表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/108

31話 メイド 2

 おかしいです、なんだか、体に力が入りません…。

 そう、これはあれです、空腹・・


 ちゃんと朝晩ご飯はいただいてますが、基本量が少ないしお代わりできないし、最近お昼にお茶の名目で軽食を食べていたから…そのぶり返しかなぁ……。

 こっちの世界にきてから、明らかに食べる量が増えてるし…。

 あぁ、空腹ってなんだか悲しい気分になってくるのはなぜなんだろう。


「リレイ、大丈夫?」

 イライアが心配してくれるけど、大丈夫、おなかが空いてるだけだから。

 ちょっと力無く微笑んで、大丈夫だと首を縦にふる。


 お仕着せのメイド服のウエストが余ってます…最初、ぴったりだったのに。

 なんだかとっても燃費の悪い体になってしまった気が…。





 ホントに、もう駄目…。

 アルさんごめんなさい…、わたし、台所に忍び込みます、そして、食料ゲットだぜ!

 ……いや、ホントごめんなさい、ごめんなさい。


 夜中寝静まった屋敷。

 無論、寝ずの番は居るから、玄関先などには近づかないように注意。

 大丈夫! 見回りの時間もチェック済みだし、経路も覚えてるから!


 空腹を覚えるようになってから、脳が勝手にチェックしてたの!

 ごめんねー!



 するりするりと、台所に忍び込む。

 あぁ、大きな台所素敵!

 これで冷蔵庫があれば完璧なんだけどなぁ。

 ぐうぐう鳴るおなかを抱えながら、台所をあさる。


 来るのは楽だったけど、食料の場所がわからない…。

 生鮮食品は毎日調達だから無いにしても、乾物はあるでしょう!?

 パンは!? パンもある程度保存が利くでしょ!?


「な…無い……」

 台所の床にへたり込む。

「何が無いって?」

 ぴぎゃぁぁぁ!!!

 悲鳴を上げなかった自分に乾杯!!

 後ろから掛かった声に、腰を抜かしそうになりながら振り向く。

「お前、誰だ?」

「貴方こそ誰ですか?」

 反射的に聞き返してしまいました。

 後ろに居たのは笑いをかみ殺してる、寝巻き姿の長身の青年だった。

 あ、なんだか話のわかりそうな、優しそうな人だー!

「私かい? 私はこの屋敷の住人だな」

「わたしは最近こちらに雇っていただいた、メイドのリレイと申します。 いつもお世話になっております」

 雇用主でしたか!

 きっちり三つ指をついてご挨拶する。

「これはこれはご丁寧に。 で、リレイはここで何している?」

「…お、お恥ずかしい話なのですが…」

 あまりにも恥ずかしくて、赤くなって視線を外してしまう。

「お、おなかが空いて、もうどうしようも無くて…、何か余り物でも有ればと…」

 語尾が細くなるのも当然でしょう…、年頃の乙女が、残り物を漁りに来るなんて。


「ぷっ!!」

 思いっきり笑ってくれましたねこの人。

 じと目で見上げるわたしに気づいて、笑いをこらえる。


「悪い悪い。 そんなに腹が減ってるなら、こいよ、部屋に夜食が残ってるから」

 あれ? なんだか言葉遣いがフランクに?

 ま、いいや! ご飯!!


 すたすたと前を行く寝巻きの青年について、ふらふらとついていく。

 また、見回りの誰とも会わなかった、良かった!

 いくら住人と一緒にいるって言っても、怪しまれるの間違いないもんね!!

 2階の一番奥の豪華な部屋…って事は、この屋敷の三男さんですね、確かー名前はー、オルティスさんだったはず。

 で、次男がーフォルティス? 長男はイルティス? みんなティス繋がりってことは間違い無し!



 部屋に入ると、右側の壁に寄せるように置いてある立派な執務机の上に、あったー!!

「いただきますぅっ!!!」

「ど、どうぞ」

 素敵! 軽食じゃない、本気の食事だ!

 お肉にパンにスープにサラダー!!

 美味しい! 美味しいです!!

 泣き出さんばかりに、感激しながら食べるわたしを、オルティスさんはにこにこしながら見ている。


 さほど時間を掛けず、完・食。


「ご馳走様でしたぁ~」

 久しぶりに満腹です。

「いい食べっぷりだな、女でそんな風に豪快に食べる人間初めて見た」

「あぁ、まぁ、居ないでしょうねぇ」

 貴方みたいな色男の前でがつがつ食べられるのは、食に飢えていたわたしみたいな人間ぐらいなものだろう。

「お前、本当に女か?」

「えぇ!? 男に見えるんですか、わたし!?」

 確かに胸とか、胸とか、胸とか、足りないかもしれないですけど、皆無じゃないのに!?

 がっかりしつつ、自分の胸を見下ろし、アンダーバストの下の服を押さえて胸を強調させてみる。

 腰もぎゅっぎゅと絞って、くびれを強調してみる。

「あぁ、まぁ、女だな。 それに、賊でもないようだ」

「ゾク?」

「…ある程度の規模の貴族の家なら、いつだってその危険はあるだろう?」

 そういうものなのかな?

 首を傾げると、オルティスさんが、そういうもんなんだ、と話を終わらせた。

「ご飯ありがとうございました、これで数日は我慢できると思います」

「……台所を漁るんじゃなくて、俺のところへ来い。 何かしら置いておくから」

「本当ですか! 本当にいいんですね!! 嬉しいです! ありがとうございます!」

 両手を握ってぶんぶんと上下に振る。

「じゃぁ、わたし、明日も早いので失礼しますね! ご馳走様でした! お休みなさい!」

「あぁ、じゃぁな」

 やや呆気にとられているオルティスさんに見送られて、廊下に出た。



 見回りさんに見つからないようにしながら、部屋に戻り、久しぶりにぐっすりと眠りました。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ