41話 給与明細
「明細だ、これを財務の窓口に持っていけば支払ってもらえるから」
そう言われて、一枚の紙がバル隊長から渡された。
給与明細書 20日間×1万 足す特別手当5万で、25万!!!
「こ、こんなに貰っていいんですか!?」
びっくりしてあたふたする。
「それだけの仕事だということだ」
バル隊長に頭を撫でられ、ありがとうございますと感謝をして、ありがたく受け取ることにした。
って、あれ?
ごそごそと、ディーの引き出しの一番下を引き出す。
本日は午後から修練場の日だから、ディーは居ない。
そこには、ディーが面倒くさがって放置してある、ディーの給与明細が詰まっている。
手が空いたら整理しておけと言われているが、なかなか手を付けれないでいたそこに手を伸ばす。
最近の明細を引っ張り出す。
ディーの明細
基本給が30万
で、物品として10万
その他 10万 引かれて、手取り10万……。
おかしいよね!? これおかしいよね!!!
こんなもんかなって思ってたけど、違うよね!?
大体物品10万ってなに? 隊服って書いてあるけど、毎月買うってどういうこと!?
その他10万って!?
「どうした? リオウ」
険しい顔をしているわたしにバル隊長が気づく。
ちょっと躊躇してから、ここで聞けるのはバル隊長しかいないことに気づき、ディーには悪いとは思ったがその明細をバル隊長に見せる。
「バル隊長、この隊服って毎月購入するものなんですか? それに、その他って…詳細も無いんですけどこういうものなんですか?」
「それ以前に、基本給が30万というのは低すぎる。 隊長クラスの最低は50万のはずだ」
バル隊長の顔が険しくなる。
「他の明細はあるか?」
「はい」
面倒くさがり(?)のディーが貯めに貯めていた明細全部を引っ張り出す。
結局、ディーがまだ平だったころからの明細があったんだけど…。
「基本給が上がっていない…」
「そのくせ、天引きされる金額が増えてるから、手取りは昔の半分…」
バル隊長とわたしはがっくりと肩を落とした。
「おかしいとは思わないのかあいつは!」
「数字に弱いのも此処まで来ると……」
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「数字に弱いというよりも、頓着していないのだろうな」
バル隊長はうぅむ、と唸って沈黙する。
「どうしましょうこれ、明らかにおかしいですよね。 これを毎回財務に提出してお金を出してるのに、財務の人もなにも言わないって…というか、この明細はどこから出てるんですか?」
「…財務局だな」
「……そうすると、組織的にディーの給与を不当に下げてるってことでしょうか?」
何枚もの明細をめくるバル隊長の眉間にあった皺が消え、その頬に凶悪な笑みが宿った。
ひぃぃっ!! 強面の顔でそれをやるとしゃれになりませんっ!
「さぁて、面白いことになった。 ティス家の長男が居る部署だな…これはいい」
くっくっくと低く笑うバル隊長。
「リオウ、デュシュレイにはまだ言うな。 奴が動くと、向こうが警戒する、当分は私たちだけで進めるぞ」
「は、はい?」
「なんだ、その、気の無い返事は。 安心しろ、不当に減額されていた給与に上乗せして奴等から搾り取ってやる。 さぁ、忙しくなるぞ!」
えぇぇぇぇー!! 忙しくなるんですかぁぁぁー…。
やる気満々のバル隊長に引きずられるように、ディーの不当給与事件の調査が始まることになってしまいました。
へ、平和な日常はどこにあるの……。