40話 日常=書類仕事・・・
それにしても、昨日のあれは何だったんだろう…。
今朝起きてみれば、いつもと…メイドに行く前と同じ日常が始まって、ディーもいつもどおりで…。
まぁ、態度が変わってても、どうしていいかわからないわけなんだけど…悩んじゃったわたしの夜を返せー!!
それにしても…”今日は休む”ってセリフ、本当だったんだなぁ…(遠い目)
「リオウ、黄昏るな、手は動かせ」
「…了解、ボス」
いつの間にやらわたし専用になっている空き机のひとつに書類の山が2つもあったから、嫌な予感はしてたんだぁ。
まさか、本当にそれが”わたしの分”の仕事だなんて、ね?
ディーの鬼ー!!!
でもまぁ、さっき小休憩したときに、こっそりアルさんから「リオウさんが居ない間、デュシュレイ隊長はずっと泊り込みで仕事をなさってたんですよ」なんて聞いてしまえば、あまり強くも言えないよね。
それでも、泊り込みでやってる割に、なんで数字関係の書類こんなに残ってるのよー!! どんだけ数字が苦手なんだ!? って、言いたくなるのはしょうがないじゃなーい。
うう…くそう、くそう!! 自分の能力の限界にチャレンジだ!
一心不乱に計算を入れる!
計算を入れる!!
計算を入れ…!!!!
「皆さん、お茶の準備ができましたよ。 休憩にいたしましょう」
「は、はい? あ! もうお昼!」
アルさんの声に、慌てて顔を上げれば、空いている机に、すっかりと昼食…いえ軽食の準備が整っていた。
「アルさんごめんなさい! すっかり気がつかなくて!!」
とにかく何か手伝おうと、アルさんのもとへ行くが、すっかり準備は終わってますね。
「構いませんよ、リオウさんはリオウさんのできる事をなさってるんです。 それに、我が主からもよく言われてますから気にしないでください」
「でも! わたしも従者なのに!」
言い募るわたしの頭を、後ろから大きな手のひらに撫でられる。
「構わぬ。 リオウは良くやっている、アルフォードも好きでやっているのだ、気にしてやるな」
アルさんを見上げれば、バル隊長の言葉に同意するように頷かれた。
「さぁ、それよりも腹ごしらえだ!」
バル隊長は軽食を盛ってある空き机にいすを持ってきて座ると、早速そこにあったフォカッチャのようなものに手を伸ばす。
「早くしないとなくなりますよ」
アルさんに促されて、イスを持っていく。
あ、ディーもちゃっかりもう食べてるし!!
「いただきます!!」
手を合わせて、早速わたしも!
「んまい!!」
「…せめて、美味しいと言え」
固めの生地に挟まれてるお肉がジューシー!! ぴり辛のソースも食欲をそそられます!!
えぇ何? お好みでソースの辛さを足せるんですか!? 素敵です!
え? そっちのは甘辛ソースで、それは酸っぱいソース? 全部食べていいですか!?
「はぁぁぁぁ~! ご馳走さまでしたぁぁ」
美味しかったぁ、食後のお茶を飲み干して、幸せな余韻に浸る。
「今日もすばらしい食べっぷりでしたね」
アルさんがくすくすと笑う。
「これじゃぁ、賄い飯じゃ足りないのも無理はないな」
あれ? バル隊長もその話知ってるんですか?
「ああ、聞いてないか? リオウより先に入っていたイライアは六番隊の隊員だ、あの屋敷の機密書類を転写しに潜入していたんだが、警戒がきつくてな。 ちょっと、他へ目を逸らせる為に、アルフォードの紹介としてリオウに入ってもらったんだ。 まぁ、結果として、任務は果たされたが、随分時間が掛かってリオウには迷惑を掛けたな。 潜入捜査補助として日数分の手当にプラスして特別手当も支給するから勘弁してもらえるか?」
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る~る~る~る~…(遠い目)
き、聞きたくなかったのに…そんな事情……。
イスに体育座りしてのの字を書いているわたしの頭を、慰めるようにディーの手が撫でてくれた。