずだ、とのことで、毎月シャツを購入してるにしても…一月10着!? いや、毎月なんて買わないだろう普通!!(バル隊長に確認して、毎月購入する人など居ないのは確認済み)
そんなわけで、隊服の継続購入を止めるべく財務局へ行くことにしました。
勿論バル隊長と協議の結果です。
わたしが、給与のことは知らない上での行動という風に装って、窓口へ。
「はい、斡旋品のことですか? あ、あぁ、デュシュレイ隊長の分ですね、そ、それでしたら担当の者がおりますので少々お待ちください」
え、ええと? 何どもってんですか貴女?
それに、人毎に担当なんて決まってるの?
立ったまま待たされること数分。
奥のほうから、きっちりと制服を着た30前後の男性が、ゆっくりとした足取りできた。
「私がデュシュレイの担当だが、貴様は?」
貴様ですか…。
「ディ…でゅしゅれい隊長の従者をしております、リオウと申します。 本日は毎月購入してますシャツの購入を停止していただきた」
「あぁ、無理ですね」
それだけ答えて、すぐさま奥に帰ろうとするヤツを慌てて引き止める。
「な、なんでですか!? 購入するのはこっちなんですよ? 無理って、意味がわかりません!」
男ははぁ、とわざとらしいため息をついて、またこちらを向いた。
「年初に毎月購入する旨の書類をいただいてます。 あぁ君、出してくれ」
先ほど受け付けをしてくれた女性になにやら書類を持ってこさせる。
それを、ぺらっとわたしに見せられ(あくまで渡しはしない)それを食い入るように見る。
確かに斡旋品目に隊服と書かれていて、書名もされてるけど…。
「…あの…これ、ディ…でゅしゅれい隊長の字じゃないですよ」
「そうか? 誰か代筆を頼まれたんだろう。 さあ、わかったらもういいだろう! もし継続購入したくないのならば、また年初にそう申請しろ」
ばっと書類を翻し、何も言うまもなく奥へ引っ込む男にぽかーんとしたわたし。
え、ええと?
「申し訳ありません、そういうことですので、お引取り願えますか」
受付の女性が申し訳なさそうに言うけど、そういうことってどういうこと!?
「わ、わけがわからない…」
呆然と女性に目を移す。
「あれが、まかり通るんですか、ここって?」
「申し訳ありません」
いやいや、謝られても。
「ちなみに、今の人…担当者さんの名前、教えてもらってもいいですか? また何かあったときにお呼びしたいので」
「あの方はイルティス様ですが、あまり呼び出さないほうがよろしいかと…」
イルティス…はて、どっかで聞いた様な名前だけど…。
それにしても腹立たしい対応だなぁ、あれがまかり通ってんだから、ここのレベルも知れたものってことなのか?
ぷりぷりしながら仕事部屋に帰る。
「どうであった?」
聞いてくるバル隊長に、財務局での一連の出来事を伝える。
あ、バル隊長嬉しそう…。
「やはりティス家絡みか、これはいい」
「ティス家…?」
担当がたしかにイルティスだったけど、そのこと?
「そうだ、ティス家の長男があの財務局のイルティス、次男がリフィトルーチェ姫の護衛をしているフォルティス、そして士官学校に通っている三男のオルティスだ」
あぁぁぁぁぁぁ…聞かなきゃよかった、聞かなきゃよかった……orz
「さて、その書類だが、まぁ間違いなく捏造だろう。 だが、そこを指摘したところで、書類を破棄されて、次回から斡旋品を停止するというだけで終わりそうだな。 根本を正すために、この不正な基本給の検証をしたいところだが、どこまで上の人間が関わっているかによるな」
バル隊長、楽しそう…。
「財務局にある給与台帳も閲覧したいところだが、あれはなかなか持ち出しできぬし、第一こっちが動いていることがばれてしまうしな」
「給与台帳ですか?」
「ああ、規定で定められた給与額が載っている台帳だ、もし減額や増額があれば、内容と共に全て記載されているから、デュシュレイの給与額が30万しかない理由もわかるだろう」
それは随分と面白そうな…。
「それって、財務局のどこら辺にあるんですか?」
あーあ、聞いちゃった。