37話 帰宅
従者続投が決定し、ほくほくしながらお手手繋いで(ディーが離してくれなかった)帰宅。
鍵を開けて元気に家に入る。
「たっだいまー! ……って、ディー、埃っぽい……」
「ずっと留守にしていたからな」
あぁ、やっぱり。
「掃除するから、ちょっと待っててください!」
「ああ」
魔法で埃を外に出し、窓を開けて空気を入れ替える。
「いつ見ても見事だな」
「掃除系は凄く自信があります! 魔法最高! 向うに戻っても使えたらいいのにー」
本当の本気でそう思いますよ!
いくら機械があって便利な日本だと言っても、魔法の便利さには叶わない!
向うに戻っても魔法が使えるなんてミラクル起こらないかなー。
「向うに、戻る…?」
呆然とした声に振り返ると、ディーのきつい視線がわたしを見下ろしていた。
「え、えと? ディー…?」
思わず後退さる前にディーに掴まり、抱き上げられる。
こ、怖い顔のまま抱っこしないでください~!
「どこに、戻るというんだ? あの屋敷がそんなに良かったのか? それともイストーラに…」
ディーは正面を向いて歩きながら、わたしに質問してくる。
質問…というよりは、自問?
それも明後日の方を向いた自問だ、こ、これは危険?
「ディー? でぃしゅれいさーん?」
ちゃんと名前で呼ぶと、やっとこっちに意識が戻ってくれたっぽい。
視線を合わせることができた…けど。
「リオウ……」
熱っぽく眇められた目が、危険…っ。
「んーっ!!」
唇を塞がれて、攻撃的な舌が歯列を割ろうとするのを堪える。
ぐぐぐっと押し切られそうになるのを、ディーの顔を両手で押さえて阻止する。
「ん!ん!ん!!」
またいつもの、魔法の効果を無効にする(?)為の体液の摂取ですか?
なぜこのタイミングで!?
「んぁっ…!」
必死で押さえていた手を簡単に外され、びっくりした瞬間、歯列を割って舌が進入してくる。
深く、深く、深く、深く……
いつも思うんだけど……こんなに、ディープにする必要あるんだろうか…。
もういっそのこと、血を飲んでください…。
途中から抵抗を諦めて、ディーのするがままに任せる。
「………ディーの…馬鹿」
たっぷり時間を掛けたキス…いえいえ、体液の受け渡し? のせいで、すっかり腰砕けですよ。
恨み言の一つや二つあたりまえです。