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30話 メイド 

 結果的に、末姫様リーチェとのこともうやむやになったし、良かったのかなぁ…。

 などと考えながら、がしがしと洗濯板に洗濯物をこすり付ける。


リレイ・・・さん、そんなに強く擦ったら服が傷みます! もっと優しくおやりなさい!!」

「はい、申し訳ありません、気をつけます」

 一旦洗濯物から手を離し、注意してくれたメイド長のマージュ夫人に頭を下げる。

 リレイというのは、わたしのここでの名前…ディーが勝手に付けてくれました、リオウ+デュシュレイでリレイだそうです…なぜ、わたしとディーの名前を足さねばならないのかは、謎ですが。


「わかればよろしい。 アルフォード様の紹介といえども、贔屓をするつもりはありませんからね、心して御仕えなさい」

「はい、よろしくお願いいたします」

 もう一度深く頭を下げると、ようやく納得したように館の中へ戻っていった。




 この館にメイドとして働くようになって早3日、彼女はああして、さり気ないふりをしてわたしの仕事振りをチェックしにきてくれる。

 口うるさいと嫌がる同僚も多いけど、ああやって、注意してもらえるうちが花なんだと”メイド魂”で学んでいたので、ありがたいと思う。

 それでもまぁ、早くお小言をもらわないですむくらいに、”デキル”メイドになりたいとも思う。




 4日前、久しぶりにジェイさんに会った後、ディーにこのお屋敷でメイドとして働いて来いとのお達しをもらった。

 やはり、わたしのメイド(…いや従者なんだけど)っぷりに不満があったのかと、了承した。

 まぁ、従者の仕事にあぶれたら、メイドになれるように手に職を持つのもいいかなと思ったのも本当だけど。

 やっぱり、手に職のある人間はいいよね!

 職人最高!!




 誰の屋敷なのか良く知らないけど、アルさんに連れてこられて、雇われるようになりました。

 何ゆえアルさん経由なのかよくわからないけど、まぁ色々あるんだろうな?

 ディーのお家が5個は入りそうな敷地、前庭、中庭、噴水有りの…どこのお城かっちゅーねん! お金持ちだね!!

 従業員も沢山居て、名前なんて覚えられない。

 とりあえず、メイド長のマージュ夫人は覚えた!

 あと、ほぼ同期のイライアさんも覚えた! 後は適当に、名前を呼ばないで済むように生活してます。


 こっそり、魔法使っちゃだめかなぁ…、手だけだと、なかなか汗シミとか落ちないものなんだね…。

 優しくごしごししながら、魔法の誘惑と戦う。




「魔法は絶対に使うな。 もしばれたら……わかっているだろうな…」

 わかりません!

「リオウの目は正直だな……」

 ディーさん? なぜ、憎憎しげに言うんですか!? 

 正直なのは美徳ですよ!

「……もう一度言う。 魔法は、絶対に、使うな」

 両手で顔をがっちりと掴まれて、凍てつく視線に射抜かれれば、そりゃ首を縦に振るしかないでしょう!?



 魔法を使ったら、なんか、凄いことをされるようです…。

 怖い怖い!!

 だから、おとなしく自分の力だけで、メイド修行してます。

「災難ねぇ、マージュ夫人に目を付けられて」

 同僚のイライアが、洗濯物を絞りながら苦笑する。

「わたし、目を付けられてるんですか?」

「…気づいてなかったの?」

 ため息を吐かれ、洗濯物を見て、もうそのくらいで良いわよと言われる。

「あなた、あのアルフォード様のご紹介なのでしょ? 本家のご子息直々の紹介なんて、本当ならこんな下働きなんかしないわよ」

 聞けば、この屋敷はアルさんの分家で、本家の息子(アルさんの事)推薦で来たメイドなら、屋敷内で、お茶出し等の軽作業をするのが本当なんだってさー。

 へー、メイドでもランクがあるのか…。

「でも、わたし、新人だからこういう仕事の方がミスしても大事おおごとにならないから良かったです!」

「そう? 私なら、やっぱりお部屋付きのメイドになりたいわ。 そして、ご子息様との甘い禁断のラブロマンス」

 あ、語尾にハートマークが見えた。

「禁断なんですか?」

 洗濯物を絞りながら聞くと、嬉々として答えてくれました。


「禁断よ! だって、ご子息様達には既に、許婚がおありじゃない? なのに、それなのに、止まらぬメイドとの愛…。 最初は互いに、その姿を一目見るだけでよかった純愛が…やがて、その手に触れ、その頬に触れ、やがて目くるめく禁断の果実を…きゃっ」

 楽しそうですね、目くるめく禁断の世界。



 更に目くるめく話を続けるイライアと共に洗濯物を干し、屋敷内へ入った。

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