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36話 裏の話は無用です

「すまなかったな…」

「ほぇ?」

 念願の食事中、突然ディーに謝られて、咀嚼中だったお肉を飲み込む。


「何の事ですか?」

「ロットバルド隊長の頼みとはいえ、お前に囮になるような真似を…」

「ちょ!! ストップ!!」

 な、なんか、今、嫌なキーワード。

 ”おとり”とかって聞こえた気がする!

 いやぁ! そんな非日常なセリフ!!

 わたしは、普通がいい、普通にメイドしてただけ、メイド修行に行ってただけ!!


「謝らないでください。 あのね、わたし、ちゃんと魔法無しで洗濯できるようになったし、掃除だって上手になったんですよ?」

「…そうか」

「そうです、だから、いいんです」

 にっと笑うと、ディーは納得しきれないような顔で、それでもそれ以上は言わないでいてくれた。


 


 食後のほうじ茶を飲んでまったりしていると、ディーに手を取られた。

 ディーはわたしの手のひらを見て、それからそっと手を撫でた。

「…荒れたな」

「イイ手になったでしょう!」

 水仕事ばっかりですっかり荒れたけど、結構嬉しいんだ!

 前に、ジェイさんに貴族の手だの、苦労を知らない手だのぼろくそに言われてたからね、実は結構気にしてた。

 ふふふ! これで、そんなことも言われまい!


 得意げに言うと、ディーは何かを探るような目を向けてから、ふっと目元をゆるめた。


「ああ、いい手だな」

「ありがとう!」

 いつもわたしの気持ちを汲んでくれてありがとう、わがままばっかりなのに、許してくれてありがとう。


 ディーの従者でよかった!

 ディーもわたしを従者にして良かったと思えるように、頑張ろう!





「ああ! お腹いっぱい!!」

 たらふく食べて、帰り道で果物もゲットして(冷凍用)ほくほく顔で帰宅中。

 腹ごなしに、馬と一緒に歩いてます。

「あのねー、あのお屋敷のご飯少ないんですよー! 晩ご飯、スープ1皿にパンが2つだけなんですよ!」

「…わりと普通だが、お前には足りないだろうな」

「えぇぇ!! あれが普通…? 全然足りなくて、3日に1回屋敷の人の夜食を食べさせて貰わなかったら、持たなかったですよ」


「……」


 あ、あれ? 急に涼しくなってきた気がする。


「屋敷の人とはなんだ」

「オルティス様っていう、えぇと末っ子の方が、自分の夜食を分けてくれたんです」

「………」


 更に温度が下がった!


「で、そいつ・・・に飯を貰って、そいつの部屋で食べていたのか?」


 こくんと頷く。




 ななな、なんで怒ってるんですか!?

 命の危機だったんですよ! お腹が空いて倒れるかと思ったんですよ!

 ある意味命の恩人ですよ!




 ブリザードです! もう駄目です!





「そいつのことを……」

 言いかけて、口をつぐむディーの顔が、歪む。

 愛馬を引くディーの横顔を見上げ、思わず空いているディーの手を掴む。

「ディー?」

 ま、まさか、そんな雇い主のご飯を貰うような非常識な人間は、従者として使うことはできないとかなんとか、そんなこと言わないよね?!


 少しの間立ち止まって、まっすぐ前を向いていたディーが、小さく息を吐いて顔をこちらに向けた。

 ディーの右手をぎゅっと握ってディーの目を見上げる。

「あのね、ディー。 わたしはまだディーの従者でそばにいて良いんだよね…」


 ぎゅうとディーの手に力が入り、手を持ち上げられその甲に唇を当てられる。

 何かを誓うように。



「もうどこにもやらない。 リオウは私の従者だ」

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